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その吸血鬼、邂逅6

場内をどよめきが支配する。

殴った男が気を失い、殴られた男が平然と立ち上がり服の埃を叩いている。

吸血鬼は周囲の異様な雰囲気にようやく気づいた。

(…あ、集中しすぎて吸いすぎちゃった。なんか顔痛い。というか、物凄く痛い。口の中切れてるし。まあ、すぐ治るけど)

大男は完全に気を失っており、茹でダコのようだった顔は真っ白になっている。

「お怪我は!?大丈夫ですか‼?」

カウンターから飛び出した受付嬢がブラムに駆け寄る。

「問題ない。それよりこの男の介抱はいいのか?」

「それこそ問題はございません。酔っぱらってここで寝るのは日常茶飯事ですから」

一瞬、ウインクをしたように見えたのは気のせいだろうか。受付嬢の言葉を肯定するかのように大男は放置され、各々が自分の持ち場に戻っている。あれだけの騒ぎがあっても職人ギルドの受付嬢はウトウトしている。

(これがプロ。歴戦の猛者たちか…)

「ところで、ギルドへの入会をご希望ですね。説明書は契約書も兼ねておりますので、書面での説明とさせていただきます。質問がございましたらお声がけくださいね」

書類とペンを渡されると、カウンターの隅の方を指し示す。申込者が隅の方で説明を読んでいる間に受付嬢は他の来訪者の相手ができる。

(合理的だ。実にいい)

説明文も簡潔で、禁則事項やランク上げの手順、必要な金員なども箇条書きや表による一覧表示で非常に見やすい。

(ふむ、森の魔物もきちんと捌いて下処理をすれば、冒険者ギルドより高値で買い取ってくれる、と…。ジビエの本もあったし、やってみるか。しかし、今の手持ちでは…あの娼婦に渡していなければ丁度登録費用と同額だったと…。どこまで見越してたんだ、師匠は…)

「何かお困りですか?」

先程のサーシャと呼ばれていた受付嬢が声をかける。

「いや、恥ずかしながら懐が寒くてな。すぐに稼がねばならんのに、登録費用に届かんのだ」

「えっと…もしよろしければ、その服のボタン、拝借してもよろしいですか?」

何を言われたのか分からないまま、マントの留め金のボタンを千切って渡す。

「やっぱり…。凄い意匠だし相当な年代物だわ。鑑定班、ちょっと手空いてる?」

急にカウンターの後ろが騒がしくなった。確かにこのマント自体は数十年来の相棒ではあるが、孤児院の院長が移転前の餞別にとくれた、ただの古いマントだ。

カウンターの隅の方で待つこと小一時間。

「大変お待たせ致しました。特例措置として、本件買取金額を登録費用から差引と致します。本来、買取は登録前に行えない規則となっておりますが、ギルドマスターから正式に許可が降りております。何卒ご内密に」

「恩に着る。サーシャ殿」

「そんな、殿だなんて…」

一瞬、メガネの下の表情が緩んだように見えた。

「ようこそ、商業ギルドへ。貴方の活躍、期待しておりますわ」

暑さ寒さも彼岸まで、とは言いますが、昨今の気候変動には参ったものです。通勤時間を利用してぼちぼち書いておりました筆者にも、とうとう来てしまいました。

狂うぞ‼自律神経‼

でございます。生まれたての子鹿のような足取りでございます。何卒皆様もご自愛くださいませ。

ブラムさん、ようやくギルドに入れましたね。ブラムさんの周囲には女の子の影がちらつき始めましたが、筆者はハーレム物にする気も無ければ、正ヒロインは今だに匂わせですら登場しておりません。気長にお待ちいただければと思います。

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