ゴブリンの王1
修繕した寝室に再びベッドを設置するため、今日も日課の狩りと納品に勤しむ。もちろん、施設への寄付も忘れない。
すると、聞き慣れない赤子の泣き声がする。
「おお、おお、ようけ泣きよるわ、元気元気」
「ユキさん!シワシワだから怖がってますよ」
「誰がひすばり干しブドウやねん、アホ‼」
「ああ、また大きな声出すから…」
燃えるような赤毛。水色の瞳。
「おう、ええとこに来たなブラム。新入りのアンナちゃん言うんやけど、一時預かりっちゅうやつや」
「ユキさん、おしめが濡れているようです。抱っこでは泣きやまんでしょう」
「んなさっき替えたばっかやで…ってほんまや‼」
おしめを替えるユキの手捌きは正しく神速であった。
「「おお…‼」」
「ボサッと拍手しよらんと、寝床しゅっとせえ。…手え、洗ったやろな」
「清浄魔法はかけました」
「ならよしっ」
そっと寝床に置く。寝返りをしてみたりお腹でバランスを取ってジリジリ回ってみたりと、とにかくよく動く子である。
(あ、これオムツずれたな)
瞬間、小気味よい音と共に芳しい香りが漂う。再び女児の顔色は曇り始め…
「つ…疲れる…」
「わいも久々やからな。しんどいわ」
「こんなにオムツって替えるもんでしたっけ」
「せやで。わいがみいんな替えとったんやで」
「「「おみそれしました…‼」」」
スヤスヤと寝息を立てるアンナの寝顔に全員夢中であった。他の子どもたちは就寝時間をとうに過ぎており、ここに居るのは職員と高齢者施設の利用者だけである。
「しっかしあのアホ、久々に会うたっちゅうにろくに顔も見んと帰りよってからに」
「もしかして、ゼンエモンさんの言ってた子ですかね」
「せや!アンタの紹介って言っとったで。わいに相談もせんと薄情な奴やな」
ユキのお小言はこの頃長くなる一方である。心なしか肌艶も良くなっているように思われる。
(知り合いの子どもって言ってたけど、何処かで見覚えが…)
ふと、数年前にセーフハウスに転がり込んだ少年と、男装した少女のことを思い出す。
(元気にやってるかな。冒険者ギルドではそれらしい子は見かけなかったけど、別の街で活躍してるのかも…。いいなー、友達以上恋人未満のキャッキャウフフ。俺もそんな人生、送りたかったな…)
音を立てないように施設を後にすると、いつもより多めに狩りに勤しむこととする。
(ふ、今宵の月は滲んでやがるぜ…)




