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帰路

2頭立ての馬車は進む。

大森林の中を走るのはこれで4回目だ。

ベルナルディの隣にはエクレ。低酸素状態による脳などの損傷はビオーリが処置を施したものの、心には深い傷を負ったままだ。

「おじちゃん…ゼンじいちゃん…おばあちゃん…」

「心配しないでください、神樹様。あの者たちは全員ビオーリが回復魔法を施しました。今頃目を覚ましていることでしょう」

「ゴブさんたち…モジャおくん…アンちゃん…」

「…はあ。神樹様、甘い物でもご用意しましょう」

「おうさまキライ」

ショックを受けるベルナルディ。確かに、セーフハウスに転移した者や待ち構えていた仲間たちをフラクタル王国勢が伸してしまったのは事実だが、ブラムだけは事情が異なる。

「なあ、ビオーリ。あの宮廷魔道具士を名乗る男、被検体がどうのと言っていたが、まさか【枯死之王】を兵器として活用しようなどと考えてはないだろうな」

「さあ。私には分かりかねます」

憮然とした態度。ビオーリが街でブラムを捜索している最中、王はレクターと直接アジトを叩いていたとなると、最後まで彼らを救おうともがいていたビオーリの立場は完全になくなってしまったも同然だった。

「ブラム様に、なんとお詫びしたら良いか…」

「ふん…貴様は真面目が過ぎる。おい、着いたぞ」

そこは一見森に見える。しかし、木に貫かれた家々や木と同化した人々が静かに佇んでいた。

「やはりここもか…。ここは地図上では60年前までは村だった。何が神樹様を怒らせたかは分からないが…」

「…おうさまもこうなりたい?」

「ふふ、憧れるけど遠慮しよう」

エクレは木を操る力が使えなくなっている。その首には能力を封じる首輪が付けられている。かつては亜人種の特殊能力を封じ、隷属させるために使われてきた代物である。

「さて、ぼくらもお家へ帰ろう、皆が待ってr…」

「いいかげんにして」

首輪が弾ける音がし、次いで馬車が巨木に貫かれる。

下から次々と生える木々は兵士たちを取り込み、その養分を吸い尽くしてゆく。

「ビオーリおじちゃんは好き。でもおうさまはキライ」

「くそ、何でだよ。こんなにお慕いしているのに…」

ビオーリがすっと王の前に出ると、その頬を平手打ちする。

「いいかげんにしなさい、陛下。あなたは…貴女は人の心をもっと学んだほうがいい」

「何だよ…何なんだよ…」

そこには年相応の、少女の姿があった。

「さ、エクレ様、お行きなさい。ブラム様を喪って辛いのは、私も同じです。彼は気持ちの優しい男でした。家族を大事にしてください。貴女は、貴女の行きたい道を進んでください。でも、いつか私たちの所にも、会いに来てくださいね」

エクレはこっくりと頷くと、ビオーリをぎゅっと抱きしめた。

「貴女を抱きしめる資格がない我々をお赦しください。エクレ様」

再びこっくりと頷くと、エクレは大森林を駆け出していった。

「おじちゃん!」

振り向くエクレ。

「おうさまにね、ひとりでがんばらないでっていってあげて!」

ハッとする。確かに、王は幼少期からその才を認められ、王になるためのあらゆる教育を受けていた。しかし、王になるための教育しか受けてこなかったとも言える。

「はい、そうします」

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