第十三話『第一回・領主花嫁選抜会議、あるいは絶対零度の理想像』
「……で、なんで僕がこんな目に?」
アッシュトン城、大会議室。 レンは、一段高い玉座に座らされ、目の前に並ぶ「面接官たち」を見下ろしていた。
面接官席には、以下のメンバーが座っている。
ジムニー: 進行役(胃薬持参)。
キャシー: 書記兼監査役(バインダー装備)。
サラ: 家庭力チェック担当。
ガイン: よくわかってない(肉を食ってる)。
カレン&ゴウ: 子供代表。
「諦めてください、レン殿」 ジムニーがマイクを握る。 「ガイン殿も、キャシーさんも(方法はともかく)家族を持ちました。……領主である貴方だけが独身では、外交上の体裁が悪いのです!」
「体裁なんてどうでもいい。僕は『独身貴族』という響きが気に入ってるんだ」
「ダメです! 今日こそ、貴方のパートナー……つまり『奥様』を決定します!」
ジムニーの合図と共に、扉が開かれた。 エントリーナンバー1~5。いつものヒロインたちが、それぞれの「勝負服(ウェディングドレス風)」で入場してきた。
◇
エントリーNo.1:ヴェルミリア(筋肉) 「レン! 私と結婚すれば、お前を軽々お姫様抱っこして移動できるぞ! ベッドへの移動も秒速だ!」 判定: 「うーん、揺れそう」(レン) 「物理的に壁を壊すので、修繕費が嵩みます」(キャシー)
エントリーNo.2:ルナリア(重力) 「レン様♡ 私なら、重力魔法でレン様の体重をゼロにできますわ。無重力睡眠……夢のようでしてよ?」 判定: 「ちょっと惹かれるけど、愛が重すぎて胃もたれしそう」(レン) 「嫉妬で国をブラックホールにするリスクがあります」(ジムニー)
エントリーNo.3:ミリス(強欲) 「ねえレン、私と結婚すれば『財産共有』よ! 私が稼いだ(盗んだ)お金で、世界中の高級枕を買い占めてあげる!」 判定: 「枕は欲しいけど、僕の財布からも抜かれそう」(レン) 「脱税の温床になります。却下」(キャシー)
エントリーNo.4:ノブツナ(侍) 「師匠! 拙者が妻となれば、寝室に近づく蚊の一匹たりとも斬り捨てて見せましょう! 24時間警備でござる!」 判定: 「寝室で刀を抜かれると、金属音がうるさい」(レン) 「殺気が強すぎて安眠妨害です」(サラ)
エントリーNo.5:アリア(狂信) 「レン様……婚姻とは魂の契約。私と一つになれば、死後も永遠に私の祈りの中で……」 判定: 「怖い。重い。帰って」(レン・即答)
◇
「……全員、不合格です」
レンは冷酷に言い放った。 会場に絶望の空気が流れる。 「そんな!」「レン様の理想が高すぎる!」とヒロインたちが嘆く中、カレンが冷静に手を挙げた。
「質問です、理事長。では、貴方の考える『理想の結婚相手』の条件とは?」
「よくぞ聞いてくれた、カレン君」
レンは真顔で、指を折りながら答えた。
「口数が少ないこと(一日三語以内)」
「体温調節機能があり、夏はひんやり、冬は暖かいこと」
「僕が求めない限り、視界に入らないこと」
「維持費(食費・交際費)がかからないこと」
「電源のオン・オフができること」
「……」 会場が静まり返った。
「……レン殿」 ジムニーが震える声で言う。 「それは人間じゃありません。**『高機能エアコン』**です」
「そうとも言う。……残念ながら、彼女たちはエアコン以下の性能だ」
「ひどい言われよう!?」 ヴェルミリアが叫ぶ。
だが、ここで予想外の人物が口を開いた。
「……じゃあ、ぼく?」
ゴウだ。 彼はガインの膝の上で、半目で手を挙げていた。
「ん?」
「ぼく、しゃべらないよ。体温高いよ(子供だから)。レンのじゃましないよ。ごはん、パパがくれるよ。……ねるとき、スイッチきれるよ」
レンがハッとした。 条件をほぼ満たしている。 特に「スイッチが切れる(即寝落ち)」という機能は、人間離れしたスペックだ。
「……採用」 レンが即答した。
「えっ!?」
「僕のパートナーはゴウ君だ。彼となら、最高の『睡眠ライフ』という結婚生活が送れる」
「ちょ、ちょっと待ってください!?」 ヒロインたちが総立ちになる。 「まさか、幼児に負けるなんて!?」 「レン様、ショタコン疑惑!?」 「性別の壁を超えて……尊い……(アリアが拝む)」
「違う、そういう意味じゃない!」 ジムニーが必死にフォローするが、時すでに遅し。
「……ふふ。カレン、記録しておきなさい」 キャシーが眼鏡を光らせる。 「この国のトップは、『美女よりも、よく寝る幼児を選ぶ』……。これが、レン・アシュトンという男の揺るがない本質です」
「はい、お母様。……理事長、やっぱりブレないわね」
結局、花嫁選抜会議は「ゴウ君の圧勝(?)」という謎の結果に終わり、ヒロインたちは「打倒・幼児(睡眠力)」を掲げて、山へ修行に向かうことになった。
レンは、またしても「恋愛」という面倒なフラグを、斜め上の方向へへし折ったのだった。




