ゴブリンの王2
家の前には見慣れない集団がたむろしている。
腰にボロ布のようなものを巻き、緑色の肌にポッコリと突き出た腹。手には刃毀れした剣や打製石器を棒に括り付けた槍などを手にしている。
中には他の緑色たちより布面積が多く、自分の背より長い杖を持っているものも居る。
(ゴブリンか…何故今頃になって…)
キングを撃破したのはかれこれ数ヶ月前。報復に来るのであればもっと早く来るはずで、共連れが居なかったため場所の特定に時間がかかったと考えるのも無理がある。
「王ダ‼王ガ帰還サレタゾ‼」
「皆ノ者ヒレ伏セ‼早ク‼」
突然、ゴブリンたちはブラムに向かって平伏し始めた。後ろを見ても誰も居ない。
「待て、俺はゴブリンじゃないぞ」
「知ッテル」
「きんぐ倒ス。王ニナル。コレ掟」
流暢に話す者も居れば辛うじて聞き取れる程度の者も居る。
「姫、貴方ヲ気ニ入ッタ。姫ガ決メタカラ王」
「チギャウ、キング倒シタ。強イ。王」
「ゴホン…あー、基準はちゃんと決めてからにし給え。そもそもゴブリンじゃない亜人種が王になって、お前たち的に納得できるのか?」
「納得シタ。ヤッパリ貴方ガ王デアルベキ」
「王様バンザイ、王様バンザイ」
「賢イ、強イ、王ガ必要」
「つまり、お前たちは俺に何かしてほしいと…そうだな?」
「チギャウ。…デモチョットチギャクナイ」
口々に大声で話すため頭が痛くなってくる。
「あー、わかった。とりあえずこうしよう。お前たちの中で代表を決めて話してくれ。流石に初対面なのに全員の意見を聞けというのは無理がある。そうは思わないか?」
「確カニ」
ゴブリンたちは円陣を組んで話し始める。ゴブリン同士だと独自言語で話せるのだろうか、意思決定は早かった。
「オ待タセシタ。無礼ガアッタ。謝罪シタイ」
「構わん。続けてくれ」
「マズ家壊シタ。謝罪シタイ。シカシ直ッテル。めいじ達、土魔法使エル。直スノ手伝イ来タ。遅クナッタ。謝罪シタイ」
「別にお前たちがしたことではない。何よりお前たちの王は魔素に侵されていた」
「マソ…」
「魔素!ヤハリ、寛大ナル御方ノ変貌ハ…」
(こっちのゴブリンの方が流暢だな。どういう基準で選定したんだゴブリンよ)
「騒ぐな。続けてくれ」
「スマナイ、同胞ガ。人間、家直ス、金居ル。ゴブリン、金ニナルモノ、ナイ。ケド我々ヲ殺セバ、魔石アル。ココニ来タ者、全員覚悟デキテル」
(やめて!俺のせいで死なないで!)
「お前たちが王と崇める者が金策もろくに持たない男と思われているのが気に食わん。その覚悟とやら、別の時までしまっておけ」
「ナント!先代ヲ凌グ寛大ナ王ヨ‼」
(だからお前が交渉役しろって。かわいそうだろ、涙目になってるぞ、交渉ゴブリンが)
「王ハ、間違ッテイナイ。我ラ、崇メル王、合ッテイタ」
咽び泣くゴブリンたち。
(純粋でいい奴らじゃないか。なんで討伐対象になってるんだ?顔がこわいからか?)
「で?お前たちここに死にに来たわけではないだろう。頼みがあるんじゃなかったか?」
「感謝スル、王ヨ。人間、我ラノ集落、来タ。水源、毒ニ侵サレテル調査。我ラノセイデハナイ」
「毒ってことは、お前たちも…」
「同胞、死ンダ。毒モソウダガ、人間ニ殺サレタ」
(確か冒険者ギルドに調査依頼が来ていたな。確か水源の浄化がメインだから回復術師が主なはず…)
「よし、準備するから待っていろ。すぐ水源に出発するぞ」




