カウントダウン6
「あるエルフが言った。この布ゴーレムは、とある男から預かった物だと。そして男は言った。これは【枯死之王】を捕縛するための装置だ、私はこの国の王族に仕える宮廷魔道具士だ…とね。このぼくが、初めて会った人間に構造理解スキルを使うことを読まれた。逆手に取られたんだ。飛んだ茶番だよ」
王は立ち上がる。中性的で彫刻のように整った顔には苦々しい表情が張り付いている。
「まさか【枯死之王】が普通に冒険者をして、エルフとつるんで、子育てしてるなんてさ…面白かったよ。ねえ、まだゴブリンのフリしてるの?いくらあなたが真祖だからって、霧化を使いすぎると戻れなくなるんじゃない?」
返事はない。
「ちっ、窓の隙間から逃げたか。ビオーリ、探せ。あの卑怯者を、ぼくの前に引きずり出せ。このぼくの肩を折った罰だ。拒否すればすぐさま貴様を殺す」
「…かしこまりました」
「神樹様、悪いことは言わない。あんな君を見捨てて逃げるような男のことは忘れて、ぼくと一緒に…」
エクレとユキ、ゴブリン達は転移陣の上に既に乗っていた。陣が光を放つとその姿は掻き消える。エクレとユキの全力の変顔と共に。
「…神樹様、いい。かわいい。たまらん。でもババア、お前はだめだ」
「ババアはおやめください、陛下」
「さて、ゴーレム。お前もビオーリと共に捜索しろ」
ランクスは虚空を見ている。
「ちっ、遠隔操作だったな。操縦者め、ぼくを馬鹿にしやがって…」
ランクスの脚を蹴ろうとする。脚は包帯のようにバラバラになり、行き場をなくした蹴り足を嘲笑うかのようにふわふわと浮いていた。
(ふう…間一髪だったな…)
窓の隙間から一旦外に出たブラムは、コウモリ形態になり闇夜を飛行する。
(あの王様、気配察知はレジストするし、ゴーレムも気配察知は効きづらいしな…。あそこで待ってても墓穴を掘るだけだ。そう言えば昨日の大量の本に、【構造理解スキルを持っていると他者の察知系スキルや鑑定魔法を無効化できる】って書いてあったな。チートかよ)
エクレたちはセーフハウスに転移されている。転移陣は出入り口指定型のため、座標指定構文を解読できたとしても位置を断定できない仕組みだ。予めユキが裾から魔法陣の書かれた布を落とし、その布に【床に置かれたら綺麗に広がる】構文を付け足した。出口の転移陣さえ消去してしまえば、誰も追うことはできない。
(シャツのシワを伸ばす構文なんだよな。まさかこんな使われ方すると思わなかったろうな、開発した人は)
ゴブリンたちが先に現れたのは、万が一転移が失敗した時でも自分たちが犠牲になれば、という彼らの男気からであった。選抜されたのは演技派の肩車ゴブリンたちである。
(今回もMVPだったな。リーダーたちに早く報告しないと…しかし、どうやって街から出るか…だな)
街の上空は先日張り直した不可視化結界のお陰で入ることも出ることもできない。
自然と門に誘導される形になる。
上空から街を見下ろすと、甲冑姿の者たちがノムの店やギルド、施設、門の辺りを彷徨いている。全員揃いの甲冑にはフラクタル王国の紋章が刻まれている。
だが、一区画だけ甲冑たちが居ない地区があった。
(協力してくれるかな。…イチかバチかだ)




