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【連載版】悪役令嬢に転生したけど前世で弁護士だったので第一皇子を訴えます!  作者: 雪丸


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2条 第二皇子襲来

 その後、そのまま夜会はお開きとなりヴィオレッタは屋敷へ帰る馬車に乗っていた。

 馬車の向かいの席には父である、エーデルシュタイン公爵が座っている。


「夜会での騒動について聞いたぞ」


「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」


 ヴィオレッタが謝ることではないが一先ず謝罪の言葉を口にしまた。

 エーデルシュタイン公爵は根っからの貴族であり、父と娘の間に親子らしい会話は今まで一度もなかった。


「お前と第一皇子の婚約は王家と公爵家の関係をより強くするためのものだ。そこにお前たちの感情など関係ない。わかっているな? 」


 淡々と話す様子には娘を思う気持ちなど微塵も感じられなかった。


「承知しております」


 ヴィオレッタもそんな父親に今更何も思うところなどない。

 おそらくすでに国王陛下とで今回の騒動について内密に話し合いが済んでいるのだろう。

 前世の記憶が戻った今でもヴィオレッタの頭には貴族として育てられた価値観が染み付いていた。

 その後馬車が公爵邸に着くまでの間、二人の間で言葉が交わされることは一度もなかった。




 翌日、昼過ぎに公爵邸は急な来訪者に騒然となった。

 来訪者の名は、セドリック第二皇子。

 昨日の夜会でヴィオレッタを助けてくれた人だ。

 家主である公爵は仕事で不在、夫人であるヴィオレッタの母もお茶会で外出中の出来事だった。

 不在の両親に代わり慌てて来客用のドレスに着替えヴィオレッタが対応することとなった。


「お待たせして申し訳ありません。セドリック様」


 来客室で待つセドリックは優雅に紅茶を飲んでいた。


「急に押しかけたのはこちら側なので。お気になさらないでください」


 美味しいですね、と言いながら紅茶を机に置く。些細なその仕草から王家の気品が漂っていた。

 アシュレイ第一王子とは違うわね、内心でそんな不敬なことを思いながらヴィオレッタはセドリックの向かいに座った。


「本日はどのようなご用件でお越しになられたのでしょうか? 」


 まぁ間違いなく昨夜の件だとは思いながらもヴィオレッタは尋ねた。


「昨日の夜会での件について決まったことをお伝えしに来ました」


 そこまで言ってからセドリックは紅茶のおかわりを注いでいるメイドに目をやった。


「あなたたち、少し外してて」


 セドリックの意図をくんですぐにメイドたちに人払いを命じる。

 セドリックも自身の側近たちに部屋を出るように伝えた。


「このような察しのいいご令嬢との婚約を破棄するなどアシュレイも愚かだな」


「過分なお言葉ですわ」


 セドリックとはあまり話したことがなかったがどうも居心地が悪い。青色の瞳がまるでこちらの考えていることを全て見透かしているように感じてしまう。


「どうやら国王陛下とエーデルシュタイン公爵は今回の件を無かったことにしたようです」


 昨日の帰りの馬車での様子からそのように処理されるであろうことは分かっていた。


「昨日の帰りの馬車でお父様からお聞きしていますわ」


「案外冷静に受け止めているのですね。昨日のアシュレイへの態度からもっと怒っているものだと思っていました」


「昨日はお恥ずかしいところをお見せしました」


「いえ、自分の意見をぶつけられていて立派でした」


 お互いに相手の腹の中を探るように上辺だけの会話が続く。

 評判通りならセドリックはかなり頭の切れる皇子だ。

 そんな彼がなんの意味もなくわざわざ伝言のためだけにヴィオレッタのところへ来るはずもない。父と母がいないことも把握されていると考えるべきだろう。

 ヴィオレッタはセドリックの様子を注意深く伺った。


「腹の探り合いはこの辺にして、そろそろ本題に入りましょう」


 先ほどまでの柔らかな声色とは一転して冷たさを含んだ声に変わった。

 セドリックの眼が光り、あたりの音が聞こえなくなった。

 魔法だ。エーデルシュタイン公爵が使うところを何度か見たことのあるヴィオレッタはすぐに気づいた。

 セドリックが使用したのは風の魔法"サイレント"。

 わざわざ魔法を使うと言うことはそれだけ重要な話ということだ。


「昨日、アシュレイと一緒にいた貴族たちを覚えているか? 」


 さらに一段と冷たい声音になり口調も鋭いものに変わった。

 これがセドリック第二皇子の本当の顔か。まるで国王陛下なようだ。

 社交界で見せる気品と柔らかさを併せ持つ印象は無くなり、今は気高さと冷たさを感じた。


「はい、私の周りを囲んでいた方々ですね。ただお名前までは存じ上げておりません」


「だろうな。彼らは若い新興貴族だ。あるクラブでアシュレイと交友を持つようになったらしい」


 クラブとは貴族の集まりのことだ。勉強会とも称し交友を深めるための場である。


「新興貴族の方々と第一皇子のアシュレイ様が同じクラブに行かれたのですか? 」


 クラブは身分ごとに分かれていることが多いので、せいぜい子爵までしかいないであろう新興貴族とアシュレイが同じクラブで交友するなどまずありえないことである。


「あぁ、すでに裏どりもできている。確かな情報だ。半年ほど前からアシュレイは夜中に無断で外出していることがあるそうだ」


「アシュレイ様と新興貴族の方々の間に前から繋がりがあるのでしたら、その間に入って仲介役をした人物がいるということですか? 」


 ここで初めて、冷たさの強かったセドリックの表情が和らいだ。代わりに好奇心のようなものを感じる目をしていた。


「その通りだ。アシュレイと新興貴族どもが最初に顔を合わせたのはリヒトベルク伯爵の夜会でのことのようだ」


 リヒトベルク伯爵の名前にヴィオレッタは覚えがあった。

 そして同時に脳裏にある令嬢の顔と苦い記憶が蘇る。


「リヒトベルク伯爵は貴族派の重鎮であり、エーデルシュタイン公爵の政敵であるグランディール公爵の側近の1人だ」


 一呼吸置いてからセドリックはヴィオレッタの目をまっすぐと見つめながら言った。


「そして、ヴィオレッタ嬢に"暴力令嬢"の悪名を付けた男だ」


毎日22時に投稿予定です!

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