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所謂巻き込まれた一般人(3)

眩い光が消えたと思うと、手にフサフサとした感覚が伝わる。落ち着いた色合いの毛足の長い絨毯であることがわかる。

「おや、ノム。いきなりノックもせずに直接転移するのはダメと、あれほど言ったではないですか」

柔らかでおっとりとした声。非難が非難になっていないとはよく言ったものだ。こういう人は本当に怒らせてはいけないタイプだなと思いながら、目を絨毯から上げる。

眼前の木製のデスクしか目に入らなかった。

「申し訳ないです。座標をちょっと間違えたです」

「まあ、座標を間違えたのなら、仕方がないですね。僕から受付には言っておきましょう。次は受付前に座標設定いただくことをお勧めしますよ」

「善処するです」

これまた反省になっていない反省の弁だなと思いながら、やっとの思いで立ち上がる。

目の前にはじょうろを手にした金髪の男が立っている。ゆったりしたローブ姿で、耳はノムのように尖っている。

「あなたが今回の勇者召喚で来られた異世界の方ですか。私はこの王都の職人ギルドマスター、グリムと申します。以後、お見知りおきを」

ファンタジー作品によく出てくる、美形のエルフがこちらに微笑みかけてくる。それだけで突然の追放劇にささくれ立った心の棘を溶かしていった。

「…仰げば尊死…」

「はい?」

「いえ、なんでもないです。ところで、ノムさんもそうですが、言葉がわかりますね」

「ああ、これをつけてますから」

そういうと胸につけた大ぶりのブローチを指した。

「試作品ですけど、翻訳魔法を付与するタリスマンです。転移者の皆さんはパッシブスキルとして翻訳を持っているとは聞いてますが、カナデさんにはないと報告に上がっておりましたので、急いで作らせました」

「わたしが作りましたです」

「こう見えてノムは無属性魔法や生活魔法を付与した魔法具の凄腕職人でしてね」

「讃えよです」

「ノム、調子に乗らないでください」

美形とちびっこが耳をピコピコさせながら繰り広げる漫談に思わず顔がほころぶ。

「それで、ここからが本題なのですが、立ち話もなんですからお茶でもいかがですか」

そう言うとカナデの後ろにある応接セットを指し示し、座るよう促す。座標を間違えたとは言っていたが、もっと間違っていたらどうなっていたのだろうか。石の中に居るなどとなっていれば本当に一巻の終わりだったのだなと、ひやりとしながらソファに腰を落ち着ける。

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