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第6話 冒険者

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 アトスとオトは、異変が起きているという迷宮ダンジョンに向かって歩く。オトが迷宮の場所を知っているので迷う心配はない。


「魔物だ」


 アトスは「常時探索魔法」を発動させている。半径100m以内に魔物が居ると、それを探知し、さらに鑑定まで行う。


「もう少し先に、オークとスケルトンの群れがいる」

「ボクにやらせて」

「大丈夫なのか?」

「うん。魔力もたっぷりあるから余裕だよ♪」


 そう言うと、オトは走り出した。

 (そんなに急がなくても大丈夫だぞ)

 アトスはそう思いつつ、やれやれと言った感じでオトの後を追いかける。


「もう終わったよ~」

「マジか・・・」


 さほど遅れもせずに追いついたはずだったが、魔物の群れがすべて討伐されているのを見てアトスは驚いた。

 (さすがは鳳凰ってことか。見た目の幼さに騙されてはいけないな)


 それよりも、それほどの強さがあるのに魔物にやられそうになっていたことを不思議に思う。もちろん、魔力切れを起こしたことは聞いた。むしろ、これだけの群れを一瞬で倒せるにも関わらず、魔力切れまで追いつめられる。そのような状況が起こるのか? と。


 (オトの能力を確認しておくか)


 アトスは、オトを鑑定した。


 種 族: 鳳凰

 成長度: 雛

 生命力: 300 / 250(+50)

 魔 力: 3520 / 3000(+600)

 スキル: 鳳凰の雛

 加 護: アトスの加護


「なぁ、オト。あのさ、オトのスキル『鳳凰の雛』ってどんなスキルなんだ?」

「なはは。スキルはね、色んな効果があるんだよ。火の魔法の威力が上がるのと、火や熱から受けるダメージを弱くしてくれる。成長したら、スキルの効果も増えるんだ」

「なるほど。鳳凰オトは火が得意なんだな」

「うん。得意♪」


「それと、『アトスの加護』ってなんだ?」

「ボク、アトスの従者になったでしょ? アトスのおかげでボクのステータスが上がっているんだ」

「そうなのか。俺は特に何もしていないんだが・・・」

「アトスはね、特別なんだよ」

「特別・・・?」

「ボクを助けてくれたでしょ」

 (あぁ、そういうことか。オトにとって、特別な存在と思ってくれてるんだな)


 ──そう言えば、鑑定したときに膂力りょりょくが見えないな。ま、見えたところでよく分からないから要らないと言えば要らないが。


「オトは、その、色んな事を知ってるんだな」

「ん-とね、鳳凰じぶんのことは、知っているんじゃなくて、分かるの」

「なるほど」

 (・・・って、よく分からんがそういう事なんだな)


 ──


「ん?」

 探索魔法が多数の生物を探知した。その多くは魔物だが、一部の鑑定結果をみてアトスは驚いた。


「人がいる!」

 どうやら人間達は魔物と戦っているようだ。それに、一部の人間は弱っているようだ。


「オト、急ぐぞ!」

「は~い」

 アトスは、自身とオトに身体強化と持続回復をかけ、走り出した。


 ──


「まだ動ける奴は前に出て戦え!」

「動けない奴を守るんだ!」


 騎士団と思しき集団が魔物たちと必死に戦っている。中には、冒険者と思しき者たちもいる。後方には、傷ついて動けなくなった者達、おそらく魔力切れで座り込んでいる者達がいる。戦っている者より、戦えなくなった者の方が多い。

 (かなり劣勢のようだな)


「加勢する」

 アトスはリーダーと思しき男に駆け寄り、声をかけた。

「誰かは知らんが、助かる!」

 男が応える。

「ボクもいるよ~」

 オトもやる気満々だ。


 アトスは、その場にいる魔物全体を鑑定した。

 種族: ゴブリン × 50

 弱点: なし


 種族: オーク ×30

 弱点: 火


 種族: スケルトン × 30

 弱点: 火、光


 種族: ウィル・オ・ウィスプ × 50

 弱点: 水、光


 (多いな。うかうかしてると、傷ついている人たちが危ない)


「オト、一気に行くぞ。まず俺が水魔法でウィル・オ・ウィスプを倒す。オトは残った魔物に追撃を頼む」

「りょーかいっ!」


 アトスは、刻印した魔物だけに影響を与える巨大な竜巻を発生させた。全ての魔物が渦に巻き込まれていく。そして、竜巻が消えると同時にその上から「滝」のように水を落とす。


「アトス、やり過ぎだよ~。ちょっとしか残ってないじゃんかー」


 竜巻~滝の連続魔法コンボで、スケルトン数体を残し、他の魔物は全て倒してしまった。生き残ったスケルトンも瀕死のようだ。


「す、すまん。残りはたの・・・」

 アトスが言うが早いか、オトは強烈な火魔法を放つ。青白い炎の柱が立ち上り、あっという間に魔物達は消滅した。

「はい、終わり~」

「お前も十分やり過ぎだよ・・・」

「えへへ~」


 そんな二人を見て、そこに居た者すべてがポカーンとしている。

 しばしの静寂ののち、驚きの声があちこちから聞こえてくる。


「な、なんだ今の!?」

「何が起きたんだ」

「小さい女の子まで・・・」


 ザワつく者達に目もくれず、アトスは傷ついた者たちのもとへと駆け寄り、「範囲回復」魔法を発動する。

「傷が・・・治った!」

「力が湧いてきた」

「これでまた戦える!」


 傷ついていた者達は、回復するなり前線に復帰しようと動き出した。が、そこで彼らは信じられない光景を目にする。

 先ほどまであれだけ劣勢になっていたはずが、魔物の姿が全く見えない。それどころか、一緒に戦っていた者達が呆然と立ち尽くしているのだ。

「お、おい。どうなってんだ?」


 その声を聞き、リーダーと思しき男が気を取り直して話しかけてくる。

「まずは礼を言う。君達のおかげで助かった」

「いや、無事でよかった」

「俺は【森の守護団】団長、リチャードだ。よろしくな」

 歳は40前後、面長でやや細い目、上品な髭を携えたその男は、笑顔を浮かべて挨拶をした。


「俺はアトス。よろしく」

「ボクは、オトだよ。よろしくね」

「このお礼は後ほど、街に戻ってから必ず」

「お礼? じゃあ、魔物から出た石をもらっても良いかな」

「石? ・・・」


 (ん? あの石は周りに見えないのか? )


 アトスは魔物達がいた場所へ行き、魔法石を拾う。

「これなんだが」

「・・・この石ころが欲しいのか?」

 (石ころ、か。確かに見た目はただの石と同じなんだよな)

「おい、これを鑑定してくれ」

 リチャードは、隣にいる魔法使いのような女性に石を渡す。


「ただの石、ね」

 女の鑑定結果は"ただの石"のようだ。

「ふむ。この石ころがなぜ欲しいのかは分からんが、好きにすればいい。もとより、あの魔物の群れは君達が倒したのだから、素材もすべて君達のものだ」


 (やった! )

 アトスは内心、すごく喜んだ。それと同時に、この魔法石は他の人にとっては"ただの石"というのが少し引っかかる。

 (ま、いいか。何も気にせずにもらえるってことだな。むしろ嬉しいぜ)


「アトス。まだ戦えるか?」

「あぁ」

「先ほどの魔物はすべて迷宮から出てきたものだ。このまま迷宮の調査に向かいたいのだが、一緒に来てもらえないか」

「あぁ、いいぜ」

「恩に着る」

「気にするな」


 リチャードは森の守護団から精鋭を選抜した。

「右からエリン、カシウス、アーサー。我が団の精鋭だ」

「魔法使いのエリンよ。よろしくね」

 先ほど魔法石を鑑定した女性だ。魔法使いが鑑定しても、魔法石がただの石ころに見えるらしい。

「騎士のカシウスだ。よろしく」

「同じく騎士のアーサーっす。よろしくっす!」


 そこに、前線で奮闘していた冒険者パーティが加わる。

「俺はクレイド。冒険者パーティ『くれない』のリーダーだ。よろしくな!」

「私はレオナ。剣士よ。よろしくね」

「私はナタリー。魔法使い。よろしく」

「俺はイリス。支援役です。よろしく」

 いかにも、という格好をした四人組パーティ「紅」の面々が挨拶をする。


「俺はアトス。プロ・・・」

 (アトス、アトス)

 (・・・オト、だよな? )

 (そうだよ。あのね、アトスの職業・・・ぷろぐらま? と、ボクが鳳凰だってことは言わない方がいいと思うな)

 (そっか。確かにプログラマーって言っても分からないだろうし、鳳凰なんて言ったら信じてもらえないだろうな。じゃあ、二人とも魔法使いってことにしよう)

 (うん)


「お、おい、どうした?」

 自己紹介の途中で突然黙り込んだアトスに、クレイドが訝しげに問いかける。

「あぁ、すまん。俺はアトス、こっちはオト。二人とも魔法使いだ。よろしく」

「よろしくね~」


「それにしても、二人ともすごい魔法だったな。もしかして、Sランクか?」

「でしょ♪」

 クレイドに褒められてよろこぶオト。


「Sランク・・・ってなんだ?」

 アトスは褒められたのをスルーして、質問する。


「冒険者ギルドのランクに決まってるだろ。ちなみに俺たちはBランクだ」

「結成半年でBランクまで上り詰めた、新進気鋭の冒険者パーティ。それが紅なのよ」

 ナタリーが誇らしげに言う。が、アトスには何のことだか分からない。


「冒険者、ギルド?」

「・・・もしかして、ギルドを知らないのか?」

「あぁ、知らない」


 もしかして、知らない自分がおかしいんだろうか。アトスは不安になり、オトに尋ねる。

 (オト、知ってるか? )

 (うんとね、知らない)

 知らないのが自分だけはなかったことに、ホッとする。


「それであの魔法か。よほどいい師匠に教わったんだな」

「師匠はいないぞ」

「「「「えぇっ!!」」」」

 紅のメンバーどころか、森の守護団のメンバーも声を上げる。

 (普通は師匠が居るものなのか? )


「独学かよ・・・。ちなみに、魔法はいつから使えたんだ?」

「詳しくは覚えていないが、大体二ヶ月ぐらい前かな」

「「「「にっ、二ヶ月!?」」」」

 再び、その場にいる全員が声を上げる。


「参ったな・・・。天才かよ」

 クレイドは呆れたようにつぶやく。


「オホン、そろそろ良いかな。迷宮に向かおうと思うのだが」

 リチャードと森の守護団を待たせたままだった。

「聞きたいことは山ほどあるだろうが、今は時間がない。その話は、おいおい、な」


 こうして、アトスとオトは森の守護団、紅とともに迷宮に向かうのだった。


第7話は明日アップ予定。

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