その吸血鬼、邂逅2
月は中空をとうに過ぎ、西に傾いていた。冬の夜は長い。東の空が白むまでにはまだまだ時間がかかりそうであった。
ブラムの住むセーフハウスは、交易都市レイザンから王都までの道のりのちょうど中間点にあたり、かつ、大森林の中央に位置していた。
上空から気配察知と目視をした後は、密集した木々の合間を超低空飛行で駆け回る。気配察知に引っかかった場所を虱潰しに探して回る。
目ぼしいところは全て探したが、見つかるのはゴブリンや冬眠に入ろうとする熊型の魔物に、痩せぎすな狼の群れぐらいであった。
(埒が明かないな…。案外施設に帰っていたりして…な)
日が昇る前に戻らなければならない。
一度だけ、孤児院の子どもたちに連れられて昼日中に飛び出した所、瞬時に体中が焼けただれ、爪先から崩壊してしまったことがある。
すぐに屋内に戻ったのと持ち前の回復力で事なきを得たが、あの時の恐怖だけは数十年を経ても忘れられない。
セーフハウスに戻ると我知らずホッと息をつく。目の前には薬草ペーストを身体に塗りたくった全裸の大男が、大きないびきを上げながら大の字になって眠りこけている。
(平和か!職務放棄か!帰ってきて緊張感‼)
夜明けも近い。ブラムは外の捜索を諦め、そそくさと寝床に帰っていった。
結論から言うと、当の脱走癖がある子どもは施設内でかくれんぼをしていたに過ぎなかった。後日トーマスは大きな身体をこれでもかと折り曲げ、小さな包みを手に謝罪に訪れた。
「何について謝ればいいか、分かってて来ているよな?」
「うん。ブラムが探してくれてる間寝ててごめんよう」
「そうだな。だが、あの場合は怪我もしていたんだ。仕方のないことだな?次」
「次?えっと、ちゃんと施設を探さなくてごめんよう」
「そうだな。次」
「次…?」
その後の数日間、狩りのついでではあるが移動範囲を拡大しながら1人で捜索を続けていた。こればかりは頼まれてもいないし完全に自己満足によるものなので、言っても困惑させるだけだろう。
「いや、もういい。次からは見つかったらすぐ連絡を寄越せ」
「あー、うん。分かったあ」
生返事に更に脱力感を覚える。




