第40話 魔核石
一部誤字を修正
アヌグラ・マニュー団に対抗するため、アトス達に今できることは何か。
一つは、自分自身が強くなること。
特に四聖獣たちは成体になってからメキメキと実力をつけて来ており、さらなるレベルアップが見込める。
もう一つは、各国の防衛戦力を上げること。
タンバサ国の騎士団と行っていた聖獣と騎士団による戦闘訓練は、かなり効果が高い上に聖獣自身のレベルアップも図れるため効率が良い。
ただ、六国に対し聖獣は四人。アトスを入れたとしても五人しかいないため、一人足りない。
悩んだ末、アトス達はひとまずタンバサに行くことにした。
シャルロに紹介状を書いてもらった件の報告もある。
「シャルロ、今いいか」
「アトス。例の件は上手く行ったかい?」
「あぁ。シャルロのおかげで全ての国が対アヌグラ・マニュー団戦線への参加を表明した」
「君達の行動あってこそだよ。ところで、やっぱり各国に異変は起こっていたのかな」
「どの国も迷宮に異変が起きて、Sランクオーバーの魔物が大量に発生していた。さらに、どの迷宮も最深部には竜がいた」
「ふむ。アヌグラ・マニュー団は竜レベルの魔物を操ることが出来るとみて間違いないね」
「そうだな。間違いないだろう」
「となると、各国の騎士団の戦力でどこまで対抗できるか心配になるね。竜を倒せるほどの騎士団を持つ国は我が国を除けばアイソルぐらいじゃないかな」
「それに、アヌグラ・マニュー団が召喚したと思われる竜は必ず竜人に進化している。竜を圧倒できるレベルじゃないと、アレは倒せない」
「竜を圧倒・・・か。それは俺達にも難しいかも知れないねぇ」
応接室に重い空気が流れる。
「お父様、お母さま、それにお姉さまも修行しませんか」
サラが明るい声で提案する。
少しでも重い空気を軽くし、希望を見出すきっかけになればという想いを込めて。
精一杯の笑顔とともに。
「そうだね、サラ。騎士団だけでなく我々も鍛えるとしようか。アイリン、シエラ、君達はどうだい?」
「異論はなくてよ。我が国を、世界を守るためにも、強くなりましょう」
「妹に負けてられないわね。私もご一緒しますわ」
「じゃ、思いっきり修行できるように持続回復と自動回復をかけておこう。騎士団連中にももれなくな」
「アトス、助かるよ」
──
これでタンバサの戦力アップは問題ない。
残る五国をどうするか。
断られるかも知れないが、皆それぞれ紹介状を持って行った国の騎士団との修行を提案してみることにした。
どの国も現状ではアヌグラ・マニュー団に対抗できないことを認識しており、さらには国を救ってくれた救世主に修行をつけてもらえるとあっては断る理由などなく、二つ返事で修行することが決まった。
各国の騎士団をさらに驚かせたのは、アトスが全員に持続回復と自動回復をかけっぱなしにしたことだった。
その場から離れるにもかかわらず、また、各国の騎士団全員という途方もない人数に支援魔法をかけっぱなしにするなど非常識もいいところだった。
このアトスの支援魔法のおかげで延々と全力で戦闘訓練を行えるため、各国の騎士団のレベルは飛躍的に上昇することとなる。
──
アトスはユマラン王国の騎士団と修行をすることとなった。
・・・・・・のだが、そこにアトスの姿はなかった。
支援魔法をかけてその場を離れ、アトスはマサムネ工房に移動していた。
騎士団の戦力向上に繋がるのは、修行だけではない。
戦闘に使える魔法具を大量生産できれば、それを配備することで騎士団の戦闘能力はグンと上がる。
アトスが考えているのは、強化ベルトによる基礎戦闘力の向上と黒の杖による攻撃力の向上だ。
マサムネ達に事情を説明し、一時的に生活の質の向上に繋がる魔法具の生産を停止し、戦闘に特化した魔法具の試作・開発を優先することとなった。
「サダムネ、試作はどうだ?」
サダムネには黒の杖と強化ベルトの試作を頼んでいた。
「ばっちり出来ているぞ。試し用の魔法で確認が取れたからすでに量産体制に入っている」
「さすがだな。黒の杖について追加の頼みがある。各国に三本ずつ特別なものを用意したい。見た目でそれと分かるようにして欲しい」
「分かった。各国に三本、合計十八本だな。任せろ」
サモンジ、ヨシヒロ、カネウジ、キンジュウの四人にもサダムネを手伝ってもらうことにしたので、戦闘用魔法具の量産は捗るだろう。
魔法具による戦力アップはこれで何とかなりそうだ。
「アトス、ちょっとこれを見てくれ」
マジグラミンの生産・改良に取り組んでいたマサムネが不思議な物を見つけたらしい。
それは、玉虫色の輝きを放つ透き通った一対の宝石だった。
「素材を探っていたらふと目に入ってな。何か心当たりはあるか?」
心当たり・・・・・・思い返してみたが、特に思い当ることはない。
もしかしたら竜人が落としたものかも知れないが、【封殺超爆発】で倒しているため素材が出たかどうかすら分かっていない。
「分からないな。とりあえず鑑定してみよう」
魔核石・対(表)
魔法数: 0 / ?
魔 力: 0 / ?
魔核石・対(裏)
魔法数: 0 / ?
魔 力: 0 / ?
魔核石・対か。セット、と言うことだろうか。
表・裏のどちらも魔法数、魔力ともに『?』か。どういうことだ?
魔法をセットして発動させると壊れてしまうかも知れない。まずは片方に魔力を込めて鑑定してみる。
魔核石・対(表)
魔 力: 500 / ?
魔核石・対(裏)
魔 力: 500 / ?
今、俺は魔核石・対(表)にだけ魔力を込めた。
だが、魔核石・対(裏)も魔力が込められている。
『対』というのはそう言うことなのだろう。
と言うことは、片方に魔法をセットすればもう一方にもセットできると言うことかも知れない。
『常設型魔法をセットし、魔力を供給し続けるという使い方も出来ると思います』
なるほど、その手があったか。
もし魔法を発動させて壊れてしまったら勿体ない気もするが、一度試しておこう。
10秒間隔で【探索映写】を実行する常設魔法をセットし、魔法を発動する。
映写は10秒間続くため、映像は出っぱなしになるが、10秒間隔で探索結果が更新されていることが確認できた。
再び鑑定してみる。
魔核石・対(表)
魔法数: 1 / ?
魔核石・対(裏)
魔法数: 1 / ?
魔法数が1になった。
もしかして、魔法を追加出来るのだろうか。
半径5mの範囲内にランダムで水滴を落とす、という意味のない魔法を5秒毎に発動する常設魔法をセットしてみる。
探索結果が消え、5秒毎に水滴があちこちに落ちる。
鑑定してみると・・・・・・
魔核石・対(表)
魔法数: 1 / ?
魔核石・対(裏)
魔法数: 1 / ?
魔法数『1』。
魔法を幾つも追加できるんじゃないかと期待したんだが、置き換えるだけだった。
ただ、魔法を発動しても壊れない。再利用可能かつ遠隔で魔力を供給できる魔法石、と言う感じだ。
これはこれで、上手く使えば便利かもしれない。
「アトス、実はもう一つあるんだ」
マサムネは不思議なゼリーのような、粘度が高く透き通った物を持ってきた。
魔粘体
特 徴: 魔力により形状、色、質量を変化させることができる。
特徴・・・・・・こんな鑑定結果は初めてだな。
それにしても、魔力で見た目を変化させられるのか。面白そうだな。
どうすればいいのか分からないが、とにかく試してみるか。
「あっ!」
魔粘体を手に取ろうとしたとき、アトスが手に持っていた魔核石・対(表)が魔粘体に取り込まれた。
『マスター、試したいことがあります』
AIが何か思いついたようだ。思いついたという表現が正しいのかどうかは分からないが。
『私自身に機能を追加および強化します。並列処理数UP、処理能力大幅UP、人格付与』
プラグイン機能、AI自身が使ってばかりだな。
・・・・・・って、人格付与? そんなことが出来るのか? それに、どんな人格が?
しれっと追加された機能に、恐怖と期待が入り交じった感情が湧き起こる。
AIが何か魔法を発動したような気配がした。
アトスが手にしている魔粘体が、突然動き始めた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「お兄ちゃん!」
次話は明日アップ予定。
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