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かしまし我らの不協和音

ダンジョンに行く前のコンビネーション練習として、本日は屋外の運動場にて3人パーティ同士の演習となる。

前衛は燃えるような赤毛に革鎧姿の少女、中衛は膝の長さまである髪の毛を緩くリボンで束ね弓と矢筒に学生服姿の少女、後衛は制服にローブを羽織り真新しい杖を携えたリイシャ。

この中ではリイシャが一番小柄で、恐らく年齢も一番下だ。だが保持している魔力量はパーティの誰よりも、下手したら学年の誰よりも、多いという自負があった。

対する3人組も前衛1人に後衛2人、装備のレベルも赤毛の少女とさほど変わらない。

「アンナ、いい?開始の合図とともに先制攻撃よ」

「リイシャちゃん、それはちょっと危ないと思うんだけど」

剣士のはずなのにかなり弱気な赤毛の少女、アンナに思わず舌打ちしたくなる。

「私もアンナさんに同意です。あの人たち、既に何らかの魔術を練り始めてます。恐らく設置型か、強化型か」

「新入りは黙ってて」

表情をピクリとも変えない弓使いの少女。名前はエクレと言ったか。食堂の片隅で1人昼食をとっていた所にリイシャが声をかけた。魔力量は殆どなく、実戦経験も皆無という、何故この学園に在籍しているかもよく分からない存在ということで目をつけた。

が、意外に魔術には詳しいらしい。

「始め!」

教師の声に合わせて相手チームの魔法が発動する。前衛の生徒の体が淡く光り、両チームの間の地面に魔法陣が浮かぶ。

「ずるい!合図の前に詠唱だなんて‼」

「詠唱は見られませんでした。杖に元々仕込んでいた魔術を発動しただけかと。アンナさん、石、投げて」

「う、うん‼」

アンナはよく分かっていないまま小石を拾い上げ、魔法陣に当てる。小石は破裂音と共に砕け散った。

「何よアレ!当たったらケガしちゃうじゃない!」

「ダンジョンには普通にあるトラップの一種。再現度が高い」

エクレが無表情だった口元を微かに曲げる。

先方の前衛は軽く魔法陣を飛び越えるとアンナの懐に潜り込んだ。慌てたリイシャが敵前衛の足元を狙って火球を撃ち放つ。

「危ない」

エクレがリイシャを押しやると、コントロールを失った火球は虚空で爆ぜる。

「バカ!危ないのはどっちよ‼」

「出力調整がまるでなっていません。アレではアンナさんの脚が消し炭になります」

エクレはリイシャを見ることもなく矢を番え、敵後衛に照準を合わせた。

「何なのよ!新入りのくせに‼だからあなたはボッチなのよ‼」

リイシャの事あるごとに吐き出される言葉に、相手陣営も教師も閉口する。

「さて、無力化するにはどこを狙うかですが…」


結果は歴然だった。設置罠や強化魔術を駆使した相手チームの圧勝に終わり、リイシャの的外れな火炎魔法のおかげでエクレとアンナが火傷を負うことになった。

当然、リイシャは教師に呼び出され、長い長い教育的指導を受けることになる。

「えっと…エクレさん。なんかごめんね」

「どうして貴女が謝るのですか、アンナさん」

保健室。どこ吹く風という表情で治療を受けているエクレと、持ち前の治癒力で全快したアンナが肩を並べている。

「リイシャちゃん、貴族だから、ちょっと平民に対して当たりがキツくなっちゃうんだ」

「では、貴族同士でつるんでいただければ?」

「あの性格だからね。取り合ってくれる人が居ないんだよ」

頬をかくアンナ。

「…大きくなりましたね、アンちゃん」

アンナに聞こえるか聞こえないかぐらいの声。

「エクレさん、どうしたの?」

「いいえ。何でもありません」

「あらら、2人ともすっかり仲良しさんね。はい、治療は終わったわ。痛いところはないかしら」

養護教諭の声がエクレの感傷を遮る。ふくよかな初老の女性で、学園都市の中でも屈指の回復魔法の使い手である。

「ありがとうございます。あまりにも見事な陣でした」

「ふふ、そう言われたのは初めてだわ。またいらっしゃい。…アンナちゃんはちょっと来すぎだけど…」

苦笑する養護教諭に2人揃って会釈をすると、保健室を後にする。廊下は西日でオレンジ色に染まっている。

「すっかり遅くなっちゃったね。お腹ペコペコだ。エクレさんは寮住まいなの?」

「はい、一応…」

「じゃあ、今日は一緒にご飯食べよ。リイシャちゃんも一緒に」

こくりと頷く。何故ここまでアンナはリイシャに拘るのか、そのうち聞けば良いかと思い直しながら、背の高いアンナの後ろをトコトコとついて行くエクレなのだった。

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