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吸血鬼の夜は遅い5

くどいようではあるが、吸血鬼は数十年間の半引きこもり生活によって、ビンテージの、苦味走った彼女いない歴=年齢であった。

書物で「吸血鬼にとって処女の血が何よりのご馳走」といくら読んだところで、どこまでいっても彼にとって【処女=孤児院で面倒を見ていたチビたち】【保護対象】という頭しかない。

ベルが少年の恰好をしているのには理由があるはずなので、そこは触れないほうが良いだろう。とは言え、急な歯の疼きと喉の渇きは尋常ではなかった。

(禁欲生活の弊害がこれか。うわ、絶対変質者だと思われてる。どうしよう、どうしよう…)

「あの、大丈夫ですか?ポーションなら持ってますけど」

「問題ない。それは君たちが使うといい。ちょっと外の空気を吸ってくる」

「外は危ないですよ?まだ夜中ですし」

「かまわん。ここに居るということは…分かるだろ?…凄腕的な意味で」

「分かりません。僕もここに来るまでにオークに襲われそうになりました」

「君こそ、早く寝たらどうだ?」

「十分寝ました」

「そうか」

話している内に多少疼きが気にならなくなった。理性のガッツポーズが見えた瞬間だった。しかしここまで必死に食い下がってくる理由が分からない。

「もしかして、君はこの本がそんなに気になるのかね?」

「はい。ここに居る1カ月の間に、僕たち自炊しなくちゃいけないんですけど、全然料理ができなくて。そしたら貴方が料理本を読んでて…これも何かの縁かなって」

1カ月…。目の前が真っ白になった。

吸血鬼は、自分が吸血鬼だと知られたくないが故に一人の生活を望んだ。これ以上ボロが出るのを恐れ、他人との会話も接触も最低限にしたかった。

ベルは、知識欲の前では理性が白旗を揚げるオタク気質のようだが、根は理知的で小さな淑女と見て取れる。だがセキトは、あのたった数瞬の邂逅ですら思い知らされる程に紛うことなき男児である。

「そうか。この部屋の本は好きに見ていい…と管理人が言っていたぞ」

「やった!…あ、失礼しました。では早速…あれ?」

ベルが本の背表紙をうっとり眺めた一瞬の隙に、吸血鬼は姿を消した。

固有スキルの【眷属変化】でコウモリに化け、天井の梁に隠れる。

「…名前聞くの忘れちゃった。一緒に泊まってるんだし、また会えるよね。うん」

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