表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/92

さようなら春の日3

それから数日後の夜。

店舗の看板を下げようと表に出ると、見慣れない男が立っていた。男の傍らにはいつぞやの布の塊がぴったりとくっついている。

「おねえさんこんばんは!」

「こんばんは。エクレちゃん…だっけ。飴ちゃん、美味しかったよ」

「おねえさん、お名前覚えてくれたー。すごいねー、おじちゃん」

「俺の名前もいい加減覚えてくれないか…」

ポリポリと頭をかく姿に哀愁が漂う。銀髪で痩身の黒尽くめというなんとも胡散臭い姿だが、どうやら子どもには懐かれているようだ。

「すまない。この辺りでノムというエルフの魔道具職人が居ると聞いたのだが」

「うちですね」

「うむ、そうか。実は特注であるものを作っていただきたいのだが、今はご多忙かな」

「多分大丈夫だと思いますけど…中でお待ちになります?」

「ありがたい。あまり人目につきたくないのでな」

1階の店舗ゾーンに通すと、布の塊がモゾッと動いた。

布の塊の中身は幼女だった。しかし肌が緑色で髪の毛は透けるように白い。骨格こそ人間のそれだが、一歩間違えればゴブリンと間違われかねない。

「驚かせてすまんな。この子は生まれつき肌がこの色でな。魔法を付与した衣服の噂を聞いて、ここでならお知恵をお借りできると踏んだのだが…明日にしよう」

「あー、パワードふんどしのことですかね。ちょっとお待ちいただいても?」

男は【ふんどし】の語感が気に入ったのか、小さく「ふんどし…」とつぶやいた。

「ゴホンッ…かまわん。こちらから押しかけたようなもんだからな」


「これは‼」

ノムは耳をピコピコさせながら少女の全身を隈無く観察する。

「長いこと生きてるですが、初めて見る種族です‼」

「やはりそうか。木を自由自在に操る能力も持ち合わせているようでな」

「うぅぅん…トレントだとしたらもっと樹木樹木してるですし、森から離れて自走しているなど…」

「えくれ、やっぱり変?」

「変じゃないです。全然、変じゃないです」

ノムが相手を慮る姿はなかなか珍しい。

「肌と髪を変色させる魔道具はそこまで難しくないです。ただ、わたしも分からない種族となると経過観察が必要です」

「むしろそれも織り込み済みでお願いに来た所だ。予算は如何ほどかな」

「そうですねー…王都にレポートとして各種データを送っても良ければ是非とも無料で引き受けたいです。むしろ金一封出すです」

「金一封は流石に遠慮させていただこう。エクレは、どうかな?」

「れぽーとってなあに?」

「エクレのことをいっぱい観察して、それで日記を書いてえらい人に見てもらうんだ」

「んー…おもしろい?」

「見る人が見たら面白いだろうな」

「じゃあ、いいよー」

無邪気な少女の笑顔に、その場に居る大人たちは頬がとろけてしまう。

「いつ頃からできそうかな?」

「布の工房と協力して作るですから、ちょっと調整に時間がかかるかもです」

「そうか…。また後日伺おう」

「よろしくお願いするです」

レムは銀髪の男と固い握手を交わす。何らかのシンパシーを感じたようであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ