吸血鬼の里2
刀聖と呼ばれた異国の男は大騒ぎしながらも守衛に取り押さえられ、ズルズルと拘置所へ連れて行かれた。
ブラムはギルド庁舎の2階にある応接間に鎮座していた。
「お待たせしました、ブラムさん。商人の貴方に冒険者ギルドから依頼をするのは手続き上よろしくないので…」
アマリリスが連れてきたのは見慣れた2人の女性。
「こうして名乗るのは初めてですね。レイザン商人ギルド副長、サーシャです」
「同じく、冒険者ギルド副長リリーです。お見知り置きを」
どちらも名前はよく知っている。リリーに関しては対面で話すのは初めてではあるが。
(言えない。尻の人=リリーって覚えてたなんて、口が裂けても言えない)
サーシャが隣に座り、対面にリリー、斜向かいにアマリリスが座る。
「この度は冒険者ゼンエモンと弊ギルド職員アマリリスによる数々の暴行行為、誠に申し訳ございません。ギルドとしてお詫び申し上げます」
リリーは深々とお辞儀をする。
「ギルドは市井の人たちを守る組織です。その構成員が市井の方々を害した場合の賠償措置という制度がございます。聞けば、お住まいが魔物によって半壊しているとのこと。賠償制度を使用して修繕費に充てさせていただいてもよろしいかどうか、確認させていただければと」
「ああ、そうしてくれ」
(むしろ助かる。ありがたや、ありがたやー‼)
全力で五体投地したい気分を抑え、努めて横柄に頷く。あくまで迷惑を被った商人然とした態度を貫く。
(まあ、セーフハウスを不法占拠してるわけだし。いや、俺が先に住んでたんだし、俺の家ってことで。うん)
「寛大な処置、ありがとうございます。さて、本題はまだございますわ」
アマリリスが地図を出す。レイザンの遥か北東方向、大森林の北に位置する所に×印がついている。
「以前、調査隊が向かった集落です。ここには大量の魔石が埋没されていると見られています」
「掘ってみなければ分からない物ではないのか、鉱山など」
「それは…隠しても仕方ありませんね。…高濃度の魔素だまりになっており、住民が全員魔素中毒に侵された村なのです。しかも、住民は人種族ではなく、全員亜人種です」
ブラムやトーマスも含めた亜人種は、身体能力や特殊能力で人種族とは隔絶した強さを誇っており、危惧した王国の人種族により市中からの追放や間引きを行われた歴史がある。
現在では外聞が悪いと言うことで差別をしない旨の法律が制定されているが、全く機能していないのが内情だ。
トーマスたちの施設も街の中にあるとはいえ外壁スレスレの土地に隔離されている。
「厄介なのは、その亜人種が全員デイライトウォーカーの吸血鬼であることです」
「超希少種族で、その強さは並の冒険者が束になっても…」
(吸血鬼の…里?俺が孤児院に行った経緯は?何かに追われて?デイライトウォーカー?…真祖?)
ブラムの中で封印された記憶の鍵がカチリと嵌る音がした。
(何だ?この記憶…身に覚えが…)




