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吸血鬼の夜は遅い1

寝床の棺桶の蓋を開けても、見慣れた石造りの暗い天井が待っているだけ。

今日も変わらない日常が始まる。

まず身だしなみを整える。

根城にしている元孤児院の建物には一つだけ鏡がある。が、映るのは後ろの壁だけなので特段見た所で意味もない。何年着たかもよく分からない自分の服を見て、ざっと埃とシワがないかを見るのと、伸びに伸びた髪を手ぐしでなでつける程度だ。

一歩屋外へと踏み出す。鬱蒼と茂っており、恐らく昼間でも陽が差さないだろうが、夜にしか出歩かなければ同じことである。

夜行性の鳥や獣の声がそこかしこから聞こえてくる。森の中は意外にうるさいもので、我ながらよく寝られるもんだとしばし思う。


夜の散歩目的は狩りだ。獲物はいつも決まっている。

特に二足歩行の豚のような見た目のオークは体躯も大きく、血液を拝借するのに申し分ない。

ただ、体躯が大きいということは当然、攻撃を受けるとひとたまりもない。

最初の頃は直接噛みつこうとしてあまりの匂いに悶絶している所を捕縛され、危うく貞操を失いかけた。挨拶代わりに同性で営む生物もいると書物で読んでからは、油断してはいけないと自戒したものであった。


鬱蒼とした木々の枝葉の隙を縫いつつ、大森林の上空へと舞い上がる。

星々が音もなくまたたき、冷たい夜風が頬を撫でる。オークの根城はさほど遠くもなく、鼻歌交じりに飛行している内についてしまう。

切り拓かれた集落には木や草で作られた掘っ立て小屋が数軒あり、小屋に囲まれた広場がある。

彼らは夜行性ではなく、夜は見張りを1体つけている。並の魔物では相手にならず、人間でも冒険者のような戦い慣れしていない者であれば簡単に屠れる自負があるのか、警戒心は薄い。

気配で悟られないように、樹上のなるべく高い位置に陣取る。下手に枝に腰掛けようものなら枝の軋む音で気づかれかねない。念動力を使ってほんの少し浮いている状態を保つ。

いつもであれば、魔法で氷の破片を大量に作って飛ばし、痛みを感じるか感じないかギリギリのすり傷からにじみ出た血液を、頼みの綱の念動力を使って細々と吸い出す、という方式を取っている。

何千、何万回もの試行錯誤の末に編み出したもので、痛みを感じさせてしまった場合は手痛い反撃を食らうことになる。

しかし、この日は様子がおかしかった。

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