吸血鬼の夜は遅い2
「セーフハウスじゃないじゃん!」
「だから僕セーフハウスじゃないって言いましたよ!」
いつもは見張り一匹しかいないはずのオークが集落の中央の広場に集まっている。
オークたちのフゴフゴと困惑する声に混じって、少年たちの言い争う声が聞こえる。
1人は鮮やかな赤髪の肌が黄色みを帯びた少年。革鎧にショートソードという初心者装備。
もう1人は青髪でローブ姿。眼鏡が顔の一部どころか大半を占めてしまってる少年。こちらは若干上等な装備のようで、ローブが淡く発光している。
大森林は殆ど人が踏み入らず、動物や魔物の天下と言っても過言ではない。ましてや夜中に駆け出し装備の少年が2人。
(遭難者か。保護するか。いや、2人とも強力な加護持ちぽいっし、もしかしたら…いやいやいや)
吸血鬼が樹上で逡巡している間にも少年たちはヒートアップしていく。
「お前ら勝手に俺のことこんなとこに連れてきて、魔王と戦う勇者だなんだ言ってさ、自分勝手すぎんだろ‼腹減ったよ!帰らせろよ‼」
「あなたはもう向こうの世界では死んでるんです!帰すのは無理です!」
「だったら生き返らせろよ!魔法でなんとでもできるんだろ!?」
「世界の法則が異なるんです。僕だってそうしたいけど無理なものは無理…おかあさまああ‼」
「うわあああん!‼」
オークたちはそれぞれに顔を見合わせ、フゴフゴと緊急会議を始めた。
襲って大丈夫?食べるには細すぎて少なそうだね、とでも言っているのか、次第に頭を抱えだすオークたち。
一際体の大きなオークが叫んだ。
「フゴォォォォ‼」
「「うるさい‼」」
青髪の少年は振り向きざまに魔法を放とうとするも不発。赤髪の少年は振り下ろそうとしたショートソードの刃を軽々とつままれてしまい、身動きが取れない。
「フゴ」
「やっぱ無理か…助けて…だれか…」
吸血鬼は一度放とうとしていた氷刃魔法をキャンセルし、氷刃の数はそのままにサイズを拳大まで上げた。
「当たるなよ、少年」
魔力を最大に込め、放った本人でも驚くような、目にも留まらぬ速さで氷刃がオークのリーダーと思しき個体に突き刺さる。
飛び散る血液に思わず喉が鳴る。
「まだまだ」
今度は飛び散った血液を更に魔力を込めて凍らせる。凍結は血液を通して次々と伝播し、やがてオークの体まで到達すると、容赦なくその体を凍らせる。ショートソードも凍り始め、少年が慌てて飛び退く。
氷漬けになったリーダーに混乱したオークたちは叫び声を上げながら各々の家へと駆け戻っていった。
青髪の少年はへたり込んだまま身動きが取れない。




