氷樹の王5
魔法陣補修組は魔物たちが占拠している国境側ではなく、反対の大森林側の門から二手に分かれて外壁の陣を点検していく。
陣は石のレリーフの溝に七色魔石と呼ばれる魔石の混合物が塗られ、更に形態保存の魔法陣が組み込まれている為経年劣化しないように防護策が練られている。
(よく考えられているな。魔力量も…うむ充分だな)
「おい、ちょっと来てくれ」
魔術師の1人が陣を訝しげに見ている。
「魔力回路にこんなんが詰まっていたぞ。レリーフを壊さずに取れる奴、居ないか?」
ブラムも興味本位で覗き込む。魔断石と呼ばれる真っ黒な石であった。回路を意図的に遮断する時に使われる物である。
ブラムはそっと魔断石に触れる。その名の通り魔力を通さない物質ではあるが、分子結合を緩める魔法であればその限りではない。
「ぶ…分子魔法…」
「間近で見たの初めてだわ」
ポロポロと崩れ落ちる魔断石。
「ふう…。他にもあれば言ってくれ。こちらで対処しよう」
「心強い。ポーションなら持ってきている。ヤバくなったら頼ってくれ」
魔道士たちは魔断石を見つければすぐにブラムに報告し、中にはブラムから教わりながら分子魔法に挑む者や、使い魔に手紙を持たせて南側の一隊に知識を共有する者も現れた。
(後方支援部隊は流石手慣れてるな。俺も頑張らないと)
魔断石が除去できれば魔力を注入する。レリーフが崩れている所があれば土魔法で修復し、七色魔石のチョークで回路を復元する。
国境側に近づくにつれ、損傷個所や嵌っている魔断石の数も増えてくる。
遅れて到着した物理攻撃部隊が合流し、修復に当たる魔道士たちの援護に回る。
「くっ、確かに弱いが、これじゃきりがないね」
「無限湧きエリアでもできちゃってるんじゃない?そこ潰さないと意味がないよ」
北側の魔法陣が修復され、余力のある者が南側に応援に行き始めた頃、1人の冒険者の一言に部隊は戦慄した。
「街の周囲に魔素溜まりってこと?」
「ギルドは何をしてたんだ?」
「いや待て、どう見ても人為的じゃないか」
「ってことは…隣国の工作員か?」
「国家間の戦争には関わっちゃいけないって…」
情報が錯綜し、場が一気に騒がしくなる。
「囀るな。今は一つ一つ、できる所から対処するしかない。違うか?」
ブラムが一喝する。
「お、お前新人のクセに偉そうに…‼」
「待て、一利ある。ここで不要な詮索を始めるとそれこそキリがない。ブラムさん、お噂はかねがね。もしよろしければ共に魔素溜まりの捜索にあたってはいただけませんか。僕はレンジャーのセイキと申します」
(セイキ…?何処かで聞いたことがあるな)
一見優男に見えるが、その耳は尖っており弓矢を肩に担いでいる。
「使い魔が戻ってまいりました。セイキさん、ギルドに魔素溜まりの件、伝達しますか?」
「ええ、お願いします。余力のある皆様は私についてきてください」




