所謂巻き込まれた一般人(5)
「青空市場でスコーンを買ってきたです」
一時中断中にノムが買い物に出ていたらしい。
「ちゃんと経費で落としてくださいね。領収証はもらえましたか。ちゃんと読み書きできる人の所で買いましたか」
「忘れたです」
「と、まあこのように、ノムは一芸に秀ですぎた天才で後のことはからっきしなので、どなたかに補助をお願いしたいと前々から考えておりました」
補助というより保護だな、とは口が裂けても言えない。
「からっきし言うなです。ただ、本当に助手が欲しいのです。ちょっとこれ見るです」
そう言うとポケットから緑色の石を取り出す。マスターの顔が青ざめる。
「まさか、ここでアレをやるんじゃないでしょうね」
「ちゃんと出力は調整するから心配するなですよ」
するとノムが持っていた石が粉々に砕けた。いつものことなのか、ノムは平然とその様を見ている。
「これは風属性の魔石です。ノムは土属性の加護と本来持っている魔力が強すぎて、相反する属性の魔石を単体で扱うことができません。それ故の無属性魔法の魔道具専門なのですが、無属性魔道具は起動するのに属性魔道具より多くの魔力が必要になります」
「力調節したから崩壊で済んだです。うっかりすると爆発するです」
属性の加護がついたヒトはその属性の精霊から力を借りやすくなる。故に自分と同属性の魔法、同属性の魔道具の方がより魔力効率が上がり、効果も段違いになる。逆に相反する属性では魔法そのものが使えない、もしくは暴発する危険を伴う。無属性魔法は相反する属性の魔法を使用できないからこそ生まれた技術であり、しかし膨大な魔力を使うため一般には浸透しない技術でもあった。
「だからこそカナデさん、あなたのような無属性の人間を蔑ろにする輩を、ぼくは許せないのです。無属性だからこそ全属性を扱える、そんな可能性を秘めた希少な人間なのです、あなたは」
実験動物の間違いなのでは、という思いを頭から追い払う。
「わかりました。私で良ければ、よろしくお願いします」
元来ハンドメイドの動画を見るのが癒やしになっていたカナデとしては、全く不利益を感じない申し出であった。作れるかどうかは二の次ではあったが、二人の明るい表情を見ているとそんなことはおくびにも出せない。
「では景気づけにスコーンで一杯いたしましょうか」




