カウントダウン5
突如エクレの後方に魔法の光が浮かぶ。
光と共に現れたのは、鍛え抜かれた緑色の筋肉を腰布で包み、草木でできた仮面をつけた男と、数匹のゴブリンたちであった。
「姫!我ラ助ケニ来タ‼」
「我は気高きゴブリン王‼そこの変態!姫はもらっていくぞ‼」
「ゴブリンが転移魔法を?ふん、そんな馬鹿な」
ようやく正気を取り戻したベルナルディは右眼の模様を強く光らせる。一瞬にしてゴブリン王は姿をかき消す。
「見えない…読めない…‼」
「ふん、我は神出鬼没のゴブリン王。鑑定魔法など当たるものか」
声だけの存在となったゴブリン王は悠然と声を掛ける。
「小癪な…」
「して人間の王よ。貴様の言う【永久の苗木】とやら、【枯死之王】と対になっているはずだが?」
「そうだよ。当代のゴブリン王は智者と聞いていたが、まさか伝承にも詳しいとはな」
「枯死之王は死の化身。現れればさぞ目立つことだろう。なぜ居もしない者が居ると豪言できるのだ」
「…居るからだよ」
苦々しげに呟くベルナルディ。
「は?」
思わず間抜けな声を上げるゴブリン王。
「くそ王族が…‼ぼくのこの瞳を使って【永久の苗木】を餌に【枯死之王】を探させるような真似を…‼許さぬ、【枯死之王】、王族どもめ…‼」
「ちょっと待って。全然話が見えない」
「うるさいぞ、この弱虫!さっさと姿を見せろ‼」
悠然とした態度の欠片もない、年相応な王の態度に、宰相は思わず王の肩に手を置く。
「そこまでにしましょう。御婦人方が怖がっておられる」
「うるさいのはお前だビオーリ!」
ビオーリが肩に置いた手に力をこめる。ほっそりとしたシワだらけの手元からベキベキと音がする。王の顔に脂汗が浮き出る。
「おっと、骨が折れてしまいました。後でちゃんと治さねば」
「ビオーリ…きさま…‼」
「無用な戦争を起こすより、私の首が飛んだほうがずっとマシです。少しは学びなさい、陛下」
「くっ…」
ビオーリの手から淡い光が漏れる。王の脂汗が少しづつひいていく。
「さて、エクレ様。やはりゴブリン達と行かれるのですか?」
「んー、ゴブさんたちも、ユキばあちゃんも、おじちゃんも、みんな家族だから、はなれたくない…かな?」
「そうですか。まあ、そうでしょうね」
「…ふざけるな…」
顔面を蒼白にした王が呟く。
「万が一、枯死之王が完全復活し、永久の苗木と近づけば、辺り一帯が虚無と化すぞ」
静まり返る一同。
「枯死之王は死の象徴、永久の苗木は生の象徴…ぼくは森で見てしまったんだ。神樹様の影響で木に変えられた人たちを。だからどちらも、誰か力のある者が監視しなければ…‼」
「ねえ、ヘンタイさん?」
エクレがベルナルディに近づく。
「1人でがんばんなくてもいいよ?」
「…そうだな。でも…これはやり遂げなくちゃいけないんだ。なあ、そこに居るんだろ?【人形】」
天井から包帯のような物が降ってくる。
それはひとりでに蠢き徐々に人間の形へと姿を変える。
エクレは慌ててユキの後ろまで引く。
「ランクスお兄ちゃん…どうして?」




