唐揚げ
「みなさん、お疲れ様でした!カンパーイ‼」
リリーが音頭を取ると他の面々もジョッキを高々と掲げ思い思いのメンバーと杯を鳴らしては飲み干す。
吸血鬼の里に関する諸々の事後処理で、冒険者ギルドはこれまでにないほど多忙をきわめた。ようやく処理が一段落したことや今後魔石採取で相当な収益が見込まれるということで、ギルド予算からの大盤振る舞いとなった。
(それでも、余りある富がギルドに転がり込むんだから、ブラムさん様々よね)
ギルドマスターは「俺が居たらみんな萎縮するだろ。今日は早く閉めるから行って来い」と男臭い笑顔を振りまいていたので、この場を取り仕切るのは当然副長のリリーになってしまう。
(下手な仕事より緊張するわ。私のお気に入りの店だけど…うんうん、みんな気に入ってくれたみたいね)
テーブルにはいつもの唐揚げや揚げ芋が大皿にうず高く盛られ、それらを若い職員が談笑しながら一つ、また一つと口に放り込んでいく様を見るのは幹事冥利に尽きる。
(うーん、あの子、ちょっと酒癖が良くないわね。間に入ろうかしら。あら、こっちの子はあんまり飲めないのね。ソフトドリンクってあったかしら)
職員たちの愚痴を聞きながらも、周囲への目配りは忘れない。そんなリリーの様子を誰よりも見ていたのはアマリリスだった。リリーの視線を追ってはリリーが気になっている人物に声をかけに行く。対人関係に疎く、常に何か口に入っているが、メニューを差し出したり、口論になりそうな所には唐突にストンと座る。
(んー、視線を読むより空気読んでほしいんだけど…いや、こっち見んな。サムズアップすな。ちょっと一旦食べるのやめてもらっていい?)
酒気の入ったアマリリスの挙動は不審そのもので、もっと自分以外の職員とも打ち解けて欲しいと願うリリーには頭痛の種であった。頬を食料でパンパンにする様は完全にハムスターであった。
「アマリリスさん!ずっと憧れでした!」
「もっもっもっもっ」
「俺と腕ずもうで勝負しましょう!」
「もっもっもっもっ」
(食べながら勝負すな!あっさり勝つな‼)
「かー‼やっぱ強ええわー!」
「お!俺も俺も‼」
「もっももー」
「現役時代も腹筋バキバキでしたけど、やっぱまだ鍛えてるんですか?」
「も!」
「すげぇ!6LDKだ‼」
「見てくれ俺の肩メロン‼僧帽筋なら負けないぜ‼」
(男子人気を掻っ攫うな!他の女子の視線に気づいて‼気づいてあげて‼っていうか一旦食べるのやめい‼)
「どうしたんです?副長、ちゃんと飲んでます?」
他の職員が空のジョッキに気づいて店員を呼び止める。
「ありがとう。明日は窓口業務だったよね。アマリリスにやらせるから、あなたバック業務よろしくね」
「もっ!?もー‼もっもっ!」
「だから一旦食べるのやめい!」
こうして、ギルド職員たちの宴は月が西に傾くまで続いた。




