表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『道化師の仮面は、硝子(ガラス)でできている』  作者: 沼口ちるの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/48

第6話『悪魔の格付けチェック、あるいは中間管理職の誕生』

「……というわけで。今日から僕はこの国の『防衛大臣ダンジョンマスター』に就任したキロだ。よろしく頼むよ、筋肉ダルマたち」


アッシュトン城(元・塔)、大会議室。 レンが「面倒だから紹介はジムニー君に任せる」と言って寝室に消えた後、キロは卓上に足を乗せてふんぞり返っていた。


彼の視線の先には、悔しそうに歯ぎしりをする「物理組」がいた。


「ぐぬぬ……! あの時、床さえ抜けなければ……!」 ヴェルミリアが拳を震わせる。


「拙者の太刀筋を『ルール』で弾くとは……。剣士の風上にも置けぬ卑怯者でござる」 ノブツナが殺気を放つ。


「肉……食わせろ……」 ガインはまだ寝ぼけている。


キロは鼻で笑った。 「負け惜しみはよしなよ。君たちの単純な物理攻撃なんて、僕の『空間支配』の前では無力なんだよ。これからは僕の手足となって、肉壁として働いてもらうからね!」


キロはご満悦だ。 レン(絶対強者)には屈したが、この脳筋たちよりは自分が上。 つまり、この組織での自分のカーストは「No.2」くらいだと思っていた。


――背後から、冷たい手が肩に置かれるまでは。


「あら、キロちゃん? 調子に乗っているところ悪いんだけど……」


「ひっ!?」


振り返ると、ミリスがニッコリと笑っていた。 その手には、またしてもキロの『ダンジョン・キー』が握られている。


「この鍵、返す代わりに……『レンタル料』を頂こうかしら? 毎月、国庫(レンの財布)とは別に、キロちゃんのお小遣いから3割……ううん、5割でどう?」


「ご、5割!? 暴利だ!!」


「嫌ならいいのよ? これ、溶かしてアクセサリーにしちゃおっかな~?」


「払います!! 払わせていただきます!!」


ミリスは「商談成立♡」とウィンクした。 キロは涙目だ。この盗賊女、僕の生殺与奪の権を握りすぎている。


さらに、反対側から強烈なプレッシャーがかかる。


「……汚らわしい」


アリアだ。 彼女はキロの方を見てもいない。ただ、空気中の除菌スプレーを噴射しながら、独り言のように呟いている。


「レン様の城に悪魔が住み着くなんて……。毎日『聖水』で全身を洗わないと、臭いが移りますわ。……おい悪魔。毎朝5時に聖堂に来なさい。3時間みっちり『浄化の儀』を行ってあげます」


「死ぬ!! それ処刑だから!!」


「拒否権はありません。レン様の空気を汚すなら……消しますよ?」 アリアの背後に『天罰の光』がチラついている。 冗談ではない。彼女は本気でやる。


そして正面には、ルナリアが優雅に扇を広げていた。


「キロ。貴方の『空間操作』は便利ですわね。……私のクローゼットが手狭になってきたので、貴方の亜空間を『倉庫』として使いましょう。ドレス500着、靴200足、今すぐ収納なさい」


「僕の権能はタンスじゃないぞ!?」


「お黙りなさい。……逆らえば、貴方を『重力プレス』で漬物石にしますわよ?」


キロは悟った。 物理組には勝てる。 だが、この**「魔法・狂気・強欲」の女たち**には、逆立ちしても勝てない。


「……はい。倉庫になります。浄化されます。金も払います」


キロはガックリと項垂れた。 魔界では「やんちゃな悪魔」として名を馳せた彼も、アッシュトン独立国では**「便利なパシリ兼いじめられっ子」**というポジションに収まったのだ。


   ◇


会議の隅で、ジムニーが胃薬を飲みながらその光景を見ていた。


「……あーあ。新しい犠牲者が増えただけか」


ジムニーは、少しだけキロに同情した。 彼もまた、このカオスなヒロインたちに振り回される運命なのだ。


「……おい、人間」


キロが、涙目でジムニーに話しかけてきた。


「ここの女たち、頭おかしいんじゃないの……?」


「……今更気づいたんですか。ここは『地獄』ですよ、元ダンジョンマスター殿」


ジムニーは優しく微笑んだ。


「でも、安心してください。……貴方には、**『物理組への命令権』**があります。彼らに仕事を押し付けて、自分は楽をすればいいんです」


「! その手があったか!」


キロの目に光が戻る。 そうだ。一番下っ端じゃない。僕の下には、まだ「筋肉」がいる!


「よし! おいヴェルミリア! ノブツナ! ガイン! お前ら、僕の代わりにアリアの聖水運びと、ルナリアのドレス運びをやれ! 命令だ!!」


「なんだと貴様!?」 「拙者をパシリに使う気か!?」 「肉……運ぶ……?」


「うるさい! 言うことを聞かないと『落とし穴』でトイレまで飛ばすぞ!」


「ぐぬぬ……! 覚えておれ悪魔め……!」


こうして、アッシュトン独立国の新たなヒエラルキーが完成した。


神(絶対者): レン 捕食者(上位): キャシー(不在)、アリア、ルナリア、ミリス 中間管理職(中位): ジムニー、キロ(NEW!) 労働力(下位): ヴェルミリア、ノブツナ、ガイン


キロは、ジムニーと共に「中間管理職の悲哀」を分かち合う、良き同僚(友)となる……かもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ