その吸血鬼、邂逅4
ギルドは一般的に、人種·領地·国のしがらみから逸脱した、産業の発展を目的とした全世界的な組織である。
冒険者、商業、職人の3本柱で形成され、その街の人口や産業に合わせた規模で構成される。
特にレイザンは隣国との国境と接しており、輸出入も含めた物流の拠点として人、物が集まる一大拠点。商業は勿論のこと、護衛任務も集中するため冒険者ギルドも盛んである。
(とにかく人が集まるでかい建物…と思ってたんだが…全部でかい。人も多い。臭いキツイ。酔いそう)
店から零れる暖色の光、汗臭さと酒臭さを併せ持つ屈強な男たちの奏でる喧騒、体臭を香水で必死に誤魔化した人間も時々混じる。嗅覚が鋭敏すぎる吸血鬼にとっては正しく地獄であった。
(ん?やたらと花の匂いが…うっ)
少し入った路地には半分下着姿の女たちが屯している。
「あら、お兄さん遊んでいかなーい?」
「遊ぶ、とは。トランプの相手をしてくれるのかな?」
「お兄さん冗談が上手ー」
吸血鬼は本気であった。昼日中に行うような遊びを幼少期にできなかった分、孤児院の子どもたちは気を利かせて夜はトランプで一緒に遊んでくれた。おかげでカードを切るスピードだけは誰よりも自信があった。
「つかぬことをお伺いするが、ギルドの建物はどちらかな」
「ギルドって…あっちの門の目の前にあるわよー?」
商売女はブラムが来た方向を指す。
「通り過ぎていたか…恩に着る」
「ちょっとー、それだけー?」
女は物欲しげに手を差し出してくる。
「ああ、すまんな。少ないが、これでよろしいかな?」
チップの相場が分からない。とりあえず小さめの硬貨を渡してみる。
「ちっ、しけてんな」
散れ散れという手振りをしながら女は色街の雑踏に消えていった。
(や…やっぱりオンナこわい。ニンゲン、こわい…)
精一杯表情を取り繕いながら路地を後にする。小袋から徐々に減っていく硬貨に身震いする。もし、これをトーマスに渡すよう指示を出した人物が予想通りだとしたら、この状態で返すことだけは絶対に避けなければならない。
そうこうしている内にギルド総合庁舎の入り口に到着した。ご丁寧に【ギルド】と大きく書かれており、識字ができない者の為にトンカチや武器と小袋の絵が看板に刻まれている。
(これは恥ずかしい。これの為にチップを払ったとか、悔しすぎる)
歯噛みしながら、ギルド総合庁舎の扉を押し開けた。




