第3話 魔法石
プログラム魔法、か。
魔法をプログラミングするなんて、楽し過ぎる!
色々と試してみる価値がある。可能性は無限大だ。
ワクワクが止まらないぞ。
・・・っとその前に、ゴブリンから出てきた石だ。
あの石に火球の魔法を吸い込まれたような気がした。
そういえば、ちょっと気になってたことがある。
ついでに試してみるか。
(鑑定)
魔法石(小)
魔法数: 1 / 1
魔 力: 8 / 30
おぉ、鑑定できた。
もしかしたら、色んな物を鑑定できるのかも知れないな。
っと、今はこの石だ。
(思考が枝分かれして迷子になるのが俺の悪い癖だな(苦笑))
ふむふむ、この石は【魔法石】っていうのか。
「魔法数」ってのは、恐らくこの石にセットできる魔法の数だろう。
「1 / 1」ということは、セットできる魔法の数は1つ。
そして、すでに魔法を1つセットしている状態ということだろう。
ということは、やっぱり火球は吸い込まれた(セットされた)んだな。
「魔力」は・・・この石にセットする魔法の最大魔力値ってことか。
「8 / 30」だから、最大で魔力30までの魔法がセットできるということだろう。
で、今セットされている火球の魔力が「8」か。
なんだかもったいない気がしてしまうな。
どうせなら、限界近くの魔力値まで魔法をセットしたいところだ。
ふんふん、なるほど。なんとなくだが分かってきた。
それにしても、セットできる魔法は1つ、か。
複数の魔法をセットできれば面白いんだが、仕方ない。
・・・
・・・っ!
いいことを思いついた。
出来るかどうかは試してみないと分からないが。
その前に、この魔法石はどうやって使うんだ?
手に持って、そこから発動するイメージをする、とか?
ドンッ・・・ゴォッ!
「うぉっ、発動した!・・・って、やばい!」
慌てて水弾を放ち、火が森に広がるのを止めた。
「ま、間に合った・・・。心臓に悪いぞ」
と、とにかく、魔法石の使い方は分かった。
あとは、さっき思いついたことができるか早く試したい。
「多分、できると思うんだよな」
俺が思いついたのは、魔法石にプログラム魔法をセットすること。
もしこれができれば、魔法石の有用性がグッと上がる。
だけどその前に、まずはプログラム魔法について詳しく調べてみよう。
──
ゴブリンを討伐した時のプログラム魔法は、探索・鑑定・条件分岐・刻印・火球を含んでいた。
それも、一つ一つの魔法を発動するよりも簡易なイメージで。
これは恐らく、刻印や火球はすでにイメージが出来上がっているからだろう。
使ったことも無いような魔法は、簡単には組み込めないんじゃないかな。
ちなみに、探索、鑑定、条件分岐はプログラミングの応用で比較的簡単にイメージできる。
現実世界で当たり前のように考え、イメージしていた作業なのだ。
職業病というか、職業スキルと言うか・・・ま、とにかくそんな感じだ。
さて、プログラム魔法でどんなことが出来るのか、検証しよう。
例えば、こんな事ができるのか?
・半径3m以内を探索
・鑑定(木を探す)
・木が見つかった場合、火球を放つ
・火球を放った直後に、水弾を放つ
プログラム魔法、発動!
(もし、半径3m以内に木があれば、その木に火球を放ち、すぐに水弾を放つ)
ドンッ・・・ゴォッ!
バシャッ!!
うむ、良い感じだ。
(というか、これは楽しすぎる!)
よし!
じゃあさっき思いついたアレができるか試すことにしよう。
まずは、魔法石だ。魔法石がないと始まらない。
ゴブリン、ゴブリンは居ないか。
探索してみるか。
半径100mぐらいのイメージで・・・
おわっ・・・かなりの魔力を消費した気がする。
範囲を広げるほど、大きな魔力が必要なのか。ま、当然だな。
おっ、いるいる。右後方80mってとこか?
そこに、何かが5体居る。
探索おもしれー。
早速倒しに行くぞ!
──
そこには、期待通りゴブリンが5体居た。
プログラム魔法【ゴブリン討伐】を使う。
(ゴブリン討伐!×5)
5連発でゴブリン達をあっさり倒し、なんと魔法石を2個ゲット!
「よしっ!」
ゴブリン討伐の検証は十分だな。
早速、手に入れた魔法石にゴブリン討伐をセットしてみる。
魔法石を手に持って・・・(ゴブリン討伐!)
うん、魔法が吸い込まれるような感覚があった。
(鑑定)
魔法石(小)
魔法数: 1 / 1
魔 力: 28 / 30
よしよし、魔法はセットできているな。
それに、セットした魔力値が高いから、プログラム魔法をセットできているだろう。
とはいえ、プログラムには確認が必要なのだ。
(多分これで大丈夫と思っていても、失敗することはよくあるのだ)
探索魔法を発動して・・・お、1匹の反応がある。
逸る気持ちを抑えつつ、少し速足でそこに向かった。
居た!・・・ん?
ゴブリンじゃない!アレは・・・オークか?
・・・俺はゴブリンを探していたんだよ。
だけど、そこに居たのはゴブリンではなく、オークのような魔物だ。
なんとなく猪っぽい顔をしているので、おそらくオークだろう。
ゴブリンじゃないと、ゴブリン討伐をセットした魔法石を試せないじゃないか。
それにオークと言えば、ゴブリンよりかなり強いイメージ・・・を持ってしまうってことは、強いんだろうな。
(明晰夢なんだから期待通りゴブリンを出してくれよ、トホホ)
それにしても、オーク、結構デカいな。
それに武器(槍?)を持っている。
さすがに身の危険を感じるので、気づかれないよう静かに離れよう。
そろり・・・そろり・・・パキッ!
木の枝を踏んで、オークに気づかれてしまった。
「お約束かよぉぉぉ」
慌てて逃げ出したが、オークの方が速くあっという間に追い付かれてしまった。
「やるしかない!」
覚悟を決めた俺は、オークにマーキングして火球を放つ!
ブンッ!
「なっ!?」
オークは手に持っていた槍を一振りして、火球をかき消してしまった。
(マジかよっ!)
「くっ、来るな!!」
(火球!×2)
ブンッ!ブンッ!
火球2連発もなんなくかき消されてしまった。
おいおい・・・マーキングした火球も通用しないなんて。
ゴブリンとは比べ物にならないぐらい強いじゃねーか!
なんとか逃げられないか・・・無理だよな。
慌てる俺を見て、オークがニヤリと笑った・・・気がした。
その瞬間、猛烈な勢いで突進してきた!
躱そうとした瞬間、オークは急停止し、躱した方へ槍を突き出してきた!
「ぐっ!」
なんとか身をひねって致命傷は避けたものの、脇腹に深い傷を負ってしまった。
ステータスは・・・
生命力: 12 / 30
(瀕死だよっ!)
心の中で突っ込んでしまった。
マズい、マズい・・・。
夢の中で死んだらどうなるんだ?
それに痛い。ものすごく痛い。
そ、そうだ。
「治癒!」
とっさに詠唱していた。
あっという間に傷が癒されていく・・・。
「おわっ!?」
オークが突き、薙ぎ払いの連続攻撃を仕掛けてきた。
なぜ避けられたのか自分でも分からない。
あぶねー、回復の心地よさに浸っている場合じゃなかった。
どうすればいい?
そうだ、魔物も鑑定できるんじゃないか?
(鑑定)
種 族: オーク
生命力: 50 / 50
・・・
弱 点: 火
弱点が見れるじゃないか。
・・・って、火かよ!
火に弱いって言われても、火球はかき消されて当たらねーんだよ!
何とかして火球を当てる方法はないのか。
マーキングして火球を放っても、あの槍でかき消されてしまう。
・・・!
そうだ、アレなら避けられないかも知れない。
(炎柱!)
ダメだ・・・出ない。
この感覚は恐らく魔力不足だ。
どうする、どうする?
あの槍がある限り、火球は通用しないだろう。
厄介な槍だ・・・ハッ!
そうか、まずあの槍を壊せばいいのか。
スパッ!
よしっ!風の刃がオークの槍を切断した。
やはり、オークも風刃は見切れないようだ。
これで行けるかも!
・・・と思った瞬間、オークは再び突進してきた。
「バッ、障壁!」
ガードするように両手を交差し、咄嗟に障壁を詠唱した。
ドンッ!
「グハッ!」
痛ってぇ。
ガードしたにも関わらず、吹っ飛ばされた。
障壁の魔法が発動していなかったらヤバかった・・・
あの巨体でなんて速さだ。
どうやら逃げられそうにない。
なんとかして倒さないと。
(風刃!)
ダメだ、魔力が足りない。
焦るな、焦るな、俺。
火球なら出せるかも知れない。
一縷の望みをかけて、火球を放とうとする。
(火球!)
出た!
オークは槍でかき消そうとするが、短くなった槍の柄ではかき消せない。
ドゴッ!
火球はオークの眉間に直撃し、全身の毛に燃え移った。
「やったか?」
「グォォォ!」
丸焦げになったオークが、こちらを睨みつけながら向かってくる。
「ウ、ウソだろ!?」
(火球!)
出ない!
魔力が尽きたようだ。
くそっ、こんな時に・・・そうだ、リンゴ。
あのリンゴを食べれば・・・
と、その時。
ズシン!と音を立ててオークが倒れた。
しばらく様子を見たが、オークはピクリとも動かない。
「た、倒した・・・のか?」
あれは・・・
オークの身体から、魔法石が出てきた。
どうやら倒せたみたいだ。
ふぅ、マジで死ぬかと思った。
俺の夢なんだからもう少し簡単に楽しませてくれよ。
安心した俺は、拠点に戻って魔力の回復を待つことにした。
(夢、だよな?)
本日中に第4話をアップする予定