所謂巻き込まれた一般人(4)
「ぼくのスペシャルブレンドです。空腹でも差し障りないよう薄めに淹れてますが、ご気分が優れないようでしたらおっしゃってください」
「ありがとうございます」
甘く爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。先程の果実水もそうだが、体調を気遣って薄めの刺激の少ないものを選んくれるのは素直に嬉しい。
「さて、改めまして本題ですが、今回のカナデさんの一件は我々王都職人ギルドにとっても非常に由々しき事態なのです」
異空間ゲートという技術は王国の主導による開発が進んでいたが難航していた。そこに職人ギルドに要請が入り、魔道具に対しての様々な知見や技術を持った職人たちと王国の叡智が結集して作られたのが現在の異空間ゲートである。
ゲートを使用するには魔王襲撃等の国家の一大事に限られており、起動方法も大量の宮廷魔術師を集めて魔力を注入するというもので、おいそれと起動できないようになっている。
現在居る世界の人間では対処できない問題をなぜ異世界の人間に頼るのか。
「本来、異界を渡る際にはギフトが贈られるのです。あなたがたの世界で言うところの【ろぐいんぼーなす】とか【きゃらめいく】と言われる部分ですかね。身体能力が著しく向上したり強めの加護が与えられるのです。当然、言語は自動翻訳されます」
しかしカナデにはなかった。
「それが問題なのです。この国の人間は亜人種を嫌い無属性の人間を加護なしと見なす。その結果、加護がない人間は魔王の手先だと追い出されたわけですよね。あらゆるインシデントを鑑みる必要があるのにそれらの問題に目を瞑ったわけです。これを由々しき事態と言わずになんと言えばよいのでしょうか」
穏やかな口調を崩さない糸目のエルフが、一瞬だけうっすらと目を開いた。自分のために怒ってくれる人がこの世界にも居る。胸の中に温かいものが広がる。
「そこで、ギルドとしては我々が手掛けた装置の事故による被害者としてカナデさんを保護する方針となりました。我々は国によらない組織です。あなたがギルドの構成員である限りは国は手出しできなくなります。せめてあなたがこの世界で自立して生きられるよう、できるかぎり支援をさせてください」
胸に熱いものが込み上げ、枯れ果てた涙が再び溢れてしまう。
「ありがとうございます。なんとお礼を申し上げればよいのか」
「困った時はお互い様です。先程も申し上げた通り、自立していただくことを目標としておりますので、ここからは私達からあなたへの依頼の話になります。一息ついたら続けましょう」




