第29話 ユマラン王国
ホターラカを出た四人。
別行動していた時のことをそれぞれ話し合う。
「ジャンヌの剣は凄かっただろ?」
「そうだね。でも、もう持続強化なしでも防げるようになったよ」
「へぇ、凄いじゃないか」
「ボクもショウも、もうすぐ成体に進化できると思うよ」
オトが頼もしい発言をする。
「あぁ、俺もそう感じている」
どうやらショウも同意見のようだ。
「騎士団との修行が役に立ったってことだな」
「アトスとジョグは何してたの?」
「魔法具の開発の傍ら、迷宮をクリアしたな」
「ほっほっ。あの水竜人は恐ろしく強かったのぉ」
「水竜人?」
「アトスと一緒に行った迷宮で水竜が出てきての。アトスの助力もあって何とか倒しかけたんじゃが、なんと水竜人に進化しおっての。成体になったばかりの儂の手には負えんかったわい」
「じゃあアトスが倒したの?」
「あぁ、そうだ」
「アトスの魔法一撃じゃ。あれには儂も参ったわい」
「えぇー、ボクも見たかったな」
「ジョグが倒せない相手を一撃で倒したアトスの魔法か。俺も見てみたい」
「じゃあ見てろよ」
そう言ってアトスは唐突に【封殺超爆発】を放つ。
前方上空に石の箱が現れ、その周りを七層の結界が囲む。
そして、まばゆい閃光と共に轟音が鳴り響く。
辺り一帯の空間に振動が伝わる。その範囲の広さが【封殺超爆発】の威力を物語っている。
「す、すごいね。あれ、結界が無かったらどうなっちゃうんだろ」
「うむ。結界が無ければ我らも木っ端みじんだろうな。凄まじい威力だ」
アトスが放った魔法の威力は二人の想像を遥かに超えていたようだ。
「凄いじゃろ。あれがS6ランクの水竜人を一撃で屠ったアトスの魔法じゃ」
「S6ってどれぐらいだっけ?」
オトもショウもピンと来ていないようだ。
「オーガっていただろ? あれがS2で、あいつらが合体したギガースがS3だ。S2とS3はランク一つ違いだが強さが全然違ったろ? で、水竜人はS6だからギガースの三つ上のランクってことだ」
「と、とんでもない強さだね。それを一撃かぁ。さすがアトスだね♪」
「俺もまだまだ修行が足りんな。アトス、修行をつけてくれ!」
「ボクも!」
「儂もたのむぞい」
「だ、迷宮を見つけるか」
「「「えぇー!」」」
そりゃないよ、と三人とも残念がって元気が無くなってしまった。
「ま、気が向いたらな」
「絶対だよ!」
軽く誤魔化したアトスだったが、食いついてくるオトにタジタジだった。
──
ユマランの首都『オービ』目指して北上するアトス一行は海にたどり着いた。
船で一週間かかると聞いては居たが、見渡す限り港はない。
「船に乗りたいんだが、港が見当たらないな」
「船はやめておいた方がいい。あれは遅いのでな」
「そうか。じゃあ港を探すのは止めておくとして、どうやって渡ろうか」
「儂の背に乗れば良い」
そう言ってジョグは霊亀の姿に戻る。
「しんどかったら言ってね。ボク飛べるから」
オトも鳳凰の姿に戻れば飛べるのだ。
アヌグラ・マニュー団から身を隠すために人の姿で居続けているのだが、もはや敵認定して向かってきてくれた方が早いとアトスは考えている。
「そうだな。もう元の姿に戻ってもいいぞ。ただ街に入るときは人の姿になってくれ」
「うん♪」
アトス達がジョグの背に乗り込むと、猛スピードで水面を泳ぐジョグ。
「はやーい♪」
オトが楽しそうにしているのを見ながら、アトスはジョグに持続強化×10をかけた。
その途端ジョグは急加速し、水面が割れてしまいそうなほどのスピードになった。
「落ちるなよ」
もはやアトスは超高速にも慣れっこで、オトとショウをからかう余裕すらあった。
あっという間に海を渡ったアトス達は、地図を確認しながらオービを目指す。
「次は俺の番だと言いたいが、若体では三人を乗せるには少し小さいかも知れん」
ショウが悔しさ交じりに言う。
「ボクが飛んだら、ショウに乗るのは二人になるよ」
「なるほど。それで行こうか。オト、街が見えたら教えてくれ」
アトスとジョグはショウの背に乗る。
オトとショウに持続強化×10をかけ、猛スピードでオービを目指す。
「アトス、街が見えたよ」
上空のオトから報告が入る。
「もうちょっと左だよ」
オトの指示に合わせてショウが進路を変更する。
「おっ、見えてきたぞ。オト、ショウ、人の姿になってくれ」
「おっと、そうだったな」
「ここからは歩いて行こう」
鳳凰や麒麟の姿で街に近づくとどんな騒ぎになるか分からない。
街の入り口には数名の騎士が居る。
「身分証を見せてください」
あっ・・・・・・ジョグはギルド登録すらしていないことをアトスは思い出した。
「そちらの方もお願いします」
「身分証をお持ちでは無いですか?」
・・・・・・
・・・
「身分証が無ければここはお通しできません」
アトス達は文字通り門前払いされてしまった。
ジョグを残して三人が街に入ることも出来たのだが、さすがにそんなことはしない。
さて、どうしたものかとアトス達が思案していると
「アトス殿では無いですか?」
街に向かって来た馬車から男が顔を出す。
「カイル!」
「アトス殿、お会いできて幸いです」
「あぁ。俺もだ」
「ところで、街には入られないのですか?」
「それがな・・・・・・」
アトスは事情を説明する。
「そう言うことでしたか。では、私の知人として紹介するので街に入ったらギルド登録してください」
「助かるよ」
「いえいえ、お安い御用です」
「カイル殿のお知り合いでしたか。失礼しました。どうぞお通りください」
どうやらカイルはこの街でもかなり顔が利く男のようだ。
「ではアトス殿、私はこれで。もし良かったら、ご都合の良い時に私の家に来てください」
「ありがとう。後で顔を出すよ」
「では、後ほど」
──
「ギルド登録ですね。ではこちらの用紙にご記入ください」
ジョグがギルド登録をしている間、アトスは依頼ボードを確認する。
「おっ、Sランクの依頼があるぞ」
ギルド登録を済ませたジョグを含め、四人とも報告できる依頼を全て受注し、ランクを上げる。
「アトスさんはSランク、オトさん、ショウさんはAランク、ジョグさんはBランクにランクアップです」
「「「「Sランクだってよ・・・・・・」」」」
ギルド内がざわざわし始める。
アトスはそれを意に介さず、さらなるランクアップができそうだと考えている。
「これだけあればお前たちもSランクまで上がるんじゃないか?」
ギルド内に山盛りのSランクの魔物素材、Aランクの魔物素材が出される。
「ちょ、ちょっとお待ちください!!」
ギルドの受付嬢が慌てて計算する。
「皆さん、Sランクです」
「「「「全員Sランク!?」」」」
「アトスさん。Sランクだけのパーティはこの王国でも有数のレベルです。もしかしたら後日、ギルドから特別依頼があるかも知れません」
「あぁ。しばらくはこの国にいると思う。ちょくちょく顔を出すからその時に連絡してくれ」
「ありがとうございます」
無事にジョグの冒険者登録を済ませたアトス達は、商会ギルドに向かう。
「この街で商店を開きたい。どこかいい場所はあるか」
「商店ですか。それでしたら、一度カイル殿にお話しされてはどうでしょう」
「カイルの家には行くつもりだからちょうど良いが、なぜカイルに?」
「はい。カイル殿はこの商会ギルドの長をされておりますので」
「そうなのか。分かった。ではカイルに相談してみる」
「この街は人が多いな」
「そうだね。それに、みんな違う服だね」
「そう言えば色んな国から人が集まってきているってアイリンが言ってたな」
「アイリンって誰?」
「タンバサの王妃だ」
「ふーん」
オトは聖獣なので、人の身分等には全く興味がないようだ。
「アトス、何やらいい匂いがしている。お腹もすいたし、何か食べてきてもいいか?」
「あぁ、そうだな。じゃあ皆に金を渡しておく。俺はこの後カイルの家に行ってくるから皆は自由に行動してくれ。ただし、くれぐれも人の姿で居るんだぞ」
「承知」
商業都市というだけあって、この街には色んな店が出ている。
そこら中に色んな食べ物の屋台があるため、食べることに困りはしない。むしろ、食べきれなくて困る方だろう。
「俺も何か食べていくか」
三人が散り散りに食べ物を見て回るのを見て、アトスも何か食べたくなったようだ。
近くの屋台で焼き鳥、肉まんを買って食べながらカイルの家に向かう。
通りを抜けると、目の前の大豪邸が現れた。
「ここだよな?」
大きな商会の長だと聞いていたが、これほどまでに大きな邸宅を構えるとは。
カイルは只者ではないようだ。
戸惑いもせず、アトスは豪邸に足を踏み入れる。
次話は明日アップ予定。
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