おっさんミーツガール5
寝室は呆気なくも突如闖入したゴブリンキングと重力に破壊された。眠る子どもは床が破壊された衝撃で空中に放り出される。
(なんか、あいつに渡したらいけない気がする!多分…なんか分からないけど…‼)
ゴブリンキングが悠然とその大きな手を少女の下に配置している。ブラムはそれを高速飛行で横から掻っ攫う。落下する速度も加算し、ずしりと重い。
「フン…早サダケナラ 我ニモマサルト…面白イ、受ケテ立トウ」
ゴブリンキングの体から大量の黒い靄が発せられる。体には赤黒い模様が浮き出る。
(受けて立つなよ!まだ施設の子じゃないって断言できないしな。ここはひとまず…)
ブラムは少女を抱えて低空飛行を続けながら屋外に飛び出す。
(逃…‼)
「遅イ‼」
ブラムの鼻先を巨体が掠める。森の木々を揺らしながら、再び地面へとその巨体をめり込ませるほどの落下攻撃。
(…うぅ…でかいよ早いよ怖いよー…)
ゴブリンキングは手にした棘付きの棍棒をブラム目がけて叩き込む。なんとか体勢を変えて少女に当たらないよう、その背に攻撃を受ける。
「ぐっ…かはっ…」
息ができない。フラフラと地に落ちる。
「フン、他愛ノナイ…。所詮亜人。魔王様ノチカラヲ ソノ身ニ宿シタ我ニハ、到底適ウマイテ」
(魔王の…力…ねえ)
腕の中の少女の無事を確認すると、そっと少女を地面に下ろす。この騒ぎで流石に目が覚めたようだ。
「おじさん、だれ?」
「ん?君が寝ていたおうちの管理人だよ」
「ここどこ?ふかふか、ない」
「ふかふか?あー、ベッドは壊されちゃったんだよ」
「きんぐに?」
「そう、キングに」
「オオ!姫、目覚メタカ‼帰ロウ!我ガ家へ」
醜い相貌を歪め、巨体を揺らしながら少女に近づく。
「やだ!こっちのおじちゃんがいい‼」
「ズット一緒二居ルト誓ッタデハナイカ」
「ふかふか、かえせ‼」
少女の体が一瞬膨張したように見えたのも束の間。
キングの周囲におびただしい数の蔦が生え、巨体を締め上げる。
(…植物を操る…魔法??)
「フン。コンナ児戯デ我ガ止マルト思ウタカ」
蔦は弾け飛び、ボロボロと崩れる。
(今だ‼)
キングの動きが止まった一瞬の隙に、地中から特大の氷柱を生やす。その尖端はキングの股間を目指し…
「甘イワ‼」
避けるように飛び退く。再び高高度からの落下態勢に入る。
「ありがとう、君が作ってくれた一秒は絶対に無駄にしない。こっちを見ないように」
少女がこっくり頷いて目に手を当てるのを見届けてから、ありったけの魔力を地面に注ぎ込む。キングの落下予測地点に先程より特大の氷柱がそそり立つ。
「…………‼‼‼‼」
氷柱はゴブリンキングに命中。自重で深々と刺さり、完全に縦に串刺しになる。が、その状態でも泡を吹きながら必死にもがいている。見ているこちらまで尻が引き締まる光景だ。
(ワンパターンというか脳筋というかな…)
芝居がかった仕草で指をパチンと鳴らすと、串刺しにした氷柱から氷の枝が次々と伸びる。表皮に霜が付き、飛び散る血液も散った先から凍りつく。
(ここまですれば流石に動けないだろ)




