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サムライ·イン·ザ·ダーク3

あれから数週間後、カナデは国境方面の門周辺で籠を片手に立っていた。

籠には【最新翻訳装置!無料お試し実施中‼】の立て札。中身は耳かけの骨伝導イヤホンのような装置。

魔法陣を立体の層にすることで複雑な構文を省スペースで書き込む、細かい構文を正確に形作る為に型を使用するなど、現代技術の応用が随所に盛り込まれている。

「物理学に生物学に人間工学、電子工学にシステム…学園都市でもまず扱わない題材が、まさかここまで無属性魔法との親和性が高いとは…カナデの世界は興味が尽きないです」

瞳をキラキラさせるノムは夢見る少女そのものであった。

(オタク気質で理系女子で…あそこで気づいてくれたのがノムで本当に運が良かったな…)

ノムはレポートを提出する傍らで、転移装置のメンテナンス状況や次に使える日取りなどを王都に頻繁に確認していた事を最近になって知った。

(かれこれ1年ぐらい経ったのかな。よく転移モノだとあっちの世界とこっちの世界で時間の流れる速度が異なるとか、戻ったら自分は死んだことになってるって設定があるけど…)

後者の可能性に身震いする。

(お母さん、シノブ…私、生きてるよ!…あ、いけない、ちゃんと仕事しなきゃ)

カナデの本日のタスクは、隣国から来た人たちに一人でも多く翻訳機を試してもらうことだった。

立て札は読めないと考えていい。タリスマンは聞く人が分かるように自動翻訳してくれるとのことで、とにかく声を出すことにした。

チラリと横目で見て去っていく人、一瞥もくれずに通り過ぎていく人が殆どだった。

中には面白がって付けてくれる人も居たが、ただの新しもの好きで特段言葉に苦労してるわけでもなかった。

(無駄に耳垢付けられた…。うわ、こっちは握りつぶされてる。最低)

異世界の民度は思った以上に低かった。差別をおくびに出すどころか手まで出すような人種族も少なくない。

(場所代とか言われて変ないちゃもん付けられた時にってノムが渡してくれたけど…出番が早く来そうで嫌だな)

「おぬし、少しよろしいか」

ふと、後ろから呼びかけられる。気配は殆どせず、コツっと杖をつく音が石畳に響く。

その男の見た目は完全に侍であった。見た目はどちらかというと、暴れん坊な殿様と言うよりは三度笠を被った風来坊然とした方の侍だった。ただ、刀は腰に脇差しがあるのみで、目を瞑り、杖をついている。

「拙者の国の言葉に随分近い。国は何処ぞ」

「ニホンです」

「うむ、知らぬな。…やや、これは失礼」

一礼するが微妙に正面を向いていない。

(全盲?それにしては距離が適切なような…)

「ところで翻訳機と聞こえたが、誠か」

「はい」

「ほほう、翻訳の魔法やスキルが使えない市井の民には救いとなろうな。付けてもよいのか」

「ええ、勿論」

侍に手渡し、付け方を手を取りながら教える。目をカッと見開く。そこには白く濁りきり、萎縮した黒目。

「ほう、これは‼往来の言葉が全て分かるぞ!」

「実は私も翻訳魔法が使えなくて、今丁度装着してるんです」

「これはどこで買える」

「いえ、まだ試作段階ですので…よろしければ差し上げます」

「誠か‼おぬしは俗世に舞い降りた天女のようなお人だ。是非、名前を聞かせてはくれまいか」

「カナデです」

「そうか。カナデ殿…良い名だ。拙者はゼンエモンと申す。何かあれば拙者を呼べ。どこでも駆けつけようぞ」

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