とあるギルドの調査報告
「ギルマス、匿名の告発に関する調査報告が上がりました。お目通しいただけます?」
「うむ、見よう。…やはりか」
ギルベルトは眉根を寄せる。この所、初級冒険者の間で討伐証拠品の偽装や不正が極端に増えている。
「水源の調査をした所、意図的に魔石が水脈に設置されていた、それによる中毒死や調査隊によって駆除されたゴブリンの耳を切り落としてギルドに提出した…と…。冒険者の品位が著しく落ちているな」
「第三者の証言ですが、調査隊隊長のミランダが、現場の浄化作業まで全て行ったと聞いております」
「冒険者の為の教育機関の新設、本格的に考えねばな。流石にミランダに教鞭をとらせるのは…」
「ええ。彼女はプレイヤー向きですが教育者向きとは言い難いです」
「【銀氷の魔女】は?まだこの街に滞在しているはずだが」
「彼女は亜人種ではありますが長命種ではありません。今も存命かどうか…」
「そういえばゼンエモンが来ていたな。あやつなら受けてくれるやもしれん。ダメ元で当たってみよう。それともう一つ」
報告書の山からある案件に関してのファイルを見つけ出す。
「ここの所、ゴブリンの行動に変化が見えてきたようだな」
「はい。人類への略奪行為は一切なくなり、森の魔物を狩って金銭を得る方向にシフトしたとか」
「そこまで知能が高い魔物だとは思っていなかったが…」
ゴブリンと言えば初級冒険者が誰しも一度は通る道である。原始的な生活をし、独自の言語体系を持つ。武器を持っている者は集団の中でも比較的強者、と見られていた。
「なんでも、新たな王が理知的な個体のようで、尚且つ素手の一撃でブラッディベアを屠るほどの肉体の持ち主、とのことです」
「ブラッディベア…だと!?…うむ、今出ているゴブリン討伐関連のクエストは全て停止だ。我ら人類に歯向かった時に再開するか考えれば良い」
「かしこまりました。しかし駆け出し冒険者のレベル上げが容易ではなくなりますが…」
「今回の不正受給、全てゴブリンに関する物ばかりだったな。しかも、今回の水源調査の結果、彼らは水源を守り続けている種族だという仮説が完全に肯定された。敵対する理由はどこにある?」
「確かに…」
「森の魔物は他にも居る。一旦、今発行している依頼書の見直しを行おう。かなり人員が必要になると思うが、できそうか?」
「可能な限り。すぐに取りかかります」
ギルベルトが鷹揚に頷くと、そそくさと執務室を後にするリリー。
(ギルドを、人類を動かしてしまうとは、ゴブリンのなかにもとんでもない逸材が現れた…ということか)
報告書には先代のゴブリンキングの絵姿と並び、現在のゴブリン王の姿が描かれている。服こそゴブリンのそれで半裸だが、顔が布で殆ど覆われている。
(案外人間…だったりしてな)




