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カウントダウン4

約束の刻限。

迎賓館の応接室には憮然と腰を下ろすベルナルディと、その後ろに控えるビオーリ。

「この国の古臭い所は実に落ち着く。嫌いではない。ただ、王族は腐っているな。このぼくを利用しようなどと。腸が煮えくり返る思いだ。心底滅ぼしたくなる」

「おやめください陛下」

「腑抜けめ。父王の治世に於いて【氷血】と呼ばれた貴様が」

ハイライトの消えた瞳で王を見下ろす。【氷血宰相】と呼ばれる所以は、先王の時代に造反する側近たちを全員粛清したことに他ならない。冷徹な法の番人であったビオーリはいつしか、ベルナルディの教育係としてその地位を盤石にしていった。

「ふっ、その目だ。ぼくは嫌いじゃないぞ、ビオーリ」

不意に扉が叩かれる。

「失礼します、陛下。お約束されているという者たちが来ております。しかし…」

「歯切れが悪いな」

「失礼しました!あの男は居りません」

「…そうか。通せ」

扉越しの会話が終わると、鎧の擦れる音は遠のいていく。

数分後、王の前に現れたのは異国の「着物」と呼ばれる装束に身を包んだ老婆と、緑色の肌を持つ少女。

王は息を呑み、椅子から立ち上がると少女の前に跪いた。

「陛下!おやめください!跪くなど…‼」

「ああ、なんと神々しい…!お会いしとうございました、神樹様」

その様子に完全に引いているのは傅かれた本人であった。

「大変だユキばあちゃん。ヘンタイがいる」

「エクレちゃん、それ言うたらあかん」

王は今にも泣き出しそうなほどに瞳を潤ませる。

「ぼくの瞳はですね、神樹様、構造理解でハッキリと、貴女が神樹様であると教えてくれるのですよ。ああ、なんと…なんと愛らしい…」

完全に王のテンションに呑まれた3人は目を見合わせる。

「えー、ブラム殿はいらっしゃらないようですが、貴女様は…」

「急なご訪問、大変失礼いたしました。ブラムの代理で参りました、ユキと申します。この子やブラムの親代わりと申しましょうか。この子はエクレと申します」

「おじちゃん、この人大丈夫?」

エクレはいまだ感涙にむせぶ王を指差しながら小首を傾げる。

「大丈夫だよ。後でめってしとくからね」

エクレの視線に合わせるビオーリ。自分の孫を慈しむような眼差しに、ユキはひとつ息をつく。

「ブラムから宰相様のお話は伺っております。お話しの分かるお人であると」

「あの短い時間でその様にご判断いただけるとは、何とも嬉しい限りですな。それで、当の本人は…」

「逃げました」

「ああ…」

卑屈さの権化のような吸血鬼の態度を思い出すと、納得せざるを得ない。

「何もすぐにエクレをどうこうすることないやろって言うたのですが、エクレを喪うなんて、ぼく、耐えられないって!自暴自棄になりましてね。情けない男です。後で百ぺんしばき倒します」

「なるほど」

ジト目でユキを見つめるエクレ。

「それで宰相様、エクレはどうなってしまうのでしょうか」

「そうですね、我々は明日ここを発つ予定です。できれば、一緒に本国にお連れできれば、と…」

「いいよ」

元気に応えるエクレ。潔く、即答であった。

「ブラムおじちゃん、ちょっとヘタレすぎてイヤになっちゃったの。でも、こっちのおじちゃんは好き」

「エクレ!」

慌てた様子のユキ。

「ぼくは?ねえ、ぼくは?」

「おうさまヘンタイだからイヤ」

打ちひしがれるベルナルディ。

「ゴホン…。では出発するにも色々と準備が必要でしょう。今日はこちらに泊まっては…」

王を尻目に宰相が声をかけた。

その瞬間―。

「待たせたな、姫よ」

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