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強くてニューゲーム2

その日、城からは黒黒とした靄が噴出した。

【緊急警報。【枯死粒子】濃度が危険水位に突破。浄化装置のモード変更を実行の上、職員は直ちに屋外に退避せよ。繰り返す…】

(さっきランクスくんたちが入ったばかりじゃ…気になるけど、人目にはつきたくないし…)

逡巡している間にも城からは黒い防護服姿の一覧が飛び出してくる。その中にランクスは居ない。

「うむ…全員揃っているな」

「室長、やっぱりあの方じゃないと摘出は…」

「でも容量は既に臨界点だったし、もうこのままドバっと出してもらって落ち着くのを待ったほうが…」

「阿呆!…うむ、本部からやはり来たか」

彼らが出現した転移陣から白く輝く1m長さの棒が数本出現する。防護服の者たちはそれらを1本ずつ携える。

「思ったより重いっすね、コレ」

「光属性魔石の結晶だ。割ったらクビどころじゃ済まないと思え」

「ひい‼」

「皆、緊急要項はしっかり頭に入っているな」

全員が頷くのを待つ。

「では状況開始」

全員が散り散りに走り出す。

数分後、城を囲むように真っ白な輝きを放つ魔法陣が展開される。幾重にも重なり連なる魔法陣のいくつかを解析したところ、清浄魔法の強化版であることがわかった。すかさず精密再現のストックに放り込む。

光が終息する頃には城から吹き出していた靄も消えていた。

「ふー、なんとかなったな」

「戻る前に清浄魔法かけとけよ」

「うう…緊張しすぎて防護服ん中、びっちょびちょだ。早く脱ぎたいよ…」

「わりと日常茶飯事だ。すぐ慣れるさ」

「とにかく早く封印しないと」

一団は軽口を叩きながら城へと再び戻っていく。その様子を一部始終岩陰から覗く。

(なんだったんだろ、今の)

相変わらず防護服の一団に【構造理解】をかけてもアクセス権限の問題で弾かれ続ける。

(…見つからないように後をつけてみようかな)


しばらく一団の後ろに付かず離れずの距離を保ってはいたが、あまりにも気づかれないことに疑問を感じていた。

それもそのはず、まだカナデは【構造理解】に【情報系魔法やスキルを全てレジストする能力】が付随されていることを知らない。

そして気配察知スキルに長けているものはスキルに頼り切りになるためいつまでも見つけられないという状況を作り出していた。

傍から見ると黒い防護服に身を包んだ半透明の棒を抱えた集団と、後ろからひょこひょこついてくるペストマスクに普段着の妙齢女性という、なかなかな絵柄である。

そうこうしている内に10メートル以上も高さがありそうな扉の前で歩みは止まった。

「【枯死粒子】濃度、安全圏内まで低下しています」

「よし、開けるぞ。もし万が一奴が目覚めていたら、再度離脱する。いいな」

全員から承諾を得ると、扉を複数人で押し開ける。蝶番が軋む音がなんとも耳障りだ。

中は奥行きがある空間で、はるか後方に玉座が設置されている。

深い臙脂色の長大な絨毯の上に、その生物は居た。

足元に呪詛が描かれた包帯のようなものを撒き散らしながら、こちらに背を向けて項垂れている。見た目は人のようだが、青白い肌の背中にはコウモリの羽根を骨だけ残したような物が張り付いており、腰から下には黒い鱗がびっしりと生えている。延髄辺りに何度も針を刺されたような跡があるのも気になる。

「…動かないな」

「よし、直ぐに封印に取り掛かるぞ」

リーダー格の男が謎の生物の近くの床に手を添える。無造作に落ちていた包帯がひとりでに動き出し、謎の生物を包み込む。包帯の塊は伸縮を繰り返しながら徐々に人の形に戻っていく。

その姿には完全に見覚えがあった。カナデは叫ぶのを堪えるのに必死であった。

「おい、そこにいるのは誰だ!」

防護服姿の1人が叫ぶと視線が一斉に向く。

体が強張る。のどがへばりついて声が出ない。マスクの中が湿気で完全に曇り、視界が遮られる。

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