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第53話 最終決戦


 四凶はジパングの中心部を囲むように位置していた。

 その中心部に何かがあるのが取って見える。

 恐らくアヌグラ・マニュー団の仕業だろう。

 四聖獣はそれぞれの宿敵の元へ、あっという間に行ってしまった。

 持続強化×30がかかっているから負けることは無いだろう。


 俺とアイは、警戒しながら中心部に向かう。

 何が出てくるのか分からない。

 バハムート級の魔物が出てくると少し厄介だ。

 それも、一体だけとは限らない。

 世界各地にあれだけの魔物を召喚してみせたアヌグラ・マニュー団の力を侮ることは出来ない。

 ん?

 中心部にアヌグラ・マニュー団が集まっている。

 何かの儀式を行っているようだ。


聖炎砲セイントフレア!」

帯雷突進サンダーソニック!」

巨大彗星メガ・コメット!」

極寒幻想吹雪ダイヤモンドダスト!」

 どうやら四聖獣vs四凶の戦いに決着の時が訪れたようだ。

 あっさり過ぎる気がしたが、四凶と言えど持続強化×30がかかっている四聖獣には太刀打ちできなかったのだろう。

 とにかく、これで中心部に集中できる。

 アヌグラ・マニュー団が行っている儀式を中断だせるべきか。

 それとも、儀式が完了するのを待つ方が良いのか。

 儀式が完了すると何が起こるのか。

 途中で止めた場合、その残滓による影響はないのか。

 こればっかりは経験も知識もないため分からない。


「アトス、窮奇きゅうきが消えたよ」

 消えた? どういうことだ。

「倒したんじゃないのか?」

「ううん。止めを刺そうと思ったら、その前にパッと消えちゃった」

檮杌とうこつも突然消えてしまった」

 なんだと?

渾沌こんとんも消えてしもうたわい」

饕餮とうてつも消えたわ」

 四凶が全て消えた・・・・・・どういうことだ?

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 まさか!!

 今、目の前で行われている儀式のにえなのか!?

 四凶という恐ろしい魔物を召喚した時点で、アヌグラ・マニュー団の企みはそれだったのかも知れないと思っていたが、そうでは無かったのか。

 確かに、四凶のランクはS8で、バハムートよりも劣っていた。

 その時点で四凶が本命じゃないという考えに至っておくべきだった。

 ということは、この儀式を止めなければ危険だ!


「フハハハハハ! 遂にこの時が来た。

 我等が数十年かけて力を溜め、準備してきたこの儀式がたった今、成功した!」

「「「「うぉーーーっ!!」」」」

 アヌグラ・マニュー団のトップと思われる男が高らかに儀式の終了を宣言すると同時に、アヌグラ・マニュー団全員が歓声を上げる。

 その直後、ジパングの中心部に黒い光がほとばしる!

「出でよ! 我等の忠実な下僕、伝説の魔獣、ウロボロスよ!」

 その瞬間、バハムートよりも遥かに巨大な魔物が出現する。

 二匹のドラゴン・・・・・・と言ってもこちらはヘビのように細長い身体を持つドラゴンが、お互いの尾を飲み込むような形で二つの連なった円を描いている。

 それはまるで、∞(ムゲン)を示す記号のようだ。


 ウロボロスの出現と同時に、凄まじい衝撃波がジパング全土を襲う。

 アイが咄嗟に俺と四聖獣に強化多重結界を張ってくれたおかげで俺達は何とかなったが、アヌグラ・マニュー団は全員消え去ってしまった。

 自分たちで制御できると思っていたのは間違いだったようだが、それでも悲願を達成した喜びの最中さなか、彼らは何が起こったかも分からないまま消え去ったので、幸せな気持ちで最後の時を迎えただろう。


 ただ、現実問題として今俺達の目の前には、制御不可となったウロボロスが居る。

 この圧倒的な存在感、先ほどの衝撃波、それだけでもバハムートよりも遥かにヤバい魔物だと分かる。

 アヌグラ・マニュー団に言わせると『魔獣』と言うことだが俺には違いが分からない。

『お兄ちゃん、鑑定してみたけど・・・・・・ヤバいよ』


  種 族: ウロボロス

  ランク: S10

  特 性: 無限の魔力


 ランクS10か。やはりバハムートよりも上だな。

 それから・・・・・・なんだって?

 無限の魔力?

 どれだけ魔力を使っても魔力が尽きることが無い、と言うことだよな。

 ヤバいにも程があるだろうが!!

 ウロボロスに魔力切れが無いという事は、時間をかければかける程こっちが不利になっていくって事だ。

「皆、奴の魔力は無限らしい。時間をかける程に俺達が不利になる。

 短期決戦を挑むぞ!」

 俺の檄に応えるように、四聖獣はそれぞれの最大攻撃を放つ。

聖炎砲セイントフレア!」

帯雷突進サンダーソニック!」

巨大彗星メガ・コメット!」

極寒幻想吹雪ダイヤモンドダスト!」

 ダメだ。ウロボロスに届いていない。

 ウロボロスから溢れ出すエネルギーの壁を打ち破ることが出来ていない。

 【超重力崩壊爆発スーパーノヴァ】!

 重力の倍率がどんどん上がる。

 500倍・・・・・・1000倍・・・・・・1万倍・・・・・・2万倍・・・・・・5万倍!

 ウロボロスは少し怪訝な表情に変わった物の、特に押しつぶされることも無く、そのため爆発も起こらなかった。

 とんでもない膂力りょりょく・・・・・・という訳ではないな。

 重力魔法に対抗したのだろう。

 俺の魔力の3割強を費やした最強の魔法もウロボロスには通じなかった。

 どうしたら倒せる?

 ウロボロスは特に攻撃をする訳でもなく、ゆらゆらと空を漂っている。

 それだけで、その身に纏うエネルギーの揺らぎが発生し、凄まじい衝撃を放つ。

 このままではジリ貧だ。

 結界を張り続けるだけで魔力が尽きてしまいそうだ。

 ・・・・・・!!

 これを忘れていた。

 マサムネに作ってもらった新魔法具、魔法の腕輪ブレスレットを。

 急いで取り出し、左手首に装着する。

 四聖獣達に再び持続強化×30をかけ直す。

 魔法の腕輪ブレスレットのおかげで90倍になっているはずだ。

「皆、もう一度攻撃してくれ」


聖炎砲セイントフレア!」

帯雷突進サンダーソニック!」

巨大彗星メガ・コメット!」

極寒幻想吹雪ダイヤモンドダスト!」

 皆が攻撃を放つと同時に、俺も再び【超重力崩壊爆発スーパーノヴァ】を発動する。

 皆の攻撃がエネルギーの壁を打ち破り、ウロボロスに直撃する。

 ウロボロスは悲鳴のような声を上げ、その身を捩る。

 さらに、ウロボロスを中心に重力の倍率がどんどん上がる。

 1000倍・・・・・・1万倍・・・・・・5万倍・・・・・・10万倍・・・・・・15万倍!

 ウロボロスは重力に激しく抵抗しているが、それでもその体は押しつぶされていく。

 ・・・・・・

 ・・・

 激しい咆哮と共にウロボロスは重力を撥ね退けてしまった。

 四つの瞳には怒りがにじみ出ている。

 ウロボロスの怒涛の攻撃が始まった。

 竜巻、炎、氷、落雷、隕石が次々に俺達を襲う。

 アイが最速で強化結界を張り直し続けているが、ウロボロスの攻撃速度が速すぎて間に合わない。

 まずい! このままでは結界が破れる!

 さらに、ウロボロスが短く咆哮すると同時に、これまで以上の衝撃波が発生する。

 ・・・・・・

 ・・・

 どうやら辛うじて生き残ったようだ。

「皆、大丈夫か!?」

『お兄ちゃん、お兄ちゃんが無事ならアイも無事だよ』

 良かった。アイは無事だ。

 四聖獣達はどこだ?

 反応が無いが・・・・・・遠くに吹っ飛ばされてしまったのか?

「ア・・・トス」

 力無い声が聞こえる。

 どこだ! オト、ショウ、ジョグ、ユキ!

 ・・・・・・

 ・・・

 居た!

 だが、皆倒れている。

 俺は急いで駆け寄る。

「ア・・・トス・・・・・・。楽・・・し・・・かっ・・・た・・・」

「お前と・・・出会・・・えて・・・良か・・・・・・った。」

「後は・・・まか・・・せ・・・た・・・・・・ぞ」

「アナ・・・タと・・・出会え・・・て・・・幸せ・・・だっ・・・・・たわ」

「オト! ショウ! ジョグ! ユキ!」

 回復、回復しろ。

 なぜだ。なぜ回復できないんだ・・・・・・。

 頼む、回復してくれ。

 皆、頼む!! 戻ってこい!!

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 オト・・・・・・、ショウ・・・・・・、ジョグ・・・・・・、ユキ・・・・・・。

 絶対に仇は取るからな!!

 ウロボロス、お前は必ず俺が倒す!!

「喰らえっ!!」

 【超重力崩壊爆発スーパーノヴァ】は魔力の消費量を考慮してある。

 でも今は、俺の魔力が尽きるまで止めない!

 1000倍・・・・・・1万倍・・・・・・10万倍・・・・・・20万倍・・・・・・30万倍・・・・・・

 ウロボロスの顔が苦痛にゆがむ。ギリギリのところで重力に抗っている。

 50万倍・・・・・・100万倍!!

 極超重力球はウロボロスの身体を飲み込み、とてつもない光を放つ。

 一瞬遅れて凄まじい轟音が鳴り響く!

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

『お兄ちゃん、大丈夫?』

「・・・・・・アイ。俺は気を失っていたのか」

『うん、少しだけね』

「ウロボロスは?」

『やっつけたよ。お兄ちゃんの魔法でね』

「そうか、良かった」

『無茶し過ぎだよ? 私が制御してなかったら結界を張る魔力も無くなるところだったんだからね』

「アイが結界を張ってくれたのか」

『うん。ウロボロスが重力球に飲み込まれたからそこで止めたんだ。

 そのおかげで多重強化結界を張る魔力が残ったの。

 でも、あの魔法が強すぎて守り切れなかった。

 ごめんね』

「いや、アイが居なければ俺も消え去っていただろう。

 助かったよ、ありがとう」


「アトス、気が付いたんだね」

 この声は・・・・・・

「オト!」

「俺達も居るぞ」

「ショウ、ジョグ、ユキ!

 皆無事だったのか」

「いやぁ、無事では無かったぞ。

 どうやら進化したお主の力で復活できた様じゃ」

「進化? 俺が?」

「アナタ、とうとう神様になったみたいよ?」

「聖獣神、アトス様! とお呼びしたら良いか?」

 ユキとショウがからかうように言ってくるが、何のことだ?

『お兄ちゃん、皆がやられた時に凄く怒ってたでしょ?

 あの時、なんかね、覚醒したみたいだよ』

「覚醒・・・・・・俺がか?」

『うん。だから、あの魔法も今までより遥かに強かったんだと思うよ』

 確かに、あそこまで重力を強く出来るとも思っていなかったな。

 あれはもはや【超重力崩壊爆発スーパーノヴァ】では無く、【極超重力崩壊爆発ハイパーノヴァ】だな。

『お兄ちゃんはもう聖人じゃなくて、聖獣神なんだよ♪』

 そんな嬉しそうに言われてもな。

「「「「アトス神様」」」」

「や、やめてくれ!」


「ん? あれはなんだ?」

 ウロボロスが居た辺りに、眩き光を放つ宝石のような物が落ちている。

 鑑定してみようか。


  魔宝玉

   魔力: 0 / ムゲン


 魔法はセット出来ないのか。

 それから、魔力・・・・・・無限!?

 そう言えば、ウロボロスの魔力も無限だった。

 この魔宝玉、もしかしたら魔力を貯蔵して取り出すことが出来るのかも知れないな。


 兎にも角にも、俺達はアヌグラ・マニュー団の企みを阻止することに成功した。

 これは間違いないだろう。

 アヌグラ・マニュー団のトップと思われる者もウロボロス出現と共に消え去った。

 もし世界のどこかに残党が居たとしても、もはや組織として立ち直ることは出来ないだろう。


 さて、と。

 とりあえず事の顛末を報告しないとな。


 勝利の余韻に浸ることも無く、俺達はタンバサの王宮に戻ることにした。


次話は明日アップ予定。


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