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『道化師の仮面は、硝子(ガラス)でできている』  作者: 沼口ちるの


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第1話『退屈な悪魔と、噂の暗黒帝国』

暗黒大陸の片隅。 そこにある「嘆きのダンジョン」の最奥で、一人の少年が頬杖をついていた。


「……暇だ」


彼の名前はキロ。 見た目は10代半ばの少年だが、頭には小さな角が生え、背中にはコウモリのような羽がある。 正真正銘の悪魔だ。 ただし、ただの悪魔ではない。


『歴代魔王の肖像画に落書きをした罪』 『地獄の釜の温度設定を勝手に上げて、亡者たちを茹で過ぎた罪』 『大魔王の靴の中にスライムを詰めた罪』


数々の「やりすぎたいたずら」によって魔界を追放され、罰としてこの辺境のダンジョンマスター(管理人)をやらされているのだ。


「あーあ。人間ってば弱すぎ。昨日の勇者パーティも、最初の落とし穴で全滅しちゃうし」


キロはモニター(水晶玉)を指で弾いた。 ダンジョン運営は退屈だ。罠を張って、魔物を配置して、やってくる人間を撃退する。その繰り返し。 彼のあふれ出る「いたずら心」を満たす刺激が、ここにはない。


「どこかに、もっと面白くて、僕のいたずらが通じないような……『ヤバい奴』はいないかなぁ」


その時。 水晶玉に、人間界のニュースが流れてきた。


『速報! 北の大地に謎の独立国家樹立!』 『その名はアッシュトン! 漆黒の旗を掲げ、謎の邪神アイマスクを崇める暗黒帝国!』 『支配者レン・アシュトンは、古龍の心臓を動力源にし、周辺諸国をたった一日で洗脳した魔王を超える存在か!?』


「……へぇ?」


キロの金色の瞳が輝いた。 魔王を超える? 暗黒帝国? しかも「漆黒の旗」に「邪神崇拝」だって?


「魔界でも聞いたことがない名前だ……。人間界に、そんな面白い奴がいたなんて!」


キロは玉座から飛び降りた。 ニヤリと笑う口元から、鋭い八重歯が覗く。


「決めた! このダンジョン運営なんかやーめた! 遊びに行こう、その『アッシュトン』へ!」


「えっ、キロ様!? 職務放棄ですか!? 魔界本部にバレたら更に重い罰が……!」 補佐役のガーゴイルが慌てるが、キロは聞く耳を持たない。


「知らないね! 僕の好奇心を止められるのは、僕だけさ!」


バシュッ!! キロは黒い霧となって、ダンジョンから消え去った。 目指すは人間界の北の果て。 彼の「いたずら」と、レンの「怠惰」が交差する時が迫っていた。


   ◇


数日後。アッシュトン自治領・国境付近。


「……うわぁ」


キロは空中に浮かびながら、眼下の光景に感嘆の声を上げた。 そこには、彼の予想を遥かに超える「異様な光景」が広がっていたからだ。


まず、街全体を覆う結界の密度がおかしい。 (あれ、『絶対拒絶』の術式じゃん。魔王城より硬いよ?)


そして、街の中心から噴き上がる湯気。 (あの魔力……『帝王種』のドラゴンハート!? それを野ざらしにしてるの!? 正気!?)


さらに、街を歩く住民たちの様子。 (みんな幸せそうだけど……なんか目が『信仰』で決まってるよ。『レン様のために!』って……完璧に洗脳が完了してる!)


キロは武者震いした。 すごい。ここは本物の「魔境」だ。 ここの支配者「レン」は、きっととてつもなく恐ろしくて、そして面白い奴に違いない。


「くくく……! 燃えてきたぁ!」


キロは指をポキポキと鳴らした。


「挨拶代わりに、いっちょ派手な『いたずら』をお見舞いしてやろうか!」


彼は掌に魔力を集中させた。 得意魔法『幻影のパレード(ファントム・サーカス)』。 街中に大量の「お化け」を出現させ、パニックに陥れる魔法だ。


「驚け、人間ども! 僕の恐怖と混沌のショータイムだ!!」


キロが魔法を放とうとした、その瞬間。


『警告:上空に未確認の魔力反応を検知』 『判定:害虫(レベル:中)』 『対処:自動迎撃システム・起動』


地上の塔から、無機質な音声(キャシーの遺産)が響いた。 直後。


ズドンッ!!!!


「え?」


キロの目の前に、超高圧の水流(温泉)が迫っていた。 回避不能の速度。


「うわっちゃァァァァ!?」


直撃。 キロはキリモミ回転しながら吹き飛ばされた。 ただの水ではない。アリアの「浄化魔法」が付与された聖水だ。 悪魔である彼には、酸を浴びたような激痛(と、なぜか「肩こりが治る」快感)が走る。


「あ、熱っ!? 痛っ!? ……でも気持ちいい!? なんだこれぇぇぇ!!」


ドサァッ!!


キロは街の広場のど真ん中、例の「レン様・癒やしの噴水」の中に落下した。


「……ぷはっ!」


ずぶ濡れになったキロが顔を上げる。 周囲には、驚いた住民たちが集まっていた。


「あら、空から子供が降ってきたわ」 「温泉の恵みかしら?」 「レン様からのプレゼントだ! 拝もう!」


住民たちはキロを怖がるどころか、ありがたがって拝み始めた。


「……な、なんなんだコイツら……!」


キロは戦慄した。 いきなりの迎撃。しかも聖なる温泉攻撃。 そして、悪魔を見ても動じない住民たちの狂気。


「……面白い。最高に面白いよ、アッシュトン!!」


キロは濡れた髪をかき上げ、ニヤリと笑った。 普通の人間ならここで逃げ出すだろう。 だが、彼は「懲りない悪魔」だ。


「僕をここまでコケにしたのは、大魔王以来だ……。見てろよレン・アシュトン! 絶対に僕の『いたずら』で、悔しがらせてやるからな!」


こうして、第二の嵐(いたずらっ子)が、アッシュトン領に潜入したのだった。



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