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ゴブリンの王4

風が凪ぎ、木々の合間を月光が差す。

一見小さな水たまりだが、岩の合間から染み出た水を受け止め、今にも土に染み込み消えてなくなりそうなほどか細い川を形成していた。

「ここが水源か…」

「ココノ水、美味シイ。ごぶりん下流ニ住ンデル。デモ…」

水が染み出す岩からは何も感じない。普通に美味しい水であった。

「先程のところまでこの水の線を辿って戻るぞ」

道中にも何も感じる物はなかった。

(なんだろう…既に浄化済みなのか?微妙に魔力を感じる…)

先程のゴブリン集落まで戻ると、先程まで居なかった人物が居た。

大きな帽子を被り、羽衣のようなローブを身にまとっている。その人物は死にゆくゴブリンの頭を自らの膝に載せ、浄化魔法を発動していた。

「清らかなる魂に、せめて清らかなる安息を…」

歌うような詠唱。

(【千の護り手】ミランダ。何故こんな所に…。いや、それよりも、何処かで同じ匂いを嗅いだような…)

ギルドでは遠目で見るばかりだったミランダが目の前に居る。

「…どなたかしら」

「いや、驚かせてしまいすまない。我々は水源を守りに来たゴブリンの一団だ」

「ゴブリン…そう、この子たちの仲間なのね…」

その手は血に塗れ、ローブは薄汚れている。しかし月光を浴びたミランダの髪は金糸のように煌めき、ローブは内包している魔力で薄ぼんやりと輝いている。

「水源の浄化は済んでおります。原因となっていた魔石も取り除きました。ですが、このまま亡骸を放置してしまうと、また魔素による汚染が進んでしまいます。荼毘に伏されるのであれば火葬をおすすめしますわ」

「感謝する、月の女神殿」

ミランダは一礼すると、大森林の木々の合間に姿を消した。


(ふう…バレるかと思った…うっかり名前を言うような愚を犯さなかった俺、グッジョブ)

目の前では炎が燃えている。鎮魂の灯火。

ゴブリンたちが肩を寄せ合う姿を距離を置いて見つめる。匂いを誤魔化す為にと念の為持ってきていた酒瓶を開けると、勢いよく火に掛ける。炎は更に燃え、周囲を赤く染め上げる。

「王、今何ヲ…」

「東方の国ではな、清めの火に酒や塩などを振りかけて、その効果を上げる風習があるそうだ」

「酒、我ラモ飲メナクハナイ。少シ分ケテクレ」

(まあ、大工たちが持って帰り忘れた酒だ。全部くれてやろう)

酒瓶を差し出すとゴブリンたちはチビチビと回し飲みし始めた。

(献杯か…。人間の方がよっぽど心ないことをするよな。明日ギルドに報告に行くとするか。告げ口みたいで嫌だけど)

ブラムは早々その場を立ち去ることにした。

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