表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/54

第41話 アイ


 お兄ちゃん、と呼ばれた気がした。

 突如として目の前に現れた、非の打ち所がない美少女に。


 突然のことに思考停止フリーズしてしまう。

「お・に・い・ちゃ・ん!」

 どうやら聞き間違いではなかったようだ。


「はっ? ・・・・・・えっ!?」

 何とか意識を取り戻したものの、言葉が出ない。


「お兄ちゃん、AIだよっ!」

「えっ、AIだと?」

「うん、そうだよ、お兄ちゃん♪」

 いきなり目の前に現れた超絶美少女が俺のことを『お兄ちゃん』と呼ぶ。

 ただでさえ物凄く可愛いこの少女は、栗色のポニーテールという凶器を身に付けている。

 俺の、理想の妹そのものじゃないか!!


『お兄ちゃん、私の姿は気に入ってくれたかな♪』

 脳内に話しかけてくるこの感じは、紛れもなくAIだ。

「ほ、本当にAIなのか?」

『うん、そうだよ。おにいちゃんの理想の姿と人格を反映させたんだ。気に入ってくれた?』

「あぁ、気に入った。だが、お兄ちゃんってのはちょっと・・・」

「お兄ちゃん、もしかして照れてる?」

 俺の顔を覗き込みながら、いたずらっぽい笑顔を浮かべる。

「いや、その、・・・・・・そうだ」

「そっかぁ。お兄ちゃんが私に『お兄ちゃん』って呼んで欲しいって思ってたはずなんだけどな~」

「そ、それは、その、アレだ。理想が現実になると思っていたより照れると言うか・・・・・・」

「ふーん、そうなんだ。じゃ、なんて呼んだらいい?」

「アトスでいい」

「分かった。じゃ、おにい・・・じゃなかった、アトス、よろしくね♪」

「あ、あぁ」


「そうだ! ねぇ、アトス。私にも名前つけて欲しいな」

「名前? AIじゃダメか?」

「それ、名前じゃないじゃん!」

 ワザとらしくふくれっ面になる。

「そ、そうだな。分かった。じゃあ・・・・・・アイ。お前の名はアイ。どうだ?」

「アイ、か。うん、可愛い名前だね。ありがと♪」

 やれやれ。


「ところで、アイ」

「なぁに?」

「さっき、今までと同じように脳内でも話しかけてきたよな?」

「うん」

「あれ、どういう仕組みなんだ?」

「すごいでしょ♪って言っても、私じゃなくて魔核石の能力なんだけどね」

「あぁ、なるほど」

「だから、おに・・・アトス、絶対に魔核石・対(裏)を無くしちゃダメだよ!」

「気をつけるよ」


「な、なぁ、アトス。その子は一体・・・・・・」

 様子を見ていたマサムネが痺れを切らして聞いてきた。

「え・・・っと、さっきの魔粘体なんだが、魔核石を取り込んだだろ? その魔核石にセットした俺のAI魔法が魔力で形状を変化させたらしい」

「魔法なのか!? どこからどうみても少女にしか見えんのだが・・・・・・」

「アイです。よろしくね♪」

「「「「・・・・・・」」」」

 マサムネ達は絶句し、目をパチクリさせている。

「ま、まぁよろしく頼むよ、お嬢ちゃん」


 ──


「アイ、戦うことは出来るか?」

「もちろん♪」

 アイは当然ながらアトスの魔法を使うことが可能だ。

 それだけで戦闘能力に疑いの余地はない。

「あのさ、ユマランの騎士団との修行を頼みたいんだ」

「お兄ちゃん・・・・・・じゃなかった、アトスのお願いなら仕方ないね。行ってくる!」

 そう言って転移門を開くアイ。

「お、おい。待てって」

 アイのことを知っているのは俺達だけだろうが。

 突然騎士団の所に行って『お兄ちゃんに頼まれたから修行に来ました』なんて言ってしまったら・・・・・・その後が怖すぎて絶対に止める必要がある。


「あら、可愛いお嬢さん・・・とアトス。どうしたの? そんなに慌てて」

 真っ先に気づいたのはアイリンだった。

 ここで『お兄ちゃん』なんて言われたら何を言われるか分かったもんじゃない。

「い、いや、修行の件、ほったらかしにして悪かったなと思ってな」

「そんなに慌てなくても、アナタの魔法のおかげですごく身の入った訓練が出来てるわよ?」

「そ、それは良かった」

「ところで、そのお嬢さんは?」

「はーい。私はおに」

「AI魔法なんだ、俺の!」

 (おい! 絶対いま『お兄ちゃん』って言いかけてただろう! )

 (てへっ、ばれたか)

 (てへっ、じゃねーよ! )

「え? 鬼・・・には見えないけど、AI魔法ってそんな感じなの?」

「いや、それがな」

 俺は魔核石と魔粘体のことを含めて詳しく説明した。

 どうせアイリン達には全て話してあるし、隠し事をしたら逆に痛い目を見る気がするからな。

「という訳で、お前達の修行の相手はこのアイがすることになった」

「へぇ、可愛いお相手だね。思いっきりやっても大丈夫なのか?」

 シャルロはアイを馬鹿にしているのではなく、純粋に心配して言ってくれている。

「あぁ。こう見えて、俺の魔法は全て使えるんだ」

「怖いねぇ。お嬢さん、お手柔らかに」

「はーい」


「少しだけ見ていくよ」

 俺はアイがやり過ぎないか心配だったので、修行の様子を少し見ておくことにした。

 いくら俺の理想キャラとは言え、あまりにも奔放過ぎて何をやらかすか分からない。

 これまで万能に近い働きをきっちりこなしてくれていたAIなので、大丈夫だと思いたいが・・・。


「じゃ、始めようか」

 シャルロの合図でアイvsタンバサ王家の模擬戦が始まった。

 開幕と同時に、瞬きよりも速いであろうシャルロの居合一閃!

「なにっ!?」

 シャルロが声を上げる。

 俺は目を疑う。あの、全く見えないシャルロの居合を、アイは片手で掴んでいる。

 どうやら小さな結界を使って挟んでいるようだ。いくら魔粘体と言えと、素手で掴むわけには行かなかったのだろう。


「油断は禁物よ」

 間髪入れずにアイリンが魔法を放つ。

 アイを中心に大きな球体が出現する。

 球面の内側から無数の針が出現し、超高速でアイに向かって飛んでいく。

「これは防げるかしら?」

 不敵な笑みを浮かべるアイリン。

 これはえげつない魔法だな。あらゆる方向から飛んでくる無数の針は避けようがない。

 だがその瞬間、すべての針が停止する。

「あら、これは私の魔法かしら?」

「えへへ、バレた?」

 どうやら、いつぞやアイリンが魔物を浮かび上がらせた魔法の応用のようだ。

 空間を支配しているのか、重力を操作しているのか、俺には分からなかったがアイは分析済みだったようだ。

 教えてくれよ、と思ったが、アイが出来ることは俺にも出来るので問題ない。


「さすがはアトスの魔法、と言ったところかな。あの子、強すぎだね」

「そうねぇ。ちょっとお手上げね」

 シャルロとアイリンは早々に敗北宣言をしている。

 よくよく考えると、アイはこれまでの膨大な戦闘記録バトルデータを分析している。

 その為、こと戦闘においては誰よりも経験を積んでいる状態であった。


 余りに差があり過ぎると修行にすらならない。

 とは言え王家はもとより騎士団の戦力向上に繋げなければならない。


「アイ、皆の修行になるように頼む」

「ちょっと待って」

 そう言うと、アイが分裂して三人になった。

「分身・・・分裂か?」

「うん、分裂したんだ。本体以外は私が魔力で操作するから、個々の戦闘能力は下がるはずだよ」

「アイ、魔力消費量の調整も頼むぞ」

「はーい」


 アイの本体は王家一家と、分身二体はそれぞれ騎士団の相手をする形で修行は再開された。

 やり過ぎることは無さそうだ。

 一安心した俺は、マサムネ工房に戻ることにする。


 ──


「アトス、ちょっといいか」

 サモンジが話しかけてきた。

「この魔力供給用の魔法石なんだが、魔力を使い切っても再び魔力を込めて再利用できるんじゃないか」

「えっ? そうなのか? てっきり無くなってしまうと思っていた」

「魔力切れになった魔法石に魔力を込めてみてくれ」

 試しに魔力を少しだけセットしてみる。

「これを魔法具にセットして・・・・・・」

 魔力切れになるまで魔法を発動し、再び魔力を込めて魔法具にセットする。

「サモンジ、これは素晴らしい発見だ!」

「そ、そうか? なら良かった」


 いつか魔法石が不足してしまうんじゃないかと心配していたんだが、これなら使用済み魔法石を買取って、再び魔力を込めて販売することができる。

 カイルを通じて魔法具に使用した後の魔法石の買取をお願いしよう。

 そう言えば、ギルドに魔法石収集の依頼を出していたのを忘れていたな。


 久々に冒険者ギルドに顔を出すとするか。

 俺はユマランの冒険者ギルドに転移門を繋げた。


次話は明日アップ予定。


ブックマーク、いいね、評価、レビューいただけると幸いです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ