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氷樹の王1

寝室の改修工事は着々と進んでいる。修繕自体はそこまで大規模ではないが、一番のネックは人員と物資の運搬であった。

初段、森の中ほどへの資材搬送と人材派遣は不可能と判断され修繕計画自体が頓挫しかけた。

何より、施工主が夜間以外は話ができないというのも大工たちにとって不満の種であった。

資材は転移魔法と現地調達の併用、大工たちは工事の間は施工主の家に宿泊する等の条件を出し、作業報告や指示に関しては基本的に職人ギルドを仲介するなど代替案を呈示したことで交渉成立となった。

(転移魔法の専門書があって良かったな)

転移魔法には座標指定をするタイプのものと、ゲートの固有IDを指定するタイプのものがあり、難易度としては後者のほうが圧倒的に低い。また、構文を無生物限定や一方通行に設定した場合、インシデントリスクは格段に減る。

(お作法さえちゃんと踏まえてれば特段難しくないんだよな。魔石は大量に消費するけど)

とある魔道具職人が開発したチョーク型の魔法陣筆記具のおかげで、魔石の消費量も昔より格段に減っている。

大工たちとも時々話すが、魔法付与をされた下着、【パワードふんどし】のおかげで随分楽になったとも聞く。

どちらも同じ魔道具職人が開発したと聞き、俄然会ってみたいと思っていた矢先であった。


「エクレちゃん、いつも布でグルグル巻きにするの、かわいそうになっちゃって」

「なら売り子は他の子でもいいんじゃない?」

「いや、それがエクレちゃんが居るだけで売上が倍以上になるんですよ。人懐っこくてかわいいんですよ」

「でもあの肌だと、またゴブリンだって騒がれかねないし、あの子自身がかわいそうですよ」

いつもの通り施設に行くと、職員たちの立ち話が聞こえる。どうやらエクレの肌色のことで些か問題があったらしい。

「ふん、うちのかわいいエクレちゃんに肌色如きでゴタゴタグチグチ…。氷漬けにしたろか」

「「ユキさん、それはだめです」」

ユキが職員たちに窘められた所で件の魔道具職人の話をすると、満場一致の大賛成であった。


(で、至る現在っと…)

翌日、エクレの手を引いてとある職人の工房の前で固まっていた。

「おじちゃん?だいじょうぶ?」

(こういう個人商店って行くの初めてなんだよな。工房主はエルフって聞いたけど、この前の刀聖とかアマリリスさんみたいに、いきなり斬りつけられたらどうしよう…)

「ああ、大丈夫だ問題な…」

店のドアが開き上についた鈴がチリンチリンと鳴る。中からは黒髪で眼鏡の女性が現れる。ほっそりとした体躯からは殺気のさの字もない。

「おねえさんこんばんは!」

切り込み隊長はエクレだった。

「こんばんは。エクレちゃん…だっけ。飴ちゃん、美味しかったよ」

「おねえさん、お名前覚えてくれたー。すごいねー、おじちゃん」

エクレが話しかけると女性も微笑む。

(売り子として優秀とは聞いてたけど、人の顔もすぐ覚えるし、子どもができるテクを超えてやしないか?だがこっちの黒髪も伊達じゃない。なぜ職人の弟子?大店でも通用するんじゃないか?)

黒髪の女性は真っすぐこちらを向いているが、目を合わせることができず、むず痒い気持ちになる。

「すまない。この辺りでノムというエルフの魔道具職人が居ると聞いたのだが…」

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