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吸血鬼の夜は遅い4

翌日の夜も、吸血鬼が起きる頃には寝室で健やかに眠る2人の姿があった。

その次の日も、それまた次の日も…。

「何しに来たんだろうな。親は心配しないのかな」

赤髪の方、セキトと呼ばれた少年はこっちの世界がどうとか一度死んだとか、半狂乱中に叫んでいたが、もう1人の方はどう見ても育ちが良い。

纏っているローブが仄かに光ってるのが何よりの証拠で、光の加護魔法によって防御力を底上げしている。子どもが遊びで着るような代物では到底ない。

「何食べてるんだろうな…」

布団をはねのけていびきをかいているセキトの腹は、背中とくっついてしまいそうなほどに平べったい。ベルと呼ばれた少年が興奮していた魔導コンロも使用された形跡がなく、食卓にも食べ物のカス一つ落ちておらず、そもそも食べ物の臭いが何一つとしてないのも気になる。

「これは…いかんな」

不意に寝室の床を見ると、見慣れない大きな布が広がっていた。魔法陣が刻まれており、魔力をたたえて七色に仄かに輝いている。

「無属性魔法か…。座標指定構文?一方通行?受信専用…。なるほど、持ち運び式の転移陣か。面白いことを考えつくな、人間は」

セーフハウスの地下には彼の寝床である棺桶の他に、孤児院での学習などに使われていた大量の書物がある。彼の起きている時間は、家のメンテナンスと狩り、何度も読み返した本をまたさらに読み返すことに使われる。

「確か料理の本も…カビくさっ…今度虫干ししないとな…」

孤児院が廃業し、セーフハウスになってからの数十年、彼は一度も料理していないどころか、獲物の血液だけで生き延びていた。他の人種族が生活していた頃に大活躍していた畑も、今は完全に森の一部と化している。

「胃に優しいものにしないとな。野菜は…待てよ?街に行かないとだめか?王国通貨ってまだ使えるんだっけ?魔導冷凍庫の中身は…だめだ、あんなの食べたら俺でも死ねる」

詰んだ。数十年引きこもり、古い本の知識はいくらでも頭に入っているのに、新しい知識や常識がまるでない。

「そもそも通行税とか、今どうなってるんだ?くそっ!これだから引きこもりは…」

「誰か居るんですか?」

急に後ろから声をかけられる。鈴のような、正しくベルと言う名にふさわしい声だ。

「や、ややや、やあ…お目覚めかな?」

「何日間も寝てしまったようです。僕たちが寝てる間にいらっしゃったのですか?」

「あ、ま、まあそんなところだ…」

うん十年住んでますとは言い難い。

「その本は、また随分と珍しい。状態もしっかりしてますし、文法も…完全に古語ですね。まさかこれ、読めるんですか?」

少年がぐっと近づいてくる。何日も寝込むほどに疲れていたのに、今は知識欲に取り憑かれてでもいるようだ。

(花の匂いがする…なんだ?この歯が疼く感じ)

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