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とある勇者の冒険譚2

「ここが…【終わりの島】か…」

俺たちは荒れ狂う海を渡り、這々の体で島に到着した。

全面、熔岩が冷えて固まったような黒黒とした岩に覆われ、所々に透き通ったガラス質や、色とりどりの魔石が見える。

「すごい、宝の山じゃない」

「魔素が…濃すぎます」

「無理をするな、ベル。皆も、無理をせずに撤退してくれて構わない」

「ただ、それではセキトが…‼」

「心配ねえよ、俺がついてる」

元魔王崇拝者のブラウンがその拳をパキリと鳴らす。

「俺には魔素は効かねえ。むしろこっちの方が動きやすくていい」

表皮に黒い模様が浮かび上がる。それは血管の表面を這うように、古代の文字がビッシリと描かれたものだ。

「いつ見ても凄いな」

「生きて帰れたら教えてやるよ。厳しいぞ?俺の修行は」

「楽しみにしてるよ」

「セキトくん」

回復術師のミランダは自分の帽子に付いたブローチを手渡す。

「即死攻撃と状態異常の大半はこれで防げるわ。幸運値も上げるはずよ。生きて帰って」

「ありがとう。じゃあ、行こうか」

俺とブラウンは黒黒と聳える城へと一歩踏み出した―。


(ま、実際はもっとグダグダなんだがな。ミランダは涙がマスカラとかで真っ黒だったし、ベルはしがみついて離れないし。ブラウンにいたっちゃポージングの練習しだすし…)

今日は殊の外暑い。街の外壁沿いに立ち並ぶ長屋の通りにはそこかしこに水路があり、昼間は職人たちの嫁が洗濯しながら井戸端会議に花を咲かせ、その横で水遊びをしている子どもたちが居る。

(足、浸けたら気持ちいいだろうな。おっさんがやったらおかみさんたちから怒られそうだけど)

門番は非番、アンナは学校に行っている。

学校とは言え、長屋の二部屋をぶち抜いて敷設された塾のようなもので、最低限の読み書きや計算を教わる。高等教育を受けるとなると、大森林の遥か向こう、王都を更に越えた学園都市に行かねばならない。

(ベルが髪の毛の色を変えてくれたけど、王都じゃ面も割れてるだろうし、直接学園都市に行かなきゃ、か)

アンナは母親譲りの才女であった。絶対に学園都市に行かせてあげてください、紹介状も出します、彼女なら学費免除も夢ではありません、と学校の先生から太鼓判を押される程には。

しかし本人はそんな周囲の熱視線など我関せず、冒険者や剣士、騎士に憧れている普通の少女へと成長した。

特に【業炎の】アマリリス、【疾風の刀聖】ゼンエモンは彼女の中で生ける伝説らしい。

(俺が魔王を倒した勇者だって知ったら、腰を抜かすだろうな)

【勇者】という二つ名はある種の呪いである。軽々に名乗ってはいけないとは、【生きている】原稿用紙を渡した存在の言だ。

(アンナが帰って来る前に、飯でも拵えようかな)

今日の原稿用紙も、ペコリとお辞儀をして去っていく。

(お前はお腹いっぱいか。律儀な紙だな、ホントに)

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