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その吸血鬼、邂逅5

ギルド総合庁舎。

入ってすぐ目につくのがだだっ広い空間であり、正面には商業ギルド、左手には冒険者ギルド、右手には職人ギルドの受付カウンターがコの字に配置されている。

ギルド職員の制服はギルドにより異なり、冒険者ギルドは露出度が高く、商人ギルドはお揃いのベレー帽を被っている。職人ギルドは職員が1人、カウンター業務にも関わらずうつらうつらと船を漕いでいる。

冒険者ギルド職員のタイトスカート越しに感じられる尻の質感に目を奪われつつ、商業ギルドへ歩を進める。

「ねえ、サーシャちゃん、一緒に飲みに行こうよ」

「お断りします。職務中です」

「ちっ、地味メガネがイキってんじゃねえぞ。俺が誰か分かってるんだろ?」

鮮やかなオレンジ色の髪の大男がカウンターの前で陣取っている。夜も更けギルドの閉館時間もあるのか、他の職員は別の業務をしながらも遠巻きに様子を見ている。

(輩か…。あの娼婦もそうだけど、本当にあんなの居るんだな。怖いよう。というか見てないで助けろよ。むしろこんな性格最悪な野郎に特大加護を与えるとか、この世の法則どうなってるんだ?いや、逆か…)

努めて平静を装い、咳払いをひとつ。

「失礼。ギルドに加入したいのだが、受付はこちらで良かったかな」

気づかれないように大男の首すじを氷刃魔法で傷つけておく。大男は傷に一切気付かず、ブラムに気炎を上げる。

「おいおっさん。この俺を割り込むとは、何様のつもりだ‼」

「何様?ふむ、強いて言うなら…俺様だな」

「くっそ…‼ふざけやがって…‼」

激高とともに男の首から血がにじみ始める。吸血鬼は血を操作し、気づかれない程度にじわじわと、細い糸状に血を抜く。抜いた血液は今吸うわけにもいかないので、塊にして誰の目からも映らない位置取りでふよふよと浮かせている。

精密作業に一点集中していると、男の拳がブラムの顔面にめり込んだ。勢いのままにブラムは吹き飛び、冒険者ギルドのカウンターに激突した。短い悲鳴や息を呑む音が同時に聞こえる。しかし誰も男を止めようとしない。

(血の塊は…無事か…)

ブラムは今だに精密作業をやめない。

「俺が勇者だと知っての狼藉か‼俺を愚弄することはこの国を敵に回すに等しいんだぞ‼」

周囲はおくびにも出さないが、大男を呆れた眼差しで見ている。

(結構血を抜いてるんだが…)

「おい、何か言え‼…へへ、あの程度で気を失うたあ、とんだモヤシ…あれ?」

男の恵まれた体躯がぐらつき始める。

「な、何をしやがった‼目の前が…」

男は完全に崩折れた。代わりに立ち上がったのはブラムだ。

(これ、いつ飲もうかな。なんか臭いし、ずっと持ってるの嫌だな)

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