永久の苗木1
♪我らが王〜 心優しき 月の王〜
悪しきをくじき 弱きを守る
賢王 拳王 ゴブリン王〜♪
森の中に木霊する歌声。ゴブリン達に混じって歌うのはエクレだった。
(すまん、何言ってるんだかさっぱり分からないけど、恥ずかしい歌詞なんだろうなとは予測がつくぞ、うん)
歌詞は全てゴブリンの言葉であり、人間には「ギギ、ギャ、ギャギィィィ」という具合にしか聞こえない。しかし、ゴブリン達は羨望の眼差しでブラムを見つめながら、声高らかに歌い上げる。傍らで聞くトーマスも拍手をしてはいるが全く理解していないようだ。
「エクレちゃん、お歌上手〜。ゴブさんたちも素敵なハーモニーだよ」
「うむ、素晴らしいゴブリン語だったぞ」
「えへへー。こっちのゴブさんはね、吟遊詩人なの」
「オオ、麗シキ姫ノゴ帰還ニ、王モゴ同行ダッタトハ」
(あ、道理で流暢なのに交渉しないはずだわ。褒めちぎって終わりになりそうだもん、なんとなく)
「今度、人間の言葉で作るぞって言ってるよ」
頷く吟遊詩人ゴブリン。
(作らなくていいです)
エクレ曰く、最近集落に襲撃に来る冒険者がパタリと居なくなったらしい。
確かにブラムはギルドに状況説明だけはした。夜遅くに駆け出し冒険者がゴブリンの耳だけ取っていくのが不可解でならないと。
いくらフットワークが軽い組織とは言え、ブラムの曖昧な言葉だけで動けるほど小さな組織ではない。以前から小さな綻びがそこかしこにあり、それが大きな穴になりかねないから埋めた、と考えることにする。
「アト、妙ナ集団ガ通ッタ」
「妙な集団?」
「人間、森避ケテ移動スル、普通。森ヲ馬車ガ通ル。不思議」
「メイジのゴブさんがね、木が自分からよけるのを見たって。こう、ぐいーんって」
「木、操作スル魔法、ごぶりんデキナイ。木、生キ物。姫、デキルケド、ごぶりんチギャウ」
「人間でも出来る者は居ないぞ。エクレのコレも、魔法というより特殊能力に近いみたいだし」
以前、ノムが興奮気味に魔力感知の装置を眺めていたのを思い出す。エクレを未知の亜人種ということで一旦扱うことになったのも、魔力感知装置の針が全く微動だにしなかった故である。
「王モ、特殊能力アル。逞シイ体」
「あれは魔法だ。残念ながら…」
(いや、待てよ?加護魔法であれば生物に対して影響を及ぼすことは可能だ)
色変化魔法は無属性に大別され、対象を膜で覆い屈折率を変えることで実現しているので、一見対生物のように思えるが原理は異なる。一方パワードふんどしは地の加護により疲労を軽減するというもの。
同様に回復魔法は体組織を光の加護による修復という点では生物に作用しているとも言える。
(…無属性魔法では生物に作用はできない。そして木の加護属性は現在では存在を否定されている。トレントなどの樹木操作は完全に種族特性…。現在…ということは…?)
「その一団、どこへ向かった」




