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第34話 馬車革命


「五国を手分けして回るぞ」

「じゃ、私がアイソルに行くわ。あそこはちょっと遠くて、寒いの」

「ボクはオリアマリンビアに行くね。飛んで行った方が速そうだからね」

「では、俺はニカラールへ行こう」

「では儂はセントリーマへ」

「俺はここユマランだな。交渉が難しそうだったらすぐに連絡してくれ。皆、頼んだぞ!」

 こうしてアトス達はぞれぞれ別の国を目指して行動することとなった。


 ──


 アトスはまず、マサムネ工房に立ち寄った。

「サダムネ、優先して欲しい魔法具の案がある」

「ほう、どんな魔法具だ?」

「馬車用の魔法具で、馬の鞍があるだろう? あれに持続強化をセットしたら馬車の旅がかなり早くなると思ってな」

「なるほど。速度も上がり、馬も疲れなくなる、か」

「それだと、馬車の振動がかなりキツくなるんじゃないか?」

 マサムネが言う。

「それもそうか。俺は馬車に乗ったことが無いから分からないが、振動は結構大きいのか?」

「ゆっくり走ればマシだ。だから馬車の速度はあまり上げられないんだ」

「振動か・・・・・・」

 ・・・・・・

 ・・・

「これならいけるか?」

 アトスは何か思いついたようで、まだ魔法をセットしていない試作品を手に取る。

 そして、いきなり魔法具を叩き始めた。

「これを思いっきり殴ってみてくれ」

 そう言ってサダムネに魔法具を渡す。

 サダムネは躊躇なく、金づちで思いっきり叩きつけた。だが、魔法具はビクともしない。

 剣で切ってみても、魔法具は切れないどころかヒビすら入らない。

「な、なにをしたんだ?」

「衝撃を吸収する魔法をセットしたんだ。魔力が切れると元の強度に戻るがな」

「なるほど。これを馬車につければ良いってことか」

「振動の起こり(・・・)で吸収しておけば、馬車全体が振動を気にせずに済むだろ? そうすれば、部品の消耗もかなり防げると思うんだが、どうだ?」

「馬車に乗ったことが無い割に、かなり馬車のことに詳しい気がするな。その案には賛成だ。車輪で振動を吸収してしまえばいいだろう」

「なら、いっそのこと車輪を作るか? いや、それだと既存の馬車に使えないな」

「車輪に被せるような物ならどうだ? 皮を使えばある程度の伸縮性があるから少し伸ばしてこう・・・・・・」

 まさにタイヤである。

 アトスも盲点だったと思ったが、この世界の馬車は車輪だけでゴムタイヤがついていない。

 それを考えると、振動が気になるというのも頷ける。

「試作を頼めるか。ちょっと急ぎの用があってな。すぐに行かなければならないんだ」

「あぁ、まかせておけ」

 マサムネ達とともに魔法具の開発に勤しみたいのだが、今はゆっくりしている場合では無かった。

 アトスは後ろ髪を引かれながら、マサムネ工房を後にする。


 ──


「カイルは居るか?」

 アトスはカイル邸に来ていた。直接王宮に向かっても良かったのだが、ひとまず相談してみようと考えたのだ。

「こちらでしばらくお待ちください」

 前とは違う応接室に通される。


 しばらくすると、カイルが慌ててやって来た。

「アトス殿、お待たせしました」

「いや、忙しいところに突然来て済まない」

 アトスは早速話を始める。

 ・・・・・・

 ・・・

「近頃、あちこちで魔物が異常発生していると聞いていましたが、まさかそのような事が起こっていたとは思いもしませんでした」

「いま俺の仲間が各国を回っている。俺もこれからユマランの王宮に出向かねばならない」

「でしたら、一緒に参りましょう」

「良いのか。忙しいだろう?」

「私もちょうど王宮に用があったのを思い出しましてな。こう言っては何ですが、ついでなのでお気になさらず」


 ──


 アトスはカイルに連れられ、王宮にやって来た。

 タンバサ国の王宮よりもかなり立派な王宮だ。首都が商業都市というぐらいだから、国家としても潤っているのだろう。

「国家の安全保障に関わる緊急の要件を伝えに参りました」

「カイル殿。安全保障に関わる件とは、一体どのようなことでしょう」

「こちらのアトス殿から説明していただく」

「まずこれを」

 アトスはシャルロから預かった紹介状を手渡す。

「タンバサ国王からの紹介状だ」

「タンバサ国王から!? 確認しますのでしばらくお待ちください」

 ・・・・・・

 ・・・

 しばらくすると身なりの良い男がやってきて、アトスとカイルは国王と非公式な場で対談することとなった。

 ユマラン国王はシャルロと旧知の仲であった。

 そのシャルロからの紹介状とあっては、ユマラン国王は無碍に扱うことはできなかった。

 むしろ世界の危機的状況を伝えてくれたアトスに感謝しかなかった。

 さらには、シャルロがアトスは自身やアイリンを遥かに凌ぐ実力者だと書いていたため、アトスに敬意と畏怖の念を抱かずにはいられなかった。

「アトスよ。火急の報せ、礼を言う。我が国の警備体制強化および必要があればいつでも出陣できるよう手配しよう」

「あぁ、そうしてくれ」

「時にアトスよ。シャルロやアイリンを凌駕するというお主の力を見せてもらうことは出来ぬか? 俺はシャルロとは旧知の仲でな。そのシャルロが推薦するお主の実力を疑っている訳では無い。ただ、騎士団の中には血の気の多い者もいる。その力を示して貰った方が彼等も動きやすいと思ってな」

「あぁ、構わない。騎士団の修練場に行こうか」


「けっ、敬礼っ!!」

 突然の国王陛下来訪で騎士団に緊張が走る。

「皆の者、我が国周辺の魔物異常発生の件は知っているな? それについては、ここにいるアトスとその仲間が全て解決してくれた」

 場がざわつく。中には信じられない者もチラホラいるようだ。

「異常を産み出していた者たちの正体はアヌグラ・マニュー団。噂に聞いたことがある者もいるだろう。奴らが今、世界のあちこちで同様の異常を発生させておる。その目的は世界の滅亡だ」

 噂を耳にしたことがある者は、国王のこの言葉に信憑性の高さを感じている。

「これより我が国は特別警戒態勢を取る。以上だ」

 場内のざわつきが収まらない。

 中には『その話を信じて良いのか』と言った疑問も聞こえてくる。

「アトスの力を疑っている者がいるようだな。アトス、見せてやってくれ」


 アトスはそれらしく構えてから【封殺超爆発プリズンド・エクスプロージョン】を放つ。

 閃光と轟音に包まれた後、場内が再びざわつく。

「なんだあの魔法は!?」

「とんでもない威力だ」

迷宮ダンジョンの異変を解決したというのも頷ける」

 色んな声が聞こえてくるが、とにかくアトスの実力を認め、国王が話した内容も信じたようだ。

 そもそも国王の話しに疑問を抱くことは勿論、それを口にするなど騎士団にあるまじき行為ではあるのだが。

 何にせよ、これでユマラン王国は対アヌグラ・マニュー団戦線に加わることとなった。


 ──


「いや、アトス殿の魔法には度肝を抜かれました」

「あれはちょっと特別な魔法だからな」

 二人はカイル邸に戻っていた。

 国王との対談も首尾よく進み、これからまた二人で話に花を咲かせようかと言うところだ。

「そういえば、魔法石はどうだ?」

「すこぶる好調です。あっという間に売り切れそうな勢いで売れて行くのでいくらあっても困りませんね」

「そうか。では前の倍ほど用意しよう」

「それは願ってもない」

 執事が箱を用意すると、アトスはすぐに魔法石に魔法をセットしていく。

 前回と同じの五種類の魔法石を、今回は二千個ずつだ。

  ・持続強化×2(10分)

  ・持続強化×3(10分)

  ・探索映写(70m)

  ・範囲回復(5m、最大10人)

  ・探索討伐(10m、最大5体)

「あっという間ですな。アトス殿、今回も一つ辺り銀貨三枚でよろしいですか?」

「あぁ、問題ない」

 執事が使用人とともに金貨を運んでくる。

「多いな。こんなに良いのか?」

「もちろんです。それ以上に儲けさせていただいておりますので」

「なら貰っておこう」


「カイル、少し待っててもらえるか?」

「それは大丈夫ですが、何かあるのですか?」

「今、馬車に付ける魔法具の試作を頼んでいてな。もしかしたら出来ているかも知れん」

「おぉ、それは楽しみですな」

「一緒に見に来るか?」

「良いのですか。では、ぜひ!」

 アトスはマサムネ工房に転移門を繋ぐ。

「皆、こちらはカイル。大商人だ。これから魔法具の販売でお世話になる」

「マサムネだ。カイル殿、よろしく」

 サダムネを始め、新たに加わった弟子たちも挨拶を済ませる。


「サダムネ、試作はどうだ?」

「二つとも出来ている」

「良い感じだな。早速馬車に乗ってみたいな。カイル、馬車はあるか?」

「えぇ。屋敷に戻ればありますとも」

 アトスは転移門を開き、カイル邸宅から馬車を連れてくる。

 【衝撃吸収アブゾルブ】をセットした車輪覆護タイヤカバーを馬車の車輪に装着する。

 持続強化を付けた鞍を馬に着せ、御者に走らせてもらう。

「おぉ、これは凄い!」

 カイルも御者も感動している。これまでにない速度で馬車を走らせているにも関わらず、振動を全く感じない。

「こ、これは馬車革命です! アトス殿、これは素晴らしい魔法具ですぞ!」

「それほどか?」

「えぇ。これなら、見た目を豪華にすれば金貨100枚でも売れますな」

「ふむ。サダムネ、長旅にも耐えるよう、魔法石を大量にセット出来るようにしてくれ」

「分かった。では弟子たちに量産させておく」

「サモンジ、ヨシヒロ、カネウジ、キンジュウ、よろしく頼む」

「「「「はいよ!」」」」


 ──


「カイル、付き合わせて悪かったな」

「いえいえ、とんでもない。素晴らしい体験をさせてもらいましたよ」

「そうか。また量産出来たら持ってくる」

「えぇ、楽しみにお待ちしてますぞ」

 大商人カイルをして『馬車革命』と言わしめたこの魔法具は、後に世を席捲することとなる。


 ユマラン王国の説得はシャルロのおかげもあってすんなり終わった。

 他の国に向かった四人は上手く話を進めることができるだろうか。


次話は明日アップ予定。


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