永久の苗木2
時は少し遡り―
2頭立ての馬車を隊の中央に配置した騎馬兵の一団がレイザンに到着すると、門番たちが待ち構えていたように隊列を組み敬礼する。
「フラクタル王国の使節団の皆様、遠路はるばる、ようこそお越しくださいました」
警吏隊の長が声を張り上げる。王都からは既にレイザンの警吏隊に来訪の旨は一報が入っており、ほぼ現場に居ない長が隊列を指揮しているのもそのためである。
(フラクタル王国か…懐かしいな)
セキトは馬車の横に刻まれた紋章を眺める。馬車の扉が開き、緑がかった黒髪を後ろに撫でつけた眼鏡の男が現れる。身長は護衛の兵士たちより遥かに低く、軍服が若干ダボつくほどに痩身であった。
「はじめまして。フラクタル王国使節団団長、宰相のビオーリと申します。この度は急な訪問にも関わらず斯様な歓迎をいただき、誠に有難うございます。王もさぞ、お喜びになるでしょう」
(翻訳魔法を常時発動の上…髪色も誤魔化してるな。魔力量が桁違いだ)
フラクタル王国は古代魔術と機械技術が盛んな、自然と共存した豊かな国である。【神樹】を崇め祀る王族の下、奇祭も多く、観光地としての人気も高い。
セキトは鑑定魔法を早々に解除すると迎賓館への送迎の隊列に加わる。
大通りを少し進んだあたりで、馬車は急に止まる。馬車の中が急に騒がしくなり、飛び出したのは1人の中性的な若者である。
深い緑色の瞳、輝く金髪は短く、何より布面積が非常に小さい。彫刻を思わせる完璧な造形美、透き通るような白肌。軍服姿や甲冑の者たちの中にあり、完全に別格の存在であると示すかのように。
「お待ちください!一国の主が1人で出歩くなど…」
「外遊は初めてだからな。他国を知るのに、自分の足で歩かないのはどうかと思うぞ」
「しかし…‼…せめてマントは羽織ってください。我が国の衣装は目立ちすぎます」
(…ということはこのヒョロガリ宰相も国に帰れば…ちょっと見たくないかも)
大仰にマントを羽織る。残念がるような吐息が往来から聞こえるほどだ。
「さて…ここがこの国の近衛魔術師がイチオシする店か…。どれ」
宰相の制止も聞かずに店に入っていく。
中には所狭しと魔道具が並び、青年が1人で店番している。
「いらっしゃいませ」
「ほう…無属性魔法を古代文字と3D構造で…。店主はニッポンジンか?」
「いいえ、エルフですけど…考案に協力したのは異世界人だと聞いております」
「ふっ、やはりか!ニッポンジンはこれだからたまらない。行くぞ、ビオーリ」
「はっ」
「あのー…」
事情を呑み込めない青年を置き去りに、王は颯爽と馬車に乗り込む。
「見たか、ビオーリ。あの精緻なゴーレムを」
「ゴーレム?あの青年が…ですか?」
「遠隔操作とはなかなか味のある技術を使う。この国の魔道具技術がここまで発展したとはな」
王の右眼に紋様が浮かぶ。特殊スキル【構造理解】を持ってすれば、どんな複雑な機構にしたとしても構造が丸裸になってしまう。
フラクタル王国の機械技術は、1人の異世界人による技術革新と代々の王が持つ特殊スキルによる所が大きい。
「中が空洞とは…ふっ、一体何を入れるつもりなんだろうな」
修正点:左眼を右眼に変更しました(右脳左脳の処理範囲を考えると…軽微ですがちょっとしくじりました)。




