第5話 邂逅
ブックマークありがとうございます。
いま何か聞こえた気がする。
聞こえたというか、なんというか。
(タス・・ケ・・・テ)
!!
やっぱり。
頭の中に直接届いた声(らしきもの)
どこだ?
常時発動している探索魔法には引っかからない。
範囲を拡げてみる。
・・・いた!
身体強化・持続回復をかけて急ぐ。
(身体強化は負担が大きいので持続回復も合わせてかけている)
反応のあった場所へ向かいながら、鑑定結果を確認。
???の雛
スケルトン×2体
ウィル・オ・ウィスプ×2体
まだ出会ったことのないモノばかりだ。
「???の雛、か」
今の俺には鑑定できないってことだよな。
そんな存在を、俺が助けられるのか?
ふと、そんな疑問が頭をよぎったが、その雛はどうやら弱っているようだ。急ごう。
「見えた!」
魔物の注意を引くため、ワザと大きめの声を出す。
アレが???の雛か。うっすら輝いているような。神々しい雰囲気だな。
やはり、かなり弱っているようだ。
とにかく、急いで助けよう。
さっきは急いでいたため魔物の弱点を確認していなかった。なので、もう一度鑑定しておく。
種族: スケルトン
弱点: 火、光
種族: ウィル・オ・ウィスプ
弱点: 水、光
光魔法はまだ使ったことがない。
火と水か。
それならお手の物だ!
魔物全てにマーキングし、スケルトンに火球を、ウィル・オ・ウィスプに水弾を放つ。
が、スケルトンは盾であっさりと火球を防いだ。
一方、ウィル・オ・ウィスプはダメージを受けたようだが、まだ倒せていない。
雛はかなり弱っている。のんびりしていられない!
竜巻で魔物を集め、そこに炎柱を発生させる。
そのまま、消火を兼ねて豪雨を・・・ん?
スケルトンは倒せたようだが、ウィル・オ・ウィスプの様子がおかしい。
炎を吸収している!?
さらに、2体のウィル・オ・ウィスプが合体し、巨大な青炎の塊になった。
どうやらこいつに火魔法は厳禁らしい。
まとめて倒そうとしたのが仇となった。
「火球!」
ウィル・オ・ウィスプが火球を放ってきた。
しかもデカい!!
慌てて水弾を放ち、それをかき消す。
ちょっと焦ったが、今の俺ならデカい水弾を放つのなんて朝飯前・・・っておい!!
「火球!×2」
ウィル・オ・ウィスプは涼しい顔で、火球を連発してくる。
(水弾!×2)
ちょ、ちょっと待て!
デカい火球をそんなにポンポン撃てるのかよ・・・
早く倒さないと。
(豪雨!)
ウィル・オ・ウィスプを中心とした小範囲に、豪雨が降り注ぐ。
さすがにこれは躱せないだろ。
「火炎弾!」
「なっ、マジか!」
豪雨を浴びながら、ウィル・オ・ウィスプはさっきよりもさらに大きな、燃え盛る火の球を撃ってきた。
(水弾! 石壁!)
ドォォォン!!
石壁が崩れ落ちたが、何とか防ぐことができた。
あ、危なかった。
水弾で弱らせた上であの威力か。
「グオォォ・・・」
ウィル・オ・ウィスプは消滅した。
どうやら、豪雨が効いたようだ。
最後の力を振り絞って、あの火炎弾を撃ってきたのか。
恐ろしい魔物だ。
なんとか倒せてよかった。
おっ、魔法石が出た!
少し大きいような気がする。
(鑑定)
魔法石(中)
魔法数: 0 / 2
魔 力: 0 / 75
「うぉっ!」
つい叫んでしまった。
初の魔法石(中)ゲットだぜ!
っと、そんなことしてる場合じゃない。
「大丈夫か!?」
俺は急いで傷ついた雛に駆け寄り、急いで治癒魔法をかける。
「近くに他の魔物は居ないから、もう大丈夫だ」
「君は?」
「俺はアトス。プログラマーだ」
「アトス、ありがとう。助かった。・・・ところで、プログラマーって?」
「俺の職業だよ。プログラムを書く仕事だな」
「・・・プログラム?」
(プログラム、か。この世界にパソコンはなさそうだし、簡単に説明するには・・・)
「やりたいことの手順を並べたもの、かな」
「うーん・・・よくわかんない」
「そ、そうか」
(ま、プログラムが何かって説明は難しいし、あれで理解しろってのは無理があるな)
「ところで、君は?さっき魔物と一緒に鑑定したんだけど、???の雛って出たんだ」
「ボクは鳳凰・・・の雛だよ」
「ホ、ホウオウ!?」
(それでか。なんだか神々しい雰囲気だと思っていたんだ。聖獣、もしくは神獣だったか)
それから俺は、なぜ襲われていたのかを聞いてみた。
ここから少し離れたところに迷宮があるらしく、その迷宮の様子がいつもと違っていたそうだ。
狂暴化した魔物が次から次へと外に出てきて、近くにいた鳳凰も襲われてしまった。
しばらく魔物を倒していたが、そのうちに魔力が切れてしまったので逃げた。
そして、力尽きて倒れてしまったところを、追いかけてきた魔物に襲われた。
そこに俺が現れた、ということだ。
「魔力切れか。・・・そうだ。これを食べるといい」
俺は魔力が回復するリンゴを鳳凰に渡した。
「これは・・・マナリンゴ!?」
「マナリンゴ?リンゴと何が違うんだ?」
「食べると魔力が回復する、特別なリンゴだよ。貴重なものだけど、本当に貰っても良いの?」
「あぁ、いいよ。また魔物に襲われたりしたら困るだろ。早く食べな」
「ありがとう!」
ムシャムシャ。
美味しそうに、嬉しそうに、鳳凰はリンゴを頬張る。
──
リンゴを食べ終えた鳳凰は、なにやら歌のような、不思議なメロディーを発して喜びを表現している。
優しく包み込まれるような、撫でられるような、不思議な感覚。
どこか懐かしさを感じられ、心に温もりを覚える。
聴いているだけで、身も心も癒される。
「キレイな音だな」
「えへへ、ありがと」
「お前、名前はないのか?」
「僕は人間でも亜人でもないからね。名前はないんだ」
「そっか。じゃホウオウ、気を付けてな」
無事に助けることが出来たし、迷宮とやらが気になる。
とりあえずそこに向かうとしよう。
「ねぇ、アトス。君はこれからどうするの?」
「そうだな。とりあえず、その迷宮に行ってみようと思う」
「あの・・・、ボクを仲間にしてくれないかな」
「・・・」
「ダメ?」
「いや、むしろありがたいんだが、ホウオウってのは呼びにくいな、って」
「じゃあ名前、付けてくれる?」
「あぁ、いいぜ。じゃあ・・・」
(名前、か。そういえば、すごくキレイな音だったな。音・・オト)
「オトってのはどうだ?」
「オト。・・・うん、なんだか可愛いくて、いい名前だね」
「じゃあこれからお前はオト、だな」
ボンッ!
「えっ!?」
オトが人間になった・・・いや、人の姿になった。
うっすらと金色に輝いて見える美しい髪、つぶらな瞳。
どこからどうみても可愛らしい女の子だ。
それでいて、どこか気品があるような。
「ど、どういうことだ?」
「アトスを主と認めたから、アトスと同じ種族の姿になれるようになったんだ」
(そんな能力があったのか。それより・・・)
「あ、主?」
「うん、主。これからよろしくね!」
「いやいや、上下関係は好きじゃないんだ。対等な仲間じゃダメか?」
「主がそういうならそれでいいよ。でもま、主従関係は切れないけどね」
「そ、そうなのか。まぁそれはそれとして、対等な仲間ってことでよろしくな!」
「うん、じゃあそういうことで、よろしくね、主」
「主ってのもやめてくれ・・・」
「じゃあアトス、よろしく!」
「あぁ、よろしくな」
初めての仲間。
独りじゃないってのは、嬉しいもんだな。
こうして俺は、【鳳凰】とともに旅をすることになった。
(迷宮の暴走、か。なにか原因がありそうだ)
次から第2章に突入。
明日アップ予定です。