死ぬ前に手を差し伸べて。
朝…私は実行しようと試みた
理由は特にない…ただ日頃のストレスにより…実行したくなった
朝起きて…風呂に入り身嗜みを整え…鍵とスマホだけ持って歩き続け…川の側に行った
川の側に鳩が沢山居たが私はそんな事を気にせずにただ川に飛び込んだ
どこまで流れ着くのか…どこまで溺れていくのか気になった
しかし案の定…人に見つかってしまう
やはり見つかったか…それが心の声だった
だがその人は私を責めることもない
ただ家に連れて帰り…暖かい風呂と温かい食卓を用意してくれた
疲れたんだろう…?とでも言うかのように…ただ静かににっこり微笑んだ
その人に興味を持った私は…取り敢えず甘えて風呂とご飯を頂いた
お金も用意してくれた…そのお金でここで自由に暮らして良いと私に伝えるお兄さん
御兄さんの名前を聞こうとすると…御兄さんは聞かないでと言った
その理由は何となくわかった
この人…服に血だらけだから人を殺めたんじゃないかなってすぐに気付いた
お互いに何も言わない約束で…穏やかにその日は眠りに落ちた
手を差し伸べて…それだけの事だった…可愛らしいお姉さん
お姉さんの名前も聞かない自分…お互いに何も知らずに…身分証だけお互いに見せただけ
名前は忘れた…一度だけじゃ多分覚えない
年齢だけ覚えた
意外と年上でびっくりしたのが本音
見た目は20前後に見えるのに年齢は40前後らしい
容姿が若くてびっくり…きっと相当身綺麗にいつも整えていたんだと思う
この人が何故川に飛び込んだのかは分からないけれど…お姉さん助ける為なら仕方ないし…理由も聞かないし…聞いたとしても多分驚かない
理由は何となく察してるから。
手を差し伸べられた…ただそれだけの事実…そして手を取った私
御兄さんは…年齢いくつか覚えてない…私の年齢を見て綺麗だと言ってたけれど…私には分からなかった
手の皮膚に弾力があるとか…首の皺が少ないとか…色々言ってたけど…そんな事はいい
今だけはそっと泣かせて欲しかった
縋り付いた…死にたかった私を救ったんだから…今だけ泣かせてよ…そんな事だけ私は言いたかった
理由も知ってるのも分かってた…最初に微笑んだのを見て分かったから…何も言わなくていいってお互いに思った
そっと手を繋いだ…手を繋いで外を一緒に歩いてみた
私が買い物に行った…御兄さんの代わりに………。
御兄さんの欲しいものはシチューの元…人参…ほうれん草…じゃがいも…グリーンピース…その他スープの素材を買ってきて欲しいとメモに書かれてる
こんな無駄遣いしていいかは分からないけど…紅茶の茶葉も買ってく…御兄さんの家にティーカップとガラスの綺麗なポットがあったから…そこに茶漉しと紅茶の茶葉を入れれば…美味しい紅茶が飲める
こっそりと買っていく…砂糖と牛乳もね…
帰宅最中に美味しいお魚があったので…鮭のムニエルでも作ろうと思った
私は適度に料理はできる
御兄さんの家に帰り…食材を渡すと………
?美味しいものばかりある
と驚くものだから…今から一緒に作りましょ!っと言うと
お…おん…料理しましょうか…と戸惑ってるものだから…一緒にちゃちゃっと作り上げて…食卓を囲んだの
食卓に並ぶ食材…食事を見た自分は…ただぼんやりと微笑むことしか出来なかった
久々に家族と食事する感覚になったから…幸せな感覚を味わった
紅茶も用意してくれる優しいお姉さん…
紅茶好きなのバレたのかなってぐらい美味しい紅茶を用意してくれた
真っ赤に染まる紅茶…甘い香りと共にチョコレート食べてみたりする今日の夕飯…
幸せだと感じた…家族ってこんな感じだったかなって浸った
家族いた事ないんだけどね…
思い老けってる御兄さんを呼び戻し…現実見なさーいと頭をわしゃわしゃした
What is happiness?
そんな事を…聞いてみた…
英語分からないけどねって後付けで伝えた
I don't know what happiness is, but I think what's lying there makes me happy.
そんな事を…御兄さんは伝えてくれた
結論…いい人としか思えないって思った
英語で聞いてくるお姉さんに回答はしたけど…これが正しいのか分からないって自分で問いかけた
それにいい人だなんて思わないでくれよって息を吐くように告げたけど…
いい人ってなんだろうなーって自分でまた問いかけてるんだよな
実行を止めた自分も…手を差し伸べただけの自分…手を染めた自分…
何もいいことしてないのに…お姉さんはいい人だって言ったんだ
何が正解だったんだろうって問いかける日だった
手を差し伸べて。
おやすみなさい…