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吸血鬼の里3

「顔色が優れませんが、どうかされましたか?」

「大丈夫だ、問題ない」

殆ど話を聞けていない。気を抜いてしまうと記憶の奔流に呑まれそうになる。

「すまない、もう一度先程の部分から頼めるか?」

「は、はい。魔素中毒と化した吸血鬼たちは一個体を残し、全員当該個体の眷属となった模様。この1年間、当ギルドでも監視を続けて来ましたが、眷属化した村人が近隣の村の偵察を始めていると報告がありました」

(眷属化…直接体に噛み付いて吸うことで起きる、とは聞いているが…共食いみたいな所か。完全に食糧難だな)

「そこでギルドは調査隊を派遣、高ランク冒険者を中心に編成した結果壊滅。私もその場に居りましたが、不覚にも魔素を受けまして…」

「で、それと我に何の関係があるんだ?よもや魔石で一儲けしてほしいなどと言うんじゃあるまい」

(この前のオレンジ髪の一件で吸血鬼だってバレたのかな…対消滅狙ってる?勘弁してくれ)

「いえ、先程の体捌き、実にお見事でした。【疾風の刀聖】の居合抜きを初見で見切るだなんて、よっぽどの達人とお見受けします。商人にしておくなんて勿体ないです」

「と、元冒険者が申しており、副長としても是非とも直談判したく、お呼びした次第ですわ」

(見切れてないし。食らってるし)

「お断りだ」

「そこをなんとか、調査だけですから、凄腕の回復術師も同行しますから」

「そのような者がおれば、そなたの腕もそうはならなかったのでは?」

「ぜ…前回は急な招集だったので応じられなかったと聞いております」

「他のメンバーは」

「前回は一般のギルド職員が書記官として居りましたが、今回は私が書記官として参ります。いざとなれば盾としてお使いください。ブラム様の他には【千の護り手】回復術師のミランダ様、【曲業師】レンジャーのセイキ様にも声を掛けております。撤退するのにあまり人数が多いと統制が取れませんから、他数名の高ランク冒険者に声を掛ける予定です。あと、【疾風の刀聖】ゼンエモン様にも、前衛としてご同行いただこうかと」

(ろくに吸血鬼の能力も把握していないのに強気な設定だな。ただ、ここで口を出してもオブザーバーとして扱われ兼ねないしな…これ以上知り合いが傷ついたりしたら目覚めは悪いし…ああ、ただの引きこもりで居ればこんな悩みは持たずに済むのに…)

「リリー?アマリリス?ちょーっと話が急すぎないかしら」

くちばしを突っ込んだのはサーシャであった。

「この方は商人さんなの。うちの大事な会員さんなの。確かに凄く強いかもしれないけど、無茶を言ってもらっては困るわ」

サーシャのベレー帽には何やらボタンが増えている。

(俺のマントのボタン…‼)

「そうね、あまり急に言われても…ねえ」

上司と別部署の上層部から睨まれ、不本意な色を隠せないアマリリス。

「も…元はと言えば商人ギルドのマスターが…ごにょごにょ」

「んー?聞こえるように言いなさい?アマリリスちゃんー?」

「うちのマスターに文句があるのかしら?」

「な、なな何でもないです!ブラムさん、今日のところは一先ず。お返事は明日で構いませんので。お時間をいただきありがとうございました」

高速お辞儀によりアマリリスの三つ編みが彼女の細い背中にベチンと当たる。

(女だらけの職場ってこわいな…がんばれ、アマリリスさん)

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