おっさんミーツガール2
股間周りに、気取らせないように清浄魔法を入念にかけつつ、ギルドを後にする。
懐が温まってくると、ただの煉瓦と人の塊でしかなかった街も、自然と見え方が変わってくる。
(あそこの店も美味しそうだな…お、こっちは酒場か。お酒って飲んだことないんだよなあ。俺、下戸だったらどうしよ。ふふふ、お金を稼ぐってやっぱ楽しいな。あれ?何で俺お金稼いでたんだっけ…あ゙っ‼)
思い出してしまった。いや、もっと早く思い出すべきだった。
(師匠…‼いや、あれから催促されたか?入門料とギルド会費に丁度ピッタシだったのも、ただの偶然かもしれん。うん、迷惑料だ。薬草代だ。素直にもらえば良いんだ。だが…)
嗅覚は自然とトーマスの臭いを嗅ぎ当て、既に孤児院の場所も目星がついている。歩も先程から目的地に勝手に動き出しているかのよう。
(受けた恩は必ず働いて返せ、が口癖だったもんな…)
頭を掻きながら裏路地を進むと、以前に嗅いだことのある花の匂いがする。
「あらお兄さん。また道案内が必要かしら?」
いつぞやの下着女だ。
「ああ、先日は助かったよ。」
「ねえお兄さん、わたし、ちょーっと言えない種族だから、匂いでなんとなく分かるんだけど、あなた…でしょ」
「‼…それがどうした」
「最近気になる女の子も居るんでしょー?」
「‼…匂いでわかるのか」
「これはオンナの勘」
「勘…」
努めて女の体は見ないようにする。たわわに実った双丘、熟した果実を思わせる瑞々しい唇。
「ここぞという時には殿方がリードしないと、恥ずかしいわよー?練習、付き合ってあげるから」
「け、けけけけ結構です‼」
自分でも存外大きな声が出てしまい驚く。
「…いや、結構。あいにく今日は先約があるのでな」
「あっそ。じゃ、また今度ねー」
女はあっさりと引き下がった。次の客に照準を合わせようとしている。
(しかし、何で自分から亜人種だってバラしたんだ?まさか匂いで吸血鬼だってバレた?やっぱりオンナの勘…なのか?)
花街を抜けると職人区画に入る。職人ギルドと言ったらほぼいつも船を漕いでいる玉ねぎ頭の婦人しか思い浮かばないが、マスターは現役職人のドワーフで、有事以外ではほぼ工房に入り浸っているとか、すぐに呼ばれても良いようにギルド庁舎内に専用の工房があると言うのはもっぱらの噂である。
職人区画では鍛冶や機織りなど騒音を出す工房も多く、大抵の工房は夜の8時以降は稼働をしない取り決めが為されている。酒精の匂いを撒き散らした屈強なドワーフたちの姿も散見され、窓から見える光も疎らだ。
そこを抜けると、トーマスたちの居る孤児院は目の前だ。




