絵本を開けば、
王道? うん割りと好きだよ、いいよね。
魔王に攫われた姫を王子か勇者が助けに行って恋に落ちるとかさ。
トリップした子が勇者になって王子様といい感じになって恋に落ちるとかさ。
まぁ色々あるよね。
とりあえず王道が好きなわけよ王道が。
「・・・・きみ役職は?」
「いや、え?あ、魔王かな。」
「チッ魔王かよ。」
「え、いや敵との一騎打ちの場面で突然上から降ってきて踵落とし決めた相手に言うことソレ!?」
見事な説明口調だ。魔王の威厳もへったくれもない。
そう、先ほどこの自称魔王(笑)が言ったように、私はトリップしてきた。
そしてわたしの踵落とし(不可抗力)で倒れ伏したなんとも格好悪い魔王へ一応聞いてみたのだ。『役職は?』と。
「じゃぁ今私の背後からナイフ突きつけてきてるのが勇者なワケだ。」
「いや盗賊。」
「チィッ!」
「なんで舌打ちしたこのコ。」
盗賊かよ!王道もへったくれもねぇ!!
なんだよ魔王の城になにしに来ちゃってんだよ盗賊。よりにもよって魔王の城に盗みに入るとか猛者だなオイ。
「勇者なんているわけねぇだろ。今頃城じゃ勇者役の押し付け合いだろうよ。」
「世知辛い世の中だぜ。」
「ふっ、全くだ。っじゃなくてだな、お嬢ちゃん現状わかってる?」
わかってまーすよーと言ったらパシッと叩かれた。よもやコイツ実はツッコミ属性じゃなかだろうな。
とりあえず盗賊さんのお顔が気になる。
いやだが魔王はイケメンだったし・・・いやでも期待させておいてガッカリなんてこともありうる。なんせここまで徹底した非王道展開だ。
「じゃぁとりあえず厄介な野郎をのしてくれたのは助かったから殺すのはやめてやるよ。」
「っ、彼女に何をする気だ!何か酷いことをするならただじゃおかないぞ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多分。」
長い沈黙のあとなんか聞こえたんですけど。多分って聞こえたんですけど。
え、何ヘタレ属性?うわいらねー設定キター。
とりあえず、空気がなんだかグダグダになってきたので一本背負いをかました。
「!?うおっ!!」
「ガハァ!」
なんだか魔王にとどめをさした感がいなめないがとりあえず無視しよう。
まぁ私の前に魔王が倒れててその状態で一本背負いなんてしたらそりゃ潰れるよね。
あとどうでもいいことかもしれないが盗賊さんは黒ずくめの美形でした。のびてるけど。
「・・・・・・・なにごとですか?」
「おぉ、怜悧な美しさを持つ貴方はもしや宰相?」
「いえ勇者です。」
「ここで勇者かよ!!」
とりあえず、終われと思った。