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第51話 タンバサ第1騎士団


 ホターラカの東門を出ると、シャルロ達が大慌てで帰って来た。

「アトス、来てくれていたのか」

「あぁ。フォーレ周辺に出現したドラゴンは森の守護団と紅が倒した。

 その際、アヌグラ・マニュー団達が話しているのを聞くと、ドラゴンで戦力をおびき寄せて別の魔物に街を襲わせる陽動作戦だということが分かってな。

 急いでフォーレの街に戻ると案の定、ミノタウロスが街を襲撃していた」

「フォーレは無事なのか?」

「あぁ。予め結界を張っていたおかげでフォーレに被害はない」

「そうか、良かった」

「フォーレは無事なんだが・・・・・・俺がホターラカに来た時にはすでに被害が出てしまっていた。

 第2騎士団の奮闘で襲撃してきた魔物は追い払われていたが、城壁と建物が一部破壊されてしまっている。

 ・・・・・・間に合わなくて済まない」

「いや、アトスの責任ではない。

 この国を守るのは我ら王家と騎士団の使命だ。

 だからアトスが責任を感じる必要はない。

 むしろ、俺達はアトスに感謝しているんだ。

 アトス達が報せてくれたおかげで俺達はこの危機に備えることが出来た。

 さらには、俺達の修行を手伝ってくれたし、魔法具も貸し出してくれた。

 それらのおかげで、俺達はドラゴンを倒してこの街に戻ってくることが出来た。

 アトス、ありがとう」

「そうか・・・・・・ありがとう」

 シャルロの言葉に、俺は胸が熱くなった。

 俺は、この世界に来てシャルロ達に会えて嬉しかったし、彼らの対応で心がグッと軽くなった。

 だからこそ、その恩に応えたかった。

 だが、確かにシャルロの言う通りだ。

 俺は、俺達は、やれるだけのことはやった。

 全てを守り切ることは出来なかったが、それでも、最小限の被害に抑えることが出来たのは間違いない。

 やれるだけのことをやったんだから、悔やむ必要はない。

 まだまだやらなければならない事もある。

 下を向いている時間はない。

「第2騎士団が住民を王宮に避難させている。

 まずはそこに向かってくれ。

 俺は南門の方を確認してくる」

「あぁ、頼む」

「アトス、お気をつけて」

 サラはただその一言を俺に伝えるためだけに、隊列から抜けて来てくれたようだ。

「サラ、ありがとう。また後でな」

 俺は踵を返し、南門へと急ぐ。


 ──


 南門から少し離れた森の中から、戦闘音が聞こえてきた。

 どうやら第1騎士団は今も交戦中のようだ。

 俺は音の聞こえてくる方へと急ぐ。


「隊長、少し休んでいてください!」

「お前達だけでは危険だ!」

「俺達だって戦えるってとこを見せますよ。

 とどめは任せるので、ちゃんと休んでてくださいね」

 第1騎士団、総勢20名が竜人ドラゴニュートと戦っている。

 竜人ドラゴニュートがその爪を振るうだけで、息吹ブレスを吐くだけで、その都度数人が吹き飛ばされる。

 だが、その隙に他の騎士がドラゴンに攻撃を仕掛ける。

 大きなダメージは与えられていないようだが、それでも竜人ドラゴニュートが攻撃をする度に、その隙を狙って数人が攻撃を仕掛ける。

 それを繰り返すことによって、確実に竜人ドラゴニュートを追い詰めていっている。

 とは言え、竜人ドラゴニュートの攻撃の度に数人が吹き飛ばされてしまうのだ。

 騎士達のダメージの蓄積も非常に大きい。

 どちらが先に倒れるかの我慢比べの様相を呈している。

 だが、俺の見立てでは先に限界を迎えるのは騎士団だ。

 騎士団のダメージは大きく、支援魔法で回復するよりも竜人ドラゴニュートの攻撃で受けるダメージの方が遥かに大きい。

 だからと言って、攻撃の手を緩めて防御に専念するわけにも行かない。

 再生能力を有している竜人ドラゴニュートに時間を与えてはいけないのだ。


 どうする?

 手を出すか。それとも、もう少し様子を見るか。

 ・・・・・・

 ・・・

「待たせたな、お前達」

「隊長、まだ休んでてください!」

「これで十分だ。とどめは任せろ!

 お前達はそのまま攻撃を続けてくれ」

「了解っ!」

 どうやらジャンヌが戦いに復帰したようだ。

 もうしばらく様子を見ることにしよう。


 それから数度目の騎士団の攻撃に、竜人ドラゴニュートは明らかに嫌がる素振りを見せた。

 今だ!!

超音速轟切斬ソニックブレイド!」

 俺が心の中で叫ぶのと同時に、ジャンヌが必殺技を繰り出していた。

 ジャンヌの剣戟の威力に、竜人ドラゴニュートは消え去った。

「隊長ぉ!! さすがっす!!」

「お前達が奴を引き付けてくれたおかげだ」

「隊長、信じてたっす!」

「ははは、私もだ」

 竜人ドラゴニュートを倒した第1騎士団は大歓声を上げて喜んでいる。


「ボロボロだな、皆」

「でも勝てて良かったです」

「これで、王都も大丈夫ですよね?」

「あぁ、きっと大丈夫だ。

 王家の方々が必ず、あちらのドラゴンは倒してくださっている」

「その通りだ」

「アトス殿! 来てくれたのか」

「あぁ。少し前から見ていた。

 お前達だけで勝てそうだったから、何もせずに見させてもらったよ」

「私達も強くなっただろう?

 ドラゴンが人型になった時には驚いたがな」

「強くなったな。

 まさか竜人ドラゴニュートを倒せるとは、俺の想像を遥かに超えていたよ」

「ふふっ。アトス殿にそう言われると嬉しいな。

 ところで、王都は見てきたのか?」

「あぁ。王都には少し被害が出てしまったが、襲ってきた魔物は倒した」

「何だって!? 陛下は、王家の方々は無事なのか!?」

「あぁ、大丈夫だ。

 シャルロ達は無事にドラゴンを全て倒していたよ」

「なら、王都は・・・・・・」

「アヌグラ・マニュー団の陽動作戦だったんだ」

「なん、だと!?」

「フォーレも、ホターラカも、どちらもドラゴンに戦力を割いただろう?

 もちろん、そうしなければ街にドラゴンがやってきて大きな被害が出ていただろうからそれは間違いではない。

 ただ、騎士団達が出陣するのを見計らって、街の近くに別の魔物を召喚していたんだ」

「召喚? もしかして、ドラゴンもか?」

「そうだ」

「魔物を召喚するなど、とんでもない事だな。

 アヌグラ・マニュー団はどれほど力を持った集団なのだ」

「それは分からない。

 ただ、奴らは数十年かけてこの準備をしていたらしい」

「そんなに前から仕組んでいたとは」

「だが、少なくともタンバサ国に向けられた奴等の企みは全て止めた。

 後は世界中に何が起こるか、だ」

「各国はこの事を知っているんだよな?」

「あぁ、知っている。

 それに、俺の仲間達が各国に居る」

「聖獣達が。なら安心だな」

「いや、そうとも言い切れないんだ」

「どういうことだ?」

「実はな・・・・・・いや、これは王宮に戻ってから話そう。

 シャルロ達にも聞いてもらいたい」

「そうだな。では王宮に戻ろう」


 ──


「ジャンヌ、無事でよかった。

 アトス、礼を言う」

「いや、俺は何もしていない。

 第1騎士団だけで竜人ドラゴニュートを倒していた」

「へぇ。ジャンヌ、第1騎士団の皆、凄いじゃないか」

「修行のおかげです。

 あの修行が無ければドラゴンにも勝てなかったと思います」

「そうだね。我々も修行していなければ、竜人ドラゴニュート3体はちょっと厳しかったねぇ」

「少なくとも、皆の今の実力で竜人ドラゴニュートを倒したということに違いはない。

 誇っていいことだと思うが」

「アトス、良い事を言ってくれるわね」


 ──


『お兄ちゃん、ユマランに出てきたドラゴンは何とかなったよ』

「もう全部倒したのか?」

『うん。ドラゴンは騎士団がギリギリだけど倒してたよ。

 でも竜人ドラゴニュートには勝て無さそうだったから私が倒したの』

「それでいい。それより、ドラゴンと別で街に魔物が襲ってこなかったか?」

『来たよー。お兄ちゃんがジパングで倒したのと同じ、ラミアって魔物が出てきた。

 結界がヤバそうだったから、【超火球電磁砲ソーラーフレア】でやっつけといた』

「そうか。【超火球電磁砲ソーラーフレア】を開発しておいて良かった」

『そうだね。さすがに【超重力崩壊爆発スーパーノヴァ】を2回も使っちゃうと魔力がほとんど無くなっちゃうからね』

「2回? ・・・・・・そうか、俺が1発使っていたな」

『そういうこと!』


「オト、ショウ、ジョグ、ユキ、お前達はどうだ?」

『四聖獣は皆、四凶と戦っているよ』

「四凶! やっぱり出てきたのか」

「アトスのおかげで戦えてはいるんだけど、ちょっと勝てそうにない感じ。悔しいけど」

 オトだ。

 話しかけてくる声に力が無い。

「同じく。悔しいが、今の俺では檮杌とうこつには勝てぬようだ」

「儂もじゃ。口惜しいが、これが現実というものなのかの」

饕餮とうてつなんかに勝てないなんて・・・・・」

 四聖獣は皆、かなり苦戦しているようだ。

 彼等がこんな弱音を吐くという事は、恐らくどうしようもない力の差を感じ取っているのだろう。

「お前達はまだ成体になってから日が浅い。

 気に病むな」

 励ますと同時に、皆にかけている持続強化の倍率を30倍に上げる。

「これで勝てるかも知れない!」

 オトの声に元気が戻る。

 他の三人も同様だ。

「もし危ない時は、必ず連絡してくれ。

 アイ、そっちの戦いは終わったんだったな?

 皆を支援してくれ」

『うん、任せて』


 ──


 アイと四聖獣の方はこれで何とかなるだろう。

 王家との会話に戻る。

「アヌグラ・マニュー団の動きについて報せておきたい」


 世界中に凶悪な魔物を出現させたアヌグラ・マニュー団。

 タンバサ、ユマランの両国は魔物を撃退することが出来たが、他の国はまだ予断を許さない。

 状況を伝えておくことで、彼等もまた動きやすくなるだろう。

 特にタンバサ王家、騎士団の力は大きい。


 彼等に更なる協力を要請する事態になるかも知れないと考えた俺は、今得ている情報を全て彼等に伝えることにする。


次話は明日アップ予定。


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