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よみがえる勤労4

結論から言うと、商人ギルドの記録すら抹消されていた。

アマリリスの一言が無ければ思い出すこともなかった人物のことで、この一週間走り回っていることに気づく。

(リイシャの入寮の手続きはメイドに任せっきりなのに、親失格じゃない、これじゃ。旦那のことばかり言えないわ)

ふっとため息が漏れる。

「お母様、くすぐったくってよ」

「あら、ごめんなさいね、リイシャ」

リイシャは今年で9歳になる。いつもはメイドたちが身支度を整えるが、今は本邸に世継ぎが生まれたこともあり、殆どが本邸に呼び出されている。

髪のとかし方1つとっても知らないリイシャの髪を丁寧にすいてやる。サラサラとしたピンク色のストレートヘアは持ち前の魔力の高さを物語っている。

翌日には入寮ということもあり、リイシャの部屋には何個ものトランクがうず高く積まれている。制服とパジャマ、普段着が数着あれば十分にも関わらず、【急なパーティーにお呼ばれしたらどうするの】とドレスを詰め込み始め、メイドを呆れさせた結果である。

「お母様、最近学園に不思議な子がいるの」

「どんな子かしら」

「誰にも見えてない感じだったけど、私にはちゃんと見えてたわ。食堂でちゃんとご飯も食べてたし、幽霊じゃないわね、あれは」

誰も見えていないのに食堂でご飯はちゃんともらえている、なんとも支離滅裂な話であった。

「それでね、思い切って話してみたの。思ったほど変な子じゃなかったわ。凄くびっくりされたけど」

ミランダに思い当たる節があるとすれば、認識阻害の術式を使っている可能性。これであれば、術の使用者が能動的に話しかけることで対象者にのみ姿を見せることが可能であり、また、観測者が膨大な魔力の所持者であれば視認は可能という性質を持っている。

「今度のダンジョン実習でアンナを前衛にしてパーティーを組みましょうって誘ったら、二つ返事でOKだったわ。多分、あの子は魔法職ね。髪の毛すっごく長かったし」

アンナ、とは娘の口から時々出る少女で、リイシャより【年上の平民の子】としてよく話題にのぼる。リイシャは馬鹿にしたように話すが、全体的にはのんびりとした性格で面倒見も良い好人物という印象しかない。

「ねえ、お母様。私も回復魔法が使えるようになりたかったわ。火属性なんて野蛮だわ」

「精霊の加護をそのように言ってはなりません。いつかバチが当たりますよ」

「はーい、お母様」

娘は天才だ。そしてまだ幼い。どこかで誰かがその鼻が伸びきってしまう前にポキリと折ってくれまいか…と願わずには居られなかった。


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