第35話 魔法具開発
各国にアヌグラ・マニュー団の計画を伝えるという世界にとっての重大任務に就いたアトス達。
アトスの担当であったユマラン国への説明は無事に終わり、残りの国々については四聖獣がそれぞれ担当している。
彼等から連絡が来るまでは信じて待つことにし、アトスは魔法具開発に戻る。
アトスが転移門をくぐると、マサムネが開発を続けている『マジグラミン』の報告に来た。
「試作していた蛇口とマジグラミンだが、動いたぞ」
「おぉ、ついにできたか!」
マサムネから手渡された蛇口をひねると、勢いよく水が出てくる。
「良い感じだな。あとは、このダイアルとレバーで火魔法と水魔法の魔力を調節することができれば完璧だな」
「そのことだが、すでに魔法素材を使ってその部分の状態を受け渡せるようにしている。後は、レバーをトリガーにしてパラメータを元に魔力を調整できる魔法をセットできれば動くはずだ」
アトスが描いた絵を元に、そこまで読み取って試作を進めていたマサムネにアトスは驚きを隠せない。
言われた通りの魔法を組み立てるため、アトスはマジグラミンを手に取る。
常設型トリガー魔法はレバーの動作を検知し、ダイアルとレバーの状態を次のブロックに渡す。
ダイアルから取得した値を火魔法の魔力に設定し、レバーから取得した値を水魔法の魔力に設定する。
もしブロックにはレバーの値がゼロより大きければ、という条件を設定する。
これにより、レバーの値がゼロより大きければ火魔法と水魔法を発動することになる。
条件には加えていないが、もしダイアルの値がゼロの場合は火魔法の魔力がゼロとなるため火魔法は発動しない。
レバーの値を条件にしたのは、水魔法の魔力がゼロの場合に火魔法だけが発動する必要はなく、また火魔法だけが発動すると高熱となって危険なため、それを防ぐセーフティの意味もある。
「さて、これでどうだ?」
蛇口にマジグラミンを装着し、動力源となる魔法石をセットしてダイアルとレバーをひねる。
「よし、ちゃんとお湯が出るな。温度調節も・・・あつっ!!」
水量を減らすと想定外に熱いお湯が出てきて、危うく火傷しそうになった。
「そうか、火魔法の魔力は水の量とも連動しないとダメってことだな」
火魔法の魔力値を渡す部分をダイアルとレバーの両方の値から魔力を調節する魔法に変更する。
マジグラミンを組み立て直し、蛇口に装着する。
今度は思った通り、水量を変更してもお湯の温度は変わらず、ダイアルで設定した温度のお湯が出るようになった。
「これで完成だな。あとは、蛇口とマジグラミンの各ブロックの量産だな」
「マジグラミンの量産はかなり進んでいる。俺の元弟子たちが頑張ってくれてな」
「流石だな。じゃあ蛇口とシャワー型の二つを量産して欲しい」
「あぁ、シャワー型も試作済みだから問題なく量産できる」
「アトス、ちょっと考えてたことがあるんだが」
サダムネが何やら言いたそうだ。
「なんだ?」
「マジグラミンのブロックだが、セットした魔法を区別できるように見た目を工夫した方が良いと思う。そうしないと間違えて組み立ててしまう危険がある」
「なるほど。確かにそうだな」
「番号を付けておくのはどうだ? 番号ごとにどんな魔法がセットされているかは一覧表を用意しておけばいいだろう」
「それは名案だな。ブロックの種類ごとに色を変えておいて、各ブロックごとに番号を割り振るのはどうだ?」
「うむ、それでいこう」
こうして、マジグラミンは各ブロックの種類によって色が決まり、各色ごとに1番から順に番号を振る。
もしブロックや反復ブロックは、中にセットできるブロックの数によってレア度が異なるため、それを分かりやすく明記することとなった。
「蛇口とシャワーは、使い方が固定だからマジグラミンの恩恵はほとんどないのだが、入門用として分かりやすくていいか」
「それなんだが・・・・・・例えば魔力を調節するブロックにパラメータブロックを追加して、水魔法の魔力最大値を設定できるようにできないか? そのパラメータブロックは使用者が容易に変更できるようにしておけば、魔力を消費し過ぎないように各自で調整できると思うんだ」
確かに水道も元栓の開き具合で水量の調節が可能だな、とアトスは思った。
それに、今は直接開発に関わっていないサダムネがマジグラミンについてもしっかり考えて意見を出してくれることがアトスは嬉しかった。
「それなら魔法具との違いを出せるな」
「火魔法の方も同じ仕組みにしないか。使う場所によってお湯の熱さをどこまで必要とするかも変わるだろう?」
マサムネも意見を出してくる。
「そうだな。その二つを取り入れよう」
こうして最大温度と最大水量調節機能が追加され、便利な蛇口とシャワーとなった。
マジグラミンと専用の魔法具がセットという、マジグラミンを思いついた時の想定とは異なる物になったが、有用性がかなり高く、満足のいくものであった。
「アトス、こっちも見てくれ」
マジグラミンの話しが終わったところで、サダムネが試作品を持ってきた。
「鷹の目と虫眼鏡の試作品ができた」
「格好いいな。彫刻としても一級品じゃないか?」
新型鷹の目を見てアトスは感動した。このまま部屋に飾りたいぐらいだと思っていた。アトスには部屋どころか家もないのだが。。。
「虫眼鏡も思っていた通りのものだ」
二つの試作品の出来栄えに感動し喜んだアトスは、早速魔法をセットして使用してみる。
まずは虫眼鏡。レンズに捉えたものを鑑定する魔法をセットしてある。
魔法石や魔法具、それから近くにいた魔物を呼び寄せて鑑定すると、正しい鑑定結果が浮かび上がった。
「よし、完璧だ」
次は鷹の目だ。半径100mを探索する魔法がセットしてある。
探索結果が映し出され、中心に一番近い円に赤い丸が映っている。先ほど呼び寄せた魔物だ。
さらに、数匹の魔物を半径100m以内にランダムに呼び寄せて探索してみる。
配置した魔物の距離・方角と映し出された探索結果の赤い丸の位置が一致した。
「よし、これも完璧だ。この二つも量産体制に入ってくれ」
「ところで、サダムネにもう一つお願いがあるんだ」
アトスはまた魔法具の新しい案を思いついたようだ。
「新しい魔法具・・・・・・と言ってもこれは俺たち用の物なんだが、魔法具やマジグラミンのブロックに魔法をセットするための魔法具を作って欲しい。複数の魔法がセットできるものが良い」
「ふむ・・・・・・」
「量産体制に入る魔法具やブロックに魔法をセットする魔法を俺が仕込んでおけば、後はお前達がその魔法具を使って魔法をセットできるようになるんだ」
「なるほど。デモ用の魔法をセットする魔法石と同じ考え方だな」
「そう言うことだ」
「それならすぐ作れる」
そう言ってサダムネは、本当にあっという間に二~三個の魔法をセットできる、魔法をセットするための魔法具をいくつか作ってくれた。
「あっという間だな。じゃあこれに俺がそれぞれの魔法をセットする魔法をセットしておく」
「試しに使ってみよう。これが鷹の目用と虫眼鏡用の魔法がセットされているものだな」
サダムネは魔力供給用の魔法石をセットし、まだ魔法がセットされていない鷹の目に魔法をセットしてみる。
鷹の目にも魔法石をセットし、魔法起動用のボタンを押す。
無事に、探索結果が映し出された。
「これで大丈夫だな。間違えないように印をつけておいてくれ」
こうして、いくつかの魔法具とマジグラミンキットの量産体制が整った。
いま量産できるのは以下の魔法具たちだ。
・魔法の手単一魔法版
・魔法の手複数魔法版
・鷹の目
・虫眼鏡
・馬鞍
・車輪覆護
・マジグラミンスターターキット(蛇口)
・マジグラミンスターターキット(シャワー)
「アトス、まだ試作できていない魔法具だが、優先すべきものはあるか?」
「そうだな・・・・・・黒の杖と強化ベルトをまず試作してくれ。白の杖はまだ詳細を検討中なんだ」
「分かった。ではその二つの試作を進めておく」
「そう言えば、たくさん試作を進めてもらっていたのに報酬を渡していなかったな。これを皆で分けてくれ」
そう言ってアトスは、金貨が2~300枚は入っているであろう袋を六つ取り出す。
「お、おいおい。こんなに沢山は受取れないぞ」
マサムネがそう言うと、後の五人も首を縦に振っている。
「まぁそう言わず受け取ってくれ。カイルが魔法石をたくさん売ってくれたから問題ない」
「魔法石はアトスが一人で作れるものだろ? 俺たちがその対価をもらう訳にはいかない」
「いや、魔法具の開発には本当に感謝しているんだ。俺の思い付きを形にしてくれているし、より良い案も出してくれてるだろう? 俺は皆を魔法具開発の仲間だと思っている。だから、報酬を分けるのは当然だ」
「仲間、か。分かった。有難く受け取っておく。ただし、しばらくは要らないぞ。それぐらいの報酬をもらっている。また魔法石で儲かったらそれはアトスの物だ」
「分かった。そう言うことにしておく」
──
一通り話がまとまったところで、ジョグが話しかけてきた。
「アトス、こっちに来れるか?」
一番近い国を担当していたジョグ。どうやらもう王都に着いたようだ。
「分かった。今行く」
ジョグの向かった『セントリーマ』は宗教国家と聞く。
まさかアヌグラ・マニュー団と関わっているなんてことはないと思うが。
一抹の不安を感じながら、アトスはジョグのいるセントリーマへと転移門を繋ぐ。
次話は明日アップ予定。
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